基礎体温表は妊活のみならず、女性の健康管理においても重要な役割を果たします。これまで基礎体温表と言えば「紙」でしたが、最近スマートフォン(スマホ)で基礎体温を記録することが一般的になってきました。紙、スマホ、双方にメリット・デメリットがあります。ですから、その相乗効果を期待することを考えてみたいと思います。
紙の基礎体温表のメリット&デメリット
◆メリット
シンプルで使いやすい
紙の基礎体温表は非常に直感的です。ペンと紙があれば記録でき、特別な技術やアプリの設定が必要ありません。スマホをあまり使わない人でも手軽に利用できます。
視覚的に直感的な記録
自分でグラフを描く過程で、体温の変化や周期を視覚的に理解しやすいという利点があります。この手作業による記録は、より体の状態を意識するきっかけになります。基礎体温の上下が明確にわかるため、排卵期や生理周期の傾向を掴みやすいのです。
アナログの強み
電子機器に依存しないため、バッテリー切れやアプリの不具合といった問題がありません。また、保存場所さえしっかりしておけば、長期間にわたるデータの蓄積や参照が容易です。
医師と情報の共有が可能
紙の基礎体温表は医療機関での診察時に提示しやすく、医師が一目であなたの状態を理解できます。印刷やデジタルデータの形式変換が不要なのも利点です。ここが重要なポイントですので、あとで例をあげて説明します。
◆デメリット
記録の手間がかかる
手書きでデータを記録し、グラフを作成する必要があるため、手間や時間がかかります。忙しい人などはドロップアウトすやすいのです。
データ分析が難しい
紙ではデータの傾向を自動的に分析する機能がないため、自己判断に頼る必要があります。そのため、周期の異常や問題を見逃す可能性があります。
スマホ基礎体温表のメリット&デメリット
◆メリット
自動記録と分析
スマホアプリを使用すると、基礎体温計からデータをBluetoothなどで自動的に転送できるものがあります。自動でグラフを作成し、排卵日や生理開始予定日を予測する機能が備わっている場合も多いです。
利便性
体温を入力するだけで済むため、手間が少なく、簡単に継続できます。スマホを持ち歩いている限り、電車の中など、いつでもどこでもデータにアクセス可能です。
データの共有が容易
アプリ内で医師とデータを共有できる機能がある場合もあり、不妊治療や婦人科の診察に役立つ場合があります。しかしながら、不妊治療では基礎体温表はないがしろにされており、残念です。パートナーと共有できれば、妊活を一緒に進めるサポートにもなります。
通知機能
記録忘れを防ぐためのリマインダー機能や、体温が異常な場合の警告や、排卵メッセージ機能などが搭載されているアプリもあり、健康管理、妊活がしやすくなります。
◆デメリット
プライバシーリスク
スマホアプリを利用する場合、データがアプリ提供会社のサーバーに保存されることが多く、個人情報が流出するリスクがあります。特に、基礎体温データはセンシティブな情報であるため、利用するアプリの信頼性を確認する必要があります。
依存性
アプリの便利さに頼りすぎて、自分で体調の変化を意識することが疎かになる可能性があります。アプリが故障したり、データが消失した場合、対応に困ることもあります。
初期設定や操作の難しさ
アプリの初期設定や使い方に慣れるまでに時間がかかる場合があります。特に技術に不慣れな人にとってはストレスになることもあります。
費用の問題
多くの基礎体温アプリは無料で利用できますが、一部の機能が有料の場合があります。また、Bluetooth機能付きの体温計などを購入する必要がある場合、紙よりも初期費用、ランニングコストがかかることがあります。
「不妊ルーム」での実際
「不妊ルーム」では紙のオリジナル基礎体温表をお渡ししています。通院される方には、「この基礎体温表は当院のパスポートです」などといった言い方をしています。当院では基礎体温表の中にデータを、患者さん自身に記入してもらいます。そして私は使っているクスリを基礎体温表の上部に帯のように線を引きます。そうすることによって、基礎体温変化と、数値の変化が、女性自身にもわかるようになります。
写真の方は排卵誘発剤クロミッドを使うことによって、頚管粘液の減少が認められました。それで、その副作用を補うために、クロミッド服用後にプレマリンという女性ホルモン薬を服用してもらったところ、2周期目に妊娠されました。そうした経過がこの紙1枚で把握できると思います。このように基礎体温表をビジュアルなものにして、〝体の中を見える化〟できると、基礎体温表をつけるモチベーションがアップします。スマホの基礎体温表はプライベートで、紙は通院パスポートといったような位置づけです。
結論
紙の基礎体温表はシンプルで安心感がある一方、手間がかかるというデメリットがあります。一方、スマホの基礎体温表は利便性や分析機能に優れているものの、プライバシーや技術面での懸念があります。どちらを選ぶかではなく、双方のメリットをいいとこ取りして、健康管理や妊活に役立てましょう。