自然周期と排卵誘発の卵子

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コラム

自然周期と排卵誘発の卵子

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2025年1月14日

「自然周期で採れる卵が一番質が良い」

これは自然周期採卵にこだわって、体外受精を行ってきた医師の言葉です。

私はこの言葉に賛同します。

自然周期で育つ卵子と、体外受精のために準備される卵子と何が違うのでしょうか?

少し深掘りして考えてみたいと思います。

最初にこの2種類の卵子のお話をしますが、少々難しいかもしれません。後でわかりやすくまとめますので、すこしがまんして読んでみてください。

 

自然周期の卵子の育ち方  

自然周期で排卵される卵子は、まず、約150〜200日前に原始卵胞から覚醒するとされています。そして卵子成熟のプロセスは以下のように進行します。

原始卵胞が成長を開始し、休眠状態から活性化されます。この段階は非常にゆっくりと進行し、数か月かけて一次卵胞、二次卵胞、前胞状卵胞へと発達します。

約60〜80日前に、成長を始めた卵胞の中から次の月経周期で成熟する可能性のある卵胞が選ばれます。このプロセスでは、いくつかの卵胞が発育しますが、そのうち1つが主席卵胞として成長を続けます(双子などの場合は2つ以上の卵胞が成熟することもあります)。

月経周期が進む中で、主席卵胞は排卵の約2週間前LH(黄体形成ホルモン)サージの直前に急速に成長し、成熟卵胞となります。この段階では、排卵準備が整います。つまり、排卵される卵子は数か月前から成長を始めており、排卵の直前に急速な成熟が行われるのです。

自然周期では、卵巣内で最も優れた卵胞(主席卵胞)が選ばれて成長し、1個の卵子が排卵されます。このプロセスは体の自然な選択メカニズムにより行われるため、質の高い卵子が排卵されやすいのです。

 

 

体外受精の卵子の育て方

体外受精(IVF)における排卵誘発のプロセスは、自然な排卵とは異なり、複数の卵子を同時に成熟させて採取することを目的としています。通常、月経周期の初期に複数の卵胞が成長を始めますが、自然周期では1つの主席卵胞だけが成熟し、他の卵胞は退行します。しかし、IVFでは排卵誘発剤、ホルモン剤を使って複数の卵胞を同時に成長させます。

排卵誘発剤を使用すると、複数の卵胞が同時に成熟します。そのため、複数の卵子が回収可能ですが、すべての卵子が質の高いものであるとは限りません。なぜなら、排卵誘発剤を使用することで、ホルモン濃度が通常よりも高くなり、卵子は未成熟であったり、質が低い場合もあります。つまり、排卵誘発で得られる卵子は数が多いですが、質にばらつきが出るのです。

ロング法、ショート法、セトロタイド法、さらに各医療機関にそれぞれの工夫を凝らしたいろいろな刺激法があります。しかし、こうした刺激法の目的は、短期間により多くの成熟卵を採取する点では共通です。私はこうした卵巣に鞭を打つような採卵は、なるべく避けるべきだと思っています。

 

卵子の成熟を魚の養殖に例えると

この2つの卵の違いを、魚で例えると分かりやすいと思います。自然の海の中で育つ魚は、荒波や外敵などにもまれながら、自然と言う環境の中で育っていきます。一方、養殖の魚は、コンディショニングされた環境の中で、大量の餌を与えられて育ちますので、自然の魚に比べて2倍のスピードで大きくなると言われています。この2種類の魚、どちらがおいしいでしょうか? 考えるまでもないでしょう。

これと同じように、女性の体の中で自然に時間をかけて育ってきた卵は、やはり質が良いのです。ところが、女性は年齢が高くなると、卵の老化が進んできて、育ちにくくなりますので、外からhMGという注射薬で刺激することによって、卵をたくさん育てようとするわけですから、どうしても、質の良くない卵が複数育つことになってしまうのです。

自然妊娠、タイミング法、人工授精、体外受精を問わず、妊娠に最も大切なことは、質の良い卵が育つことです。このためには、例えば「不妊ルーム」で行っている卵巣セラピーが有効なのです。

体外受精の医療機関に紹介した患者さんを追跡してみると、当院で卵巣のコンディショニングを行い、亜鉛-銅のバランスの調整、甲状腺ホルモン、DHEAの値などが良好な時に採卵された卵子で体外受精を行うと、高い確率で妊娠に至り、出産につながっているケースが多いことがはっきりしています。

 

なぜ刺激法採卵を危惧するのか

私が刺激方採卵を心配するのは、なによりも妊活女性が高齢化しているからです。女性は言うまでもなく、卵巣の卵子は1個も増えません。逆に年とともに減少していくのみならず、残された卵も老化していきます。40歳ともなると、卵巣の中の卵子は本当に少ない数になっています。

ところがこうした女性が実際に体外受精を受けると、ほとんどの場合、刺激法採卵が行われているのです。仮に卵子が3個採卵できた場合、実際に覚醒した卵子はその100倍〜500倍と考えらます。こうしたことを繰り返せば、卵巣の中の卵子があっという間になくなってしまうでしょう。

また質の高い卵子がすくないわけですから、培養の途中でドロップアウトしてしまう確率も高いのです。ですから、年齢の高い女性は、なるべく卵巣を刺激せずに、むしろ卵巣をいたわって採卵した方が、妊娠の確率が高くなるのです。女性は年齢が高くなればなるほど、排卵誘発は慎重に行わなければいけないことを、しっかりと心に留めてください。

 

【お知らせ】

昨年12月よりXを始めました。役立つ妊活情報をいろいろ提供していきたいと思っています。「不妊ルーム」の〝不妊治療だけが妊娠に至る道ではない〟というメッセージを皆様に届けします。

XのURLは以下の通りです。

https://x.com/komacli_hojo

著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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