DHEAサプリが卵子の成熟に大切な理由

DHEAサプリが卵子の成熟に大切な理由

現場から見えてきたDHEAサプリの可能性 最近、「不妊ルーム」に、3人の方の“卒業”報告が届きました。ここで言う卒業とは、体外受精にステップアップした患者さんが無事に妊娠し、産科へと移られることを指します。 この3名のカ […]

現場から見えてきたDHEAサプリの可能性

最近、「不妊ルーム」に、3人の方の“卒業”報告が届きました。ここで言う卒業とは、体外受精にステップアップした患者さんが無事に妊娠し、産科へと移られることを指します。

この3名のカルテを改めて確認したところ、全員が当院で「卵巣セラピー」のサポートを受けており、その中で「DHEA」の調整を行っていたことが共通していました。

また、時を同じくして、おひとりの女性から「赤ちゃんが無事に生まれました!」といううれしいメールも届きました。この方もDHEAの値を調整しながら体外受精に臨んでいた方でした。これらのケースを通して、私は改めて「DHEAの重要性」を強く感じています。

では、なぜDHEAサプリメントが妊娠のサポートになるのか? ここからは、DHEAと卵子の関係について、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。

DHEAとは? 体の中で“ホルモンのもと”になる存在

DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は、副腎という臓器から分泌されるホルモンで、エストロゲン(女性ホルモン)や、テストステロン(男性ホルモン)をつくる“前駆体”です。つまり、これが材料となって、体内で必要な性ホルモンが作られていくのです。

このDHEAは20代をピークに、年齢とともに徐々に減っていきます。特に35歳を過ぎると卵巣機能の低下が目立ちはじめ、それに伴い卵子の「質」や「数」が落ちてくることが知られています。

近年、DHEAをサプリで補うことで卵巣の環境が整い、妊娠しやすくなる可能性があることが国内外の研究で示されています。特に、卵巣の予備能力が低下した女性(AMHが低い方や高齢の方など)には、効果が期待できると言われています。

卵子にどんな効果があるのか?

卵胞の発育を助ける

DHEAは体内でテストステロンに変換され、このテストステロンが卵胞(卵子のもとになる細胞)に良い刺激を与えます。これにより、卵胞が女性ホルモン(FSHなど)に敏感になり、より元気に育つようになります。結果として、採卵できる卵胞の数が増えたり、育った卵子の質が向上する可能性があるのです。

ミトコンドリアの働きをサポート

卵子の質を語る上で欠かせないのが「ミトコンドリア」という細胞内の小器官です。ミトコンドリアは、細胞のエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)を生み出す場所で、卵子の成熟、受精、さらには胚の発育に至るまで深く関わっています。

加齢とともにミトコンドリアの働きは衰え、それが卵子のエネルギー不足や染色体異常の一因になると考えられています。DHEAはこのミトコンドリアの機能を改善し、エネルギー代謝を活性化させるといわれています。

卵巣の酸化ストレスを軽減する

年齢とともに卵巣の細胞には活性酸素がたまりやすくなり、これは「酸化ストレス」として卵子の質を下げる原因になります。酸化ストレスは細胞を傷つけ、老化を早めるとされています。

DHEAにはこの酸化ストレスを抑える「抗酸化作用」があるとされており、卵子やその周囲の細胞を守る働きが期待されています。これにより、卵子の成熟がスムーズに進み、より良い状態で受精に臨むことができるのです。

ホルモンバランスを整える

DHEAは年齢とともに減少し、それに伴ってホルモンバランスも崩れがちになります。DHEAを補充することで、体内のアンドロゲン値(男性ホルモンの一種)を適切に保ち、全体的なホルモンバランスを整えることができます。

このバランスが整うと、排卵が安定し、採卵や受精の成功率も上がると考えられています。事実、一部の研究では、DHEAサプリを摂取することで採卵数や妊娠率が上がったという報告も出ています。

最後に:必ず医師の指導のもとに服用を

DHEAはサプリメントとして市販もされていましたが、2018年より医療機関を通してのみ、服用できるようになりました。ホルモンに関わる成分であるため、もしDHEAを取り入れてみたいと思われたら、まずは医師に相談して、自分に合った服用方法確認することが大切です。

DHEAは、「卵子の質を変える」力を持っている可能性のある成分です。妊娠というゴールに向かって前向きに歩む方々にとって、大きな助けになるかもしれません。正しい知識と医師サポートのもと、必要なケアを取り入れていきましょう。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)