不妊治療によるストレスの正体とは?
不妊治療におけるストレスの正体とはいったい何でしょうか?
まだ治療を受けた経験のない方には、きっと想像するのが難しいと思います。例えばセックスにのしかかる重圧、医療機関への不信感、年齢的な焦り。高度生殖医療にエントリーすると、さらにお金がかかることや、薬の副作用で体調を崩してしまったこと…さまざまな悩みがあります。ただ、これで妊娠が確信できるものになるのなら、こんなには悩まないはずです。たとえ人工授精に踏み切ったとしても、人工授精一回あたり5〜8%程度、体外受精においても20%前後の妊娠率なのです。
このまま治療を続けていって、本当に妊娠できるのだろうか?そんな不安が、治療に強いストレスをかけてくるのだと思います。そして、そのストレスが、本来持っているはずの妊娠力に悪影響を及ぼします。妊娠したいがための悩みが、妊娠を遠ざけてしまうとしたら、なんとも皮肉な話です。
ホルモンの司令塔—視床下部はストレスに弱い
前回のコラムでも書きましたが、リラックスすることは妊娠を呼び込むために本当に重要なことです。ではなぜリラックスが妊娠力を高めるのか?ここで少し医学的に説明しておきましょう。
人間の頭のなかをのぞいてみると、大脳の下の下垂体に視床下部という小さな器官があります。ここは、ホルモン分泌の司令塔の役割をしています。この視床下部の指令によって、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)などのホルモンが分泌され、卵が成熟し、排卵が起こったり、体温を上昇させる黄体ホルモン(P)の分泌を促したりするわけです。この働きは、脳から卵巣、子宮へと玉突きのように起こるもので、最初に指令を出すのが視床下部なのです。
この妊娠するための重要な役割をもつ視床下部が、とてもデリケートでストレスに敏感なのです。例えば、イヤな上司に変わったとたん、女性社員の生理が止まってしまったという話がよくあるのですが、そのくらい視床下部はストレスに弱いのです。
リラックスするということは、視床下部をいたわるということです。そのことが、女性ホルモンの分泌を正常にし、ごく自然に妊娠することにもつながります。だからこそ、あまり思いつめないで、もっとリラックスしましょう!