体外受精の前にセカンドオピニオンを!

体外受精の前にセカンドオピニオンを!

私は「不妊ルーム」での9,700カップルを超える不妊相談の経験から、セカンドオピニオンの重要性を痛感しています。ご存知のように、2022年4月より不妊治療の保険適用が拡大され、体外受精まで保険適用となりました。

その結果、不妊治療=体外受精の現状においては、体外受精にエントリーする前にセカンドオピニオンを受けることが大切です。その理由を詳しく説明します。

1. 医師の方針や治療アプローチが異なるため

体外受精は医師やクリニックによって治療方針が異なります。例えば、

  • ホルモン刺激の方法:強めに刺激して多くの卵子を採るのか、低刺激で体に負担をかけずに進めるのか
  • 受精方法:通常の体外受精(IVF)か、顕微授精(ICSI)を積極的に勧めるか
  • 着床前診断(PGT-A)の活用方針

など、同じ患者でも医師によって違う治療プランが提示されることがすくなくありません。セカンドオピニオンを求めることで、自分に合ったアプローチを選択しやすくなります。

2. クリニックごとの成功率や技術の差を確認できる

クリニックによって

  • 使用する培養液や培養環境の違い
  • 胚培養士の技術レベル
  • 最新技術の導入状況(タイムラプス培養、AIによる胚評価 など)
  • 妊娠率の実績

などに差があります。妊娠率が高いクリニックでは、培養環境や移植技術など体外受精インフラが優れているため、他の施設の実績を知ることは重要です。

3. 自分の診断や治療方針が本当に適切か見直せる

一つのクリニックで「あなたには体外受精しか選択肢がありません」と言われても、別の医師が「タイミング法や人工授精をもう少し試せるのでは?」とアドバイスする場合もあります。

また、「卵巣機能が低下している」と言われたが、別の医師は「まだチャンスがある」と評価した、「子宮内膜が薄い」と言われたが、治療次第で改善の可能性があると診断されたなど、意見の違いがあることも珍しくありません。セカンドオピニオンを受けることで、本当に今の治療が最適かどうかを再確認できます。

4. 心理的な安心感を得られる

体外受精は、肉体的、精神的負担の大きい治療です。「本当にこの治療でいいのか?」という不安を抱えたまま進めるよりも、別の医師の意見を聞くことで安心して治療に臨めます。

また、医師との相性も治療の満足度に大きく影響するため、セカンドオピニオンを通じて「この医師なら信頼できる」と思えるクリニックに出会うことも大切です。

5. 経済的な負担を最適化できる

体外受精は1回あたり数十万円以上の費用がかかります。医師によっては不要な検査や治療を推奨する場合もあるため、他のクリニックの意見を聞くことで、

  • 本当に必要な治療か
  • 費用対効果の高い方法はないか

を再考することができます。結果として、無駄な出費を減らし、より良い治療を選ぶことができます。

セカンドオピニオンを受ける際のポイント

  • 他のクリニックで話を聞く際は、現在の検査結果や治療歴を持参する
    (ホルモン値、AMH、超音波検査の結果、治療履歴 など)
  • セカンドオピニオンを受けるクリニックを、事前にリサーチする
    (ネットの口コミや不妊治療専門医の評価も参考に)
  • 「今の治療で本当に最適か?」と冷静に判断する材料にする
    (主治医の治療が間違っているとは限らないため、感情的にならず客観的に判断)

さいごに

体外受精は決して簡単な選択ではありません。「不妊ルーム」では、それぞれのカップルの年齢(とりわけ女性の)や、社会状況、お住まいなどを勘案し、最も適切と思われる体外受精を受けていただけるよう、セカンドオピニオンの提供をを心がけています。

迷ったら、一度別の医師の意見を聞いてみることをおすすめします!

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)