不妊治療をやめてみるという選択肢もある

不妊治療をやめてみるという選択肢もある

二人目不妊の女性で、とても象徴的なケースを経験しました。

最初の子どもはタイミング法を試みても妊娠に至らず、

人工授精5回目で妊娠、出産。

 

そして二人目がほしくなった彼女は、同じ大学病院に行き、

「最初の子どもが人工授精で生まれたので、

今回の治療は最初から人工授精で」と言われました。

そこで人工授精を7回試みましたが、

今度は妊娠することができませんでした。

 

そこで、彼女は初めて体外受精を受けましたのですが、

やはり妊娠には至りませんでした。

そして私のところに相談にみえたのです。

 

ではカウンセリングのその日、

彼女になにが起こったのでしょうか?

 

私は彼女の基礎体温表を見ました。

表を見ると高温期が続いていました。

「あなた妊娠していると思いますよ」と言い、

尿検査をしてみると、やはり彼女は妊娠反応陽性だったのです。

 

驚かれるかもしれませんが、私のもとを訪ねて来た日に

妊娠していたというケースが最近増えてきました。

彼女たちの中のひとりから、「先生のところに電話で予約を入れ、

カウンセリングを受けられると思っただけで、すごく安心しました」

というメールをいただいたことがありました。

 

おそらくは、それまでの不妊治療を離れ、

ステップダウンできるかもしれないという思いが、

彼女たちの精神状態にポジティブに作用したのだと思います。

不妊治療をやめたら妊娠したというケースは本当にたくさんあります。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)

弘前大学医学部を1987年に卒業後、都内で内科研修を経てドイツ・フライブルク大学病院に留学し、帰国後は東京大学大学院で医学博士号を取得。2004年に「こまえクリニック」を開院し、不妊治療と相談を専門とする「不妊ルーム」を運営。自身も4年間の不妊治療経験を持ち、ストレスケアを重視した診療を行っている。『令和版 ポジティブ妊娠レッスン』(主婦と生活社)をはじめ、不妊治療に関する著書も多数出版している。

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