【書籍試し読み】不妊治療の不都合な真実(6)

不妊治療の不都合な真実

不妊ルーム院長が執筆いたしました書籍「不妊治療の不都合な真実」の内容の一部をご紹介いたします。

 

■ロング法・ショート法は女性の体をボロボロにする

体外受精の問題は、医療費が高額なのにもかかわらず妊娠率がきわめて低いことだけではありません。直接的に女性の健康にかかわる副作用が、いくつも指摘されているのです。

いま、多くのART医療機関では卵子を採るときに、排卵誘発のためにhMGという注射を何回もします。こうして卵巣を刺激する方法を「刺激法」といい、そのなかでもLHサージを抑える薬を長期間使う方法を「ロング法」、短期間のものを「ショート法」と呼びます。この2つの方法は世界中で標準的な体外受精の排卵誘発方法として用いられていますが、女性にきわめて重い負担をかける医療です。

ロング法による採卵を経験されたある方から、私はこんなメールを受け取ったことがあります。

「お尻が真っ赤になる痛い注射
 おなかがパンパンになる注射
 我が家の家計を圧迫する高い注射
 でもこの注射に耐えなければ、私はわが子には会えない」

女の人の体からは通常一周期に一個しか排卵しませんが、その一つの卵子が排卵されるために、卵巣のなかで10個〜50個の卵子のあいだでサバイバルレースが行われます。体外受精をする際に使える卵子が一つだけでは心許ないので、こうした刺激法ではhMGを何回も打つことで、成熟卵子を10個も20個も育てます。

そうやって育てた卵子を一斉に採卵し、そこに精子を振りかけたり、顕微授精をして、よい分割卵だけを戻すのです。まさに「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」の発想ですが、これが体外受精のメインストリームの考え方なのです。

またこれは体外受精とは別の話ですが、以前は強い排卵誘発をおこなった結果、四つ子や五つ子が頻繁に生まれ、「四つ子ちゃん」「五つ子ちゃん」といった話題がマスメディアで取り上げられたことがありました。

まるで微笑ましいエピソードのようにメディアでは取り上げられましたが、これは排卵誘発剤によってたくさん飛び出した卵子が、4個も5個も受精してしまい、そのまま妊娠が継続したことによるいわば当然の結果なのです。その後、メディアにこうした話題が出なくなったのは、婦人科医が排卵誘発剤の使用に慎重になったからです。

しかし体外受精ともなると、先に述べたとおりスタートラインで多くの卵子を必要としますので、強い排卵誘発剤であるhMG製剤を頻用せざるを得ません。

hMG製剤は排卵を誘発し、多くの卵子を成長させると同時に、血管にはたらいて、血管の中から水分を外へ引っ張り出すという性質があります。

その結果、相対的に血管の中の血液が濃縮されます。血液は濃縮されると、血小板の働きによって赤血球同士がくっつきやすくなります。赤血球がくっついた塊を血栓と呼びますが、それが体の中を巡って頭の血管に詰まってしまい、脳梗塞にいたるわけです。過去には脳梗塞による死亡例もありました。

いまでは脳梗塞になる不妊患者さんの例は少なくなりましたが、ないわけではありません。しかし、血管から外へ出た水分が骨盤にたまり、腹水になってしまう卵巣過剰刺激症候群(OHSS)はいまも日常茶飯事です。「ロング法を採用したためにお腹がパンパンになってのたうち回った」とか「お尻が真っ赤に腫れて椅子に座れなくて大変だった」という患者さんの話を、私もとてもよく聞きます。

■培養士は刺激法採卵の体外受精は受けない

かつて「不妊ルーム」に体外受精カウンセリングにこられた患者さんで、忘れられない方がいます。この方を仮にEさんとしましょう。彼女は遠方からわざわざ私のところにこられたのですが、二人目のお子さんを希望していると言うことでした。

Eさんは、大きな病院の産婦人科の生殖医療部門の培養士でした。

彼女が勤める病院では、もちろん体外受精を行っています。私がすぐに思ったのは、なぜご自身が勤めている病院で体外受精を受けないのだろう、ということでした。

一般的にいって、自分が勤めている病院で治療を受けるとなにかと融通が利くものです。たとえば、医療機関等によっては職員割引などがあったりもします。実際、Eさんが勤めている病院でも、職員は体外受精の医療費が半額になるということでした。

Eさんの勤める私の病院でも、たしかに体外受精をやっていました。ところが、Eさんがそこの婦人科の先生にたずねたところ、「自分はロング法でしか採卵することができない」と言われたそうです。そこでEさんは自分の体を大切にするため、自然周期で体外受精をおこなう信頼できる医療機関を紹介してほしいと、はるばる遠方から訪ねて来たのです。そこで、私は彼女の希望に添った体外受精をおこなってくれる医療機関の紹介状を書いて渡しました。

またこれは別の患者さんの例ですが、医師から体外受精を勧められ、もうすぐエントリーするという直前で相談に来られました方がいます。この方をFさんとしましょう。

(~中略~)

Fさんはロング法で採卵を受けるはずでした。ロング法ではhMG製剤が頻用されるとは知ってはいましたが、実際にその回数を目の当たりにしたとき、私は本当に驚きました。これだけ大量の注射を1人の女性に行って、卵巣過剰刺激症候群が出現しないほうが不思議です。

35歳という年齢と、FSHの値が10を超えていた事実から、ロング法採卵での体外受精はしないよう私はFさんにアドバイスし、自然〜低刺激周期での採卵をおこなう医療機関への紹介を行いました。その後のFさんから連絡がありませんので、経過は不明ですが、ロング法で行うよりよい結果が出ていると信じます。

 

 

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