漢方薬は医師から処方してもらう3つの理由

漢方薬は医師から処方してもらう3つの理由

「漢方薬って、身体に優しそうだから自己判断で飲んでも大丈夫」
「自然の成分だからサプリメントと同じようなものでしょ?」
そんなイメージを持っている方、多いのではないでしょうか。

私がこれまで出版してきた本や、日々の診療の中で繰り返し伝えてきたのは、そんな思い込みが、時に“遠回りの妊活”になってしまうという現実です。だからこそお伝えしたいのは、

「漢方薬は、必ず医師のもとで処方してもらいましょう」

それには、医学的な視点から見た明確な理由があります。その中でも特に重要な“3つのポイント”を、わかりやすくお伝えしたいと思います。

理由①:医療機関での処方なら、保険適用となり経済的負担が少ない

まず、意外と知られていないのが「保険適用」のこと。実は、医療機関で処方される漢方薬は、すべて健康保険が適用されます。

ところが町の漢方薬店や通販などで購入している方の中には、毎月3万円、5万円、なかには10万円近くかけているケースも珍しくありません。「自分の体に良さそうだから」と信じて高額を払い続けている方のお話を聞くたび、胸が痛みます。

保険診療の範囲で処方される漢方薬であれば、自己負担は1カ月2,000円〜3,000円程度。継続することが前提の漢方薬だからこそ、無理のない金額で“治療の質”を保てるというのは、大切なことです。

理由②:厚生労働省が認可した“エビデンスのある薬”だから安心して服用できる

「漢方薬」と聞くと、「なんとなく効きそう」「昔からあるから安全」と思う方も多いでしょう。でもそのイメージの裏に、実は落とし穴もあります。

市販の漢方薬や漢方風サプリの中には、成分の含有量が明記されていないものや、品質管理の基準があいまいなものも少なくありません。一方、医師が処方する漢方薬は、厚生労働省の厳しい審査をクリアした“医薬品”。成分・品質・安全性、すべてが国の基準でチェックされているものだけが使われています。

つまり、「何が入っているのかよくわからない煎じ薬」や「○○の粉末」ではなく、エビデンス(医学的根拠)に基づいた処方が受けられるのです。特に妊活中の方にとって、「安心して身体に取り入れられる薬かどうか」は最も大切なポイントのひとつではないでしょうか。

理由③:効果を“感覚”ではなく、“数値”で確認できる

漢方薬と聞くと、「なんとなく調子がいい気がする」といった“感覚的な変化”をイメージされる方が多いかもしれません。ですが、現代の医療の中での漢方治療は、それだけではありません。

医師のもとで漢方薬を使用する最大のメリットの一つは、血液検査やホルモン値など、医学的な数値で効果をモニタリングできることです。「不妊ルーム」では、排卵やホルモンバランス、基礎体温のパターンなどをもとに、最適な処方を検討していきます。必要に応じて処方内容を見直すことで、「効いているつもり」ではなく、「実際に結果が出る漢方治療」を実感できます。

そしてもう一つ、見落とされがちなのが副作用のリスク。「漢方薬には副作用がない」と思っている方も多いのですが、それは大きな誤解です。漢方薬もれっきとした「薬」。体質や病状に合わない処方を続けると、思わぬ不調を招くこともあります。だからこそ、採血・診察・モニタリングが行える医療機関での管理が重要なのです。

現代の漢方薬はスマートに進化している

「漢方って、土瓶でぐつぐつ煮出して飲むものでしょう?」
「匂いがきつそうで、続けられないかも…」

そんなふうに思っている方には、ぜひ知っていただきたいのですが、今の漢方薬は、想像以上にスマートです。フリーズドライ製法で作られた粉薬は、お湯に溶かして簡単に服用できますし、バッグに入れて持ち歩くことももちろん可能です。忙しい現代人でも、無理なく続けられるように進化しているのです。

妊活中に感じる「思わぬ副産物」も、漢方薬の魅力

そして、医療用漢方薬の大きな魅力のひとつが、“副産物的な変化”です。たとえば、妊活を目的に漢方薬を始めた方から、こんな声をよく聞きます。

  • 「生理痛がほとんどなくなった」
  • 「手足の冷えが気にならなくなった」
  • 「毎晩ぐっすり眠れるようになった」
  • 「イライラや不安感が軽くなった」

これは、漢方薬が身体の一部分だけでなく、全体のバランスを整えることを目的としているからこそ起こる効果です。西洋医学では“症状にアプローチする”のが基本ですが、漢方薬は“体質そのものを改善する”という視点で使われます。

だからこそ、妊娠というゴールに向けた道筋を、より根本から整えていくことができるのです。

「不妊ルーム」でも漢方薬は“妊娠への鍵”として活用しています

「不妊ルーム」では、漢方薬は妊活における大きな柱のひとつです。西洋医学の検査や治療で行き詰まった方でも、漢方を組み合わせることで妊娠に至った例は少なくありません。大切なのは、「東洋医学」と「西洋医学」、どちらかという2者択一ではなく、両方の良いところを掛け合わせて相乗効果を期待するという視点です。

妊活中の方に、私はもう一度伝えたいのです。

「漢方薬の服用は、必ず医師のもとで」

それが、遠回りに見えて近道になることが多いのです。自然の力を正しく借りながら、体質を根本から整え、医学的な知見に支えられて妊娠へアプローチする。そんな選択肢を、ぜひ一人でも多くの方に知っていただきたいと思っています。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)