妊娠には子宮内フローラが大切

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コラム

妊娠には子宮内フローラが大切

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2024年11月11日

最近、不妊治療では、子宮内フローラというものが、大きく取りあげられるようになってきました。子宮内フローラのコンディションが良いと妊娠率がアップするのです。そうしたことがクローズアップされるようになってきたのは、ほんのここ数年です。

 

 

そもそもフローラとは?

フローラと言うのは、「花の女神」を指す言葉なのですが、一般には「お花畑」というような意味で使われています。ヒトの体内にはいろいろなタイプの細菌が群れをなして活動しています。そうした群れをフローラと言います。医学の世界に転用された最初は、腸内フローラです。腸内フローラとは、腸管内で細菌がお花畑のように、それぞれの菌が群生している状態を指しています。

こうした常在菌は体の働きを助け、病気の原因となる他の細菌の活動を抑える役割をしてくれます。「ラクトバチルス属というグループの乳酸桿菌」(以下、ラクトバチルス菌)は、常在菌の代表的な存在です。

かねてより、腸管内にはたくさんの細菌が生息しており、そうしたバクテリアによって消化吸収が助けられていることはよく知られていました。私たちの腸内には1,000種類以上もの細菌が約100兆個も生息しており、腸内フローラを形成していると考えられています。善玉菌なしには十分な消化がおこなえません。腸管内の善玉菌としては乳酸菌やビフィズス菌がよく知られています。こうした善玉大腸菌の中に、食中毒などで、例えばO157のような病原性の強い大腸菌が増殖すると、人は激しい下痢を起こしたり、時には死に至ることもあります。

 

 

子宮内にもフローラが存在する

長い間、子宮内は無菌状態と考えられてきました。というのも、女性の膣はいわば開口しており、細菌の侵入などが受けやすい状態になっています。それで膣内は酸性に保たれて、外部からの微生物の侵入等を防御するシステムが作られています。したがって、その内部の子宮内膜は無菌的な状態にあると考えられてきたのです。

ところが近年の子宮内膜の解析から、子宮内膜には種々のバクテリアが存在していることがわかってきました。女性の腟・子宮内において、ラクトバチルス菌はフローラを構成する中心的な細菌であり、カンジタやその他の感染症の原因となる細菌の増殖を阻害する物質を産生し、腟内・子宮内の環境を正常に維持する働きをしてくれます。また、子宮内に持続的な炎症を引き起こす細菌の活動を防いで子宮内環境を整える役割があると考えられています。

そしてラクトバチルス菌が多く生息していると、着床しやすくなることがわかってきたのです。そこから「子宮内フローラ」という考え方が広く浸透するようになってきました。子宮の中のお花畑が、ラクトバチルス菌のフローラで満たされていると、着床率が良くなるわけです。 実際に、子宮内フローラの、90%以上をラクトバチルス菌が占めている女性は、そうでない女性に比べて妊娠率が大幅に高くなることが知られています。一方で、病原性の微生物が子宮内に多く存在すると、免疫システムが活発化し、受精卵を攻撃、排除すると考えられているのです。

 

 

子宮内フローラの環境を整えるには

ラクトバチルス菌を増やし、子宮内の状態をよくするには、ラクトバチルス菌が多く含まれる食品を摂取することです。以下の発酵食品に多く含まれています。

・乳酸菌飲料

・ヨーグルト

・チーズ

・味噌

・醤油

・ぬか漬け

・納豆

また、ラクトバチルス菌の養分となる食べ物は、食物繊維やオリゴ糖を含んだ、以下のような食べものです。

・人参

・さつまいも

・大根

・大豆

・玉ねぎ

・にんにく

・牛乳

・はちみつ

・ごぼう

また、十分な睡眠時間を取り、適度な運動、ストレスを溜めない生活習慣を整えるなどの〝当たり前生活〟が大切なことは言うまでもありません。ストレスや睡眠不足は、女性ホルモンの乱れや免疫力を低下させてしまいます。

 

 

「不妊ルーム」は子宮内フローラをこう考えます

「不妊ルーム」は内科的なアプローチを行っているところですから、子宮内の状況などを調べることはしません。もっとも、婦人科でこうしたことを、本格に検査を行うと時間もかかりますし、大きな料金もかかります。なぜなら、膣内擦過物または子宮内腔液を採取し、そこに含まれるラクトバチルス属菌の割合、遺伝子解析をおこなうからです。

検査は行えば行うほどいろいろなデーターも出てきますし、そうした数値に一喜一憂することで、さらなる深みにはまっていく危険性ありますし、ネガティブな気持ちになってしまうと、妊娠力も落ちてしまうと私は思います。

私の考え方は、そうした難しい話は横において、先ほど述べた〝当たり前生活〟を行うようにお勧めしています。フォローアップをおこなっても妊娠せず、体外受精などが視野に入ってきたら、子宮内フローラ解析などの本格的な検査を考えればよいと思うのです。

便秘や下痢もなく体調が良い→腸内フローラ環境が良い→子宮内フローラの状態も良いと考えるのが自然であり、ポジティブ・シンキングだと思います。ストレスや、仕事の忙しさなども子宮内フローラに影響を与えます。「不妊ルーム」で妊娠される方の7割は不妊治療経験者ですから、ストレスフリーな環境にあるということが、妊娠にポジティブに働くと思うのです。すなわち、妊娠される方は、子宮内フローラの環境もよい状態にあるのではないか、私はそのように考えているのです。

著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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