高齢女性の妊活と「卵巣セラピー」

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コラム

高齢女性の妊活と「卵巣セラピー」

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2024年7月25日

「卵巣セラピー」以前

「不妊ルーム」を開設して20年余りになりますが、当初より「不妊治療だけが妊娠に至る道ではない」をモットーに、妊活に取り組んできました。まだ妊活という言葉もなかった時代の頃からです。

不妊治療に代わるものとして「3つの法則」を提案しました。

3つの法則とは

①基礎体温表をつける

②排卵日検査薬を併用する

③夫婦生活を増やす

というものです。これは今日に至るまで「不妊ルーム」の妊活指導の「1丁目1番地」です。

 

これをベースに、漢方薬などを用い、それぞれの患者さんが抱えている病気などに対応してきました。そうしたやり方で順調に妊娠が増えてきていたのです。

 

「卵巣セラピー」=生殖内科医療が必要になったわけ

ところが10年ほど前から、こうしたやり方だけでは私は限界を感じるようになってきました。それは女性の結婚年齢、妊活開始の高齢化に伴い、卵子のエイジングという壁にぶつかったのです。ですから、私にとって卵子のエイジングにどのように取り組んでいくかが大きな課題になりました。

10年ほど前に、甲状腺ホルモンを厳格にコントロールすることによって妊娠率が上がるという報告が、アメリカの生殖医療学会から日本に伝えられ、日本の甲状腺専門病院などがこの考え方を広く世の中に広めました。それで当院でも甲状腺ホルモンに力を入れてコントロールしてみたところ、確かに妊娠される方が増えたのです。甲状腺ホルモンは、「元気の源ホルモン」であり、生理周期のコントロールの一役を買っているのです。

 

そしてちょうどその頃、私はDHEAサプリメントの存在を知ります。DHEAはこのコラムでも度々取り上げているように、女性ホルモンの材料です。女性は年齢が高くなると女性ホルモンの分泌が悪くなりますが、それはDHEAの低下に伴うものなのです。幸いなことにDHEAはサプリメントで補填できますので、私はDHEAサプリメントを使ってみたところ、やはり妊娠される方が増えてきました。

 

そして、2018年にノベルジンという亜鉛製剤が、「亜鉛欠乏症を伴う不妊症」に保険適用となりました。私は通院されている女性(その後男性も)の血中の亜鉛濃度を調べてみると、亜鉛欠乏症の女性が多いことに驚きました。ノベルジンを用いたことによる効果は大きく、血中濃度を測定し、亜鉛と銅のバランスを整えると、妊娠されることが普通になりました。

 

私はこうした内科的な治療を一括して「卵巣セラピー」と名付けたのです。ですから、それから私は、通院されている方に対して、卵巣をケアするということに重きを置くようになりました。不妊治療を一言で言えば、卵巣に鞭を打つ治療であり、「卵巣セラピー」は反対に卵巣をいたわる治療です。

 

「卵巣セラピー」は太陽治療

確かに年齢が高くなるとエイジングという問題が出てきますが、卵巣セラピーによって卵巣をいたわると、40歳以上の女性でも、「不妊ルーム」で妊娠に至ることも普通になりました。また、体外受精医療機関に紹介した場合にも妊娠される方が、とても増えてきました。

 

ここを少し深掘りすると、女性の年齢が上がるということは、排卵レースに参加する卵胞の数が減ると言うことであり、参加する卵胞も若い人に比べて元気がない卵胞が多いということです。しかしながら、ここに卵巣セラピーをおこなうことは、卵胞に栄養を与えることであり、排卵レースが活発化することです。元気な卵子を持つ卵胞が存在すれば、他の卵胞を圧倒する形で排卵しますので、その卵子が運良く精子と巡り会えれば、妊娠に至りやすくなるわけです。その手助けをしているのが卵巣セラピーです。

 

イソップ物語に「北風と太陽」というのがありますが、不妊治療は北風であり、向きを変えて、南側の太陽に当たることによって妊娠される方が増加するということが、40歳以上の妊娠が増えたことで、はっきりと実感できたのです。こうして私は卵巣セラピーに自信を深めていったのです。

 

高まる卵巣セラピーの必要性

2022年4月より不妊治療の保険適用の拡大が行われ、人工授精はもとより体外受精などの高度生殖医療も保険適用となりました。これを受けて、これまで以上に不妊治療の体外受精へのスピードアップが進みました。東京においては、不妊治療=体外受精のような状況です。私はこのことを憂慮しています。

 

なぜなら、女性の結婚年齢、妊活年齢が高齢化しているわけですから、卵子のエイジングが進んでいるわけです。体外受精は多くの場合、卵巣への強い刺激を加えて排卵誘発を行いますから、卵巣への負荷がとても大きいのです。したがって、高齢の女性ほど卵巣セラピーをていねいにおこない、卵巣をいたわることが大切です。

 

「不妊ルーム」に通院されている方が、体外受精を希望された場合、私は卵巣に大きな負荷をかけない医療機関に紹介することを徹底しています。

 

「卵巣セラピー」は「不妊ルーム」のメインの柱となっています。不妊治療に行き詰まった方、不妊治療で体がしんどい方、また不妊治療には踏み切れないという方も、ぜひお気軽にいちど「不妊ルーム」に相談に来てください。

 

著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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