不妊治療において、西洋医学(生殖医療)と東洋医学(漢方や鍼灸)の併用は、相乗効果を期待できるアプローチとして注目されています。それぞれの特徴を活かしながら、最適な組み合わせ(ベストミックス)を考えることが大切です。
1. 西洋医学(生殖医療)の特徴
西洋医学の不妊治療は、科学的な根拠に基づき、診断と治療を行う点が特徴です。
● 主な治療法
- タイミング法: 排卵日を予測し、自然妊娠の確率を高める
- 人工授精(AIH): 精子を子宮内に直接注入
- 体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI): 受精を体外で行い、受精卵を子宮に戻す
- ホルモン療法: 排卵誘発や黄体補充のための投薬
● メリット
- 高度な技術により妊娠の可能性を高められる
- 検査により不妊の原因を特定しやすい
- 効果が数値で測定しやすい
● デメリット
- 体への負担(ホルモン剤使用による副作用など)
- 精神的・経済的負担が大きい
- 根本的な体質改善にはアプローチしづらい
2. 東洋医学(漢方・鍼灸)の特徴
東洋医学では、「妊娠しやすい体をつくる」 ことを目的とし、体質改善を重視します。
● 漢方のアプローチ
- 冷え性改善 → 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 血流改善 → 四物湯(しもつとう)、温経湯(うんけいとう)
- ホルモンバランス調整 → 加味逍遙散(かみしょうようさん)、六味地黄丸(ろくみじおうがん)
● 鍼灸のアプローチ
- 子宮や卵巣の血流を改善
- ストレス緩和(副交感神経を優位に)
- ホルモン分泌の調整
● メリット
- 体質改善ができ、妊娠しやすい体へ導く
- 副作用が少なく、長期的に続けられる
- 精神的なリラックス効果が高い
● デメリット
- 効果が出るまでに時間がかかる
- 個人差が大きい
- 科学的エビデンスが確立されていない部分もある
3. 西洋医学と東洋医学のベストミックス
「結果を求める西洋医学」と「体質を整える東洋医学」をうまく組み合わせることが重要です。
● 具体的な併用の方法
- 体外受精(IVF)前に東洋医学で体質を整える
→ 鍼灸や漢方で子宮内膜の質を改善し、着床しやすい環境を作る - ホルモン治療の副作用を東洋医学で軽減する
→ ホルモン剤の影響による冷えやむくみを漢方で緩和 - 移植周期に鍼灸を取り入れる
→ 着床を促すツボ(関元、三陰交など)への施術 - ストレス軽減に活用
→ 不妊治療中のメンタルケアとして鍼灸や漢方を取り入れる
4. どんな人におすすめ?
- 西洋医学のみでは成果が出ていない人
- ホルモン治療の副作用がつらい人
- 冷え性や血行不良が原因と考えられる人
- 自然妊娠を希望する人
5. 「不妊ルーム」での漢方薬使用法
「不妊ルーム」では、漢方薬の処方と、タイミング指導だけで妊娠する人も数多いのです。「不妊ルーム」でフォローアップをした人で、妊娠に至った人の8割以上の方が漢方薬を服用しています。とくに、黄体機能不全の人や、排卵障害が疑われる人に漢方薬はとくによく効く、という印象をもっています。
しかし、漢方薬はもちろんすべての人に効くわけではありません。卵管閉塞や子宮後屈などの形の異常に対して、漢方薬が無効なのはいうまでもありません。また、クラミジア、淋菌などの微生物が原因で不妊になっている場合にも効果はありません。クラミジアや淋菌などには抗生物質のほうがはるかに有効で、しかも確実です。
漢方薬でも副作用がみられる場合もあります。漢方薬には副作用がないと思っている人が少なくありませんが、これはまったくの誤解です。服用中に、発疹、かゆみ、消化器症状などがでる場合もあります。副作用に対しては、処方してくれた医師にすぐに相談することが大切です。
また、漢方薬は自己流で使うのはいけません。くすりである以上、必ず医師の指導のもとに服用することです。「不妊ルーム」では、保健適応の漢方薬を使用しますので、本人負担は月に2,000円程度です。