「不妊ルーム」25年を振り返って(4)

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コラム

「不妊ルーム」25年を振り返って(4)

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2025年1月7日

私が考えた「3つの法則」、すなわち、

①基礎体温表をつける

②排卵日検査薬を併用する

③夫婦生活を増やす

によって、「不妊ルーム」で、不妊治療経験者を含め、数多くのカップルが妊娠している。私はこの簡便な方法を、世の中の妊娠につまずいているカップルに知ってほしいという思いが日々強くなっていきました。

 

なぜ「本」なのか?

そもそも私が「不妊ルーム」を開設したのは、

①私の周りに不妊治療をやめたら妊娠したカップルが大勢いるのはなぜか?

②不妊に悩むカップルすべてに不妊治療が必要なのか

この2つの問いに対する回答を、私なりに見出したいと思ったからです。

写真の三角定規は、その頃私が頭にイメージしていたものです。

 

 

登山を考えてみてください。赤い矢印は不妊治療であり、険しい山道をたどることになることが多いようです。一方、反対側に回れれば、苦労することもなく頂上にたどり着ける、そういうルートがあります、そういうメッセージを送りたいと思うようになったのです。

それには本という形アピールすることで、本屋さんを通して世の中の隅々に行き渡るのではないかと思いました。さらにアマゾンという会社が、アメリカから上陸し、インターネットを通した、eコマースで本の販売を始めるタイミングでもありました。

私は2001年の夏休み、1週間のクリニックの夏期休診を返上して、信州のひなびた温泉宿にこもり、原稿の大筋を書き上げました。それを東京に持ち帰り、さらに書き増していく作業を行い、9月ごろよりその原稿を出版社に持ち込み始めたのです。それがそもそも困難の始まりでした。

 

出版への茨の道とその先

内科医が書いた妊娠に関する原稿というのは、ほとんどの出版社が相手にしてくれませんでした。たまに「とりあえず原稿を読んでみます」という出版社もあったのですが、「うちでは無理です」「ほかを当たってみてください」となってしまいました。10社以上の出版社も訪ねたでしょうか。もはや出版社巡りなどする気力もない私は、ある出版社に電話をして、同様の要望を告げました。その出版社の電話をとった方の言葉も、「とりあえず読んでみます」という反応でした。それでも読んでもらえるならと思い原稿を送ったのです。

日常に忙殺され、原稿を送ったことを忘れた頃、1通のメールが届きました。そこには、「あなたの原稿には新しい理論が確立されています。ぜひうちから出させてください」と記されていたのです。出版社巡りの苦労を重ねたかいがあって、ようやく出版への道が開けたのです。それからというもの、私は何かに取り憑かれたように、原稿を書き進めていきました。

またこの頃、よく覚えている担当編集者の言葉は、「一般向けの実用書というのは、玄関からリビングまでの内容でよい」でした。要するに、イントロダクション的なことに加え、全体のアウトラインを提示するのが、一般向けの実用書のミッションだということです。さらなる情報が必要であれば専門書に移りなさいということです。私はそのことを肝に銘じて原稿の執筆を進めました。

 

戦友のような医師の協力があり

そして、原稿が完成するにつれて、私の心の中には不安が広がってもゆきました。内容には自信を持って書いているつもりでも、出版社回りをしていた時の、〝内科の先生が書いた妊娠に関する原稿〟という言葉が、私の頭の中でリフレインし始めました。確かに私の原稿を婦人科学的に見たら、正確さに欠ける可能性はありました。そんな時、私に救いとなったのが、インターネットのHPであり、メールでした。私は当時疑問があると、何人もの婦人科の先生にHPを介していろいろな質問をしていました。どの先生も大変にフレンドリーで、私の質問に誠実に答えてくれました。

そんな中で当時産業医科大学産婦人科助教授の吉田耕治先生に、何度もメール相談をしていた縁から、「現在本の出版に向けて原稿の準備を進めているのですが、その査読をお願いできませんか?」とメールしてみたのです。すると、先生から「原稿をお送りいただければ、読むだけ読ませていただきます。しかし、内科の先生が妊娠に関する本を執筆するというのは無理だと思います」とメールにはありました。しかし、〝読んでもらえるなら読んでもらう〟の出版社巡りの習い性で、私は原稿を送ったのです。吉田先生は、私の原稿の足りない部分、正確さに欠ける点などを多々指摘、そして丁寧に修正していただきました。こうして編集者、吉田先生の尽力もあり、本を読み物テイストにするという私の希望を保ちつつ、医学的情報に関して質の高い原稿となりました。

ところが、原稿をブラッシュアップしてゲラになり、そしてタイトルをつけるという最終段階になって、私と編集者は大いにもめたのです。編集者が提案したタイトルは、「2人でできる不妊治療」などといったありふれたものでした。最後には、タレント飯島愛さんのベストセラー『プラトニック・セックス』をもじった「タイミング・セックス」などというのもありました。私はこうした編集者の提案を遮り、私のアイディアである『妊娠レッスン』に決まったのです。結果的にこのタイトルが多くの女性たちに受け入れられることになりました。(つづく)

 

【お知らせ】

昨年12月よりXを始めました。役立つ妊活情報をいろいろ提供していきたいと思っています。「不妊ルーム」の〝不妊治療だけが妊娠に至る道ではない〟というメッセージを皆様に届けします。

XのURLは以下の通りです。

https://x.com/komacli_hojo

著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


≪アクセスMAP≫

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