年齢だけで体外受精を受ける必要はない

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コラム

年齢だけで体外受精を受ける必要はない

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2024年9月24日

「35歳から卵子は急激に老化していく」——という言葉がよく聞かれるようになったため、自分には不妊治療しかない、いや体外受精でしか妊娠できないと思いこんでいる方が多いと思います。

最近ではAMHという卵巣年齢を測る検査が広く行われるようになり、この検査で卵巣年齢が高いといわれると、ますます「自分には体外受精しかない」という思考に陥ります。また、一度でも不妊治療を経験した人は、不妊治療だけが妊娠に至る道だと考えるようになりがちです。

さらに2022年4月から不妊治療の保険適用が拡大され、人工授精のみならず、体外受精までが保険適用となりました。このため体外受精に対するハードルが低くなり、医師による体外受精への誘導も顕著になっています。

たしかに、体外受精などの高度生殖医療によって、これまで妊娠が困難だったケースでも妊娠が可能になったのは事実です。しかし、年齢だけが理由で体外受精に踏み切る必要はなく、体外受精で妊娠しなかったカップルが治療をやめたら自然妊娠したというケースは少なくありません。

当院においても、不妊治療で赤ちゃんを授からなかった人が、タイミング法や漢方薬などのフォローアップによって、数多く妊娠しています。

ある月の当院の状況をご紹介します。この月は13名もの方が妊娠されました。妊娠反応陽性時の「不妊ルーム」での治療内容は、下記の通りです。

Aさん 32歳:クロミッド+漢方薬(+)

Bさん 29歳:クロミッド+漢方薬(−)

Cさん 41歳:漢方薬+男性因子の治療(+)AIH1回あり

Dさん 36歳:漢方薬のみ(−)

Eさん 30歳:高プロラクチン血症の治療(−)

Fさん 32歳:クロミッド+漢方薬(−)第一子も当院

Gさん 30歳:タイミングのみ(−)

Hさん 32歳:漢方薬のみ(+)AIH3回あり

Iさん 39歳:タイミングのみ(−)

Jさん 33歳:漢方薬のみ(+)

Kさん 35歳:クロミッド+漢方薬(−)第一子も当院

Lさん 29歳:クロミッド+漢方薬(−)

M さん  41歳:タイミングのみ(−)

※(+):不妊治療歴あり、(−):不妊治療歴なし

※AIH:人工授精

この月は、比較的年齢の若い方や不妊治療歴が浅い、もしくはなかった方が多かったのですが、それでも35歳以上の方が5名おり、うち2名は40代です。こうした方たちが、タイミング法や、飲み薬の排卵誘発剤や、漢方薬、サプリメントなど、からだに負担の少ないフォローアップによって妊娠していることにぜひ注目していただきたいと思います。

Hさんは、人工授精がうまくいかないということで、憔悴しきった様子で相談にみえました。そして、話が終わると「何か気持ちが楽になりました」と言われたのが印象的でした。そして今回、妊娠していることを告げると、「不妊ルーム」に通いだしてから、私や私の周りで、不思議なことが次々と起こっていたんです」とおっしゃっていました。

もちろん、Hさんの妊娠は不思議なことでなく、人工授精がうまくいかなくても自然妊娠するケースは、私も数多く経験しています。

 

35歳からの妊娠戦略は「Yの字思考」でたてよう

自分は自然妊娠でいくべきか、あるいは人工授精や体外受精を視野に入れるべきか……こうした妊娠へのアプローチ法に関しては、女性の年齢が高くなるほど、私は「Yの字思考」という考え方が大切になってくるように思います。「Yの字思考」とは、妊娠へのアプローチにAとBの2つのルートがあった場合、AとBのどちらのルートを進むかを早めに決定しようという考え方です。

不妊治療で医療機関を訪れた場合、一般的にはステップアップ法という形で進んでいきます。まず半年から1年間タイミング法を行い、それでも妊娠しなければ、人工授精へとステップアップし、人工授精を通常5〜6回行います。それでも妊娠しなければ、体外受精などの高度生殖医療へとステップアップするのが一般的なルートです。

しかし、女性の年齢が高い場合において、たとえば人工授精に多くの時間を費やしてしまうようなことがあると、体外受精にエントリーしても妊娠しにくくなってしまいます。女性の年齢が高くなればなるほど、体外受精の妊娠率が低下するという事実があるからです。

そこで「Yの字思考」という考え方が大切になってくるのです。Yの字のように、ものごとの進路をAorBの両ウィングで考える——たとえば、あなたが不妊治療を積極的に視野にいれるのであれば、体外授精などの高度生殖医療への期間をあまり長くおかないことを指します。通常のステップアップ療法に対して、私はジャンプアップということを、勧めることも多くなってきました。すなわちタイミング法が上手く行かなかったカップルに、人工授精をスルーして、体外授精にエントリーする、あるいは、不妊治療というものを体外授精からスタートする、こういったやり方を、私はジャンプアップと言っています。

ジャンプアップという考え方をするのは、体外授精などの高度生殖医療を専門とする医師は、女性の年齢もさることながら、体外受精以前に、注射による排卵誘発などの濃厚な不妊治療を行わないことが、体外受精を早く成功させる秘訣だと指摘するのです。

 

開き直りも妊娠戦略のひとつ

私もこれまでの「不妊ルーム」の経験から、人工授精までの段階で、hMG-hCG 療法(hMG:卵を育てる注射、hCG:排卵をうながす注射)などを濃厚に行ってきた人は、体外授精にエントリーしても、妊娠に至りづらいといった印象をもってきました。また、体外授精は、35歳を過ぎたあたりから妊娠率が低下し始め、40歳では、生産率(最終的に子供抱いて帰れる確率)が、10%を切ってしまいます(日本産科婦人科学会の統計による)。そうした医療であるにもかかわらず、高額な医療費が請求されるわけです。

ですから、確率の低い体外受精という医療に、大きなお金はかけられないというのも、自然な考え方だと思います。こうした人達には〝開き直り療法〟をおすすめしています。「不妊ルーム」でも、40歳以上の女性が、タイミング法のみで妊娠に至ったり、漢方薬や排卵誘発剤(クロミッド)を併用することで、妊娠することは、なんら珍しいことではありません。

とくに「卵巣セラピー」をおこなってから、40歳以上の女性の妊娠が普通になってきました。ですから「妊娠したらもうけもの!」といった気持ちで、開きなおってみるのです。そして、毎日を楽しく過ごすというのもまた、私は立派な不妊治療だと思います。

要するに「Yの字思考」というのは、途中をウロウロせずに、どっちへ進かという方向性を、自分たちではっきりと決めるということです。不妊治療がとても大きなストレスになるということは、それを経験したカップル、とりわけ女性達が、異口同音に発する言葉なのです。したがって、「Yの字思考」という考え方は、これからの時代ますます大切です。

著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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