アシステッドハッチングとはなにか
アシステッド・ハッチングとはあまり耳慣れない言葉かもしれません。ハッチングとは、「孵化(ふか)」、すなわち「卵からかえること」をさします。このハッチングを人為的に促すことをアシステッド・ハッチングと言います。
具体的なイメージをうるために、にわとりの卵を例に考えてみましょう。雌鳥が卵を温めて3週間ほどすると雛にかえります。雛にかえる際には、内側からくちばしで卵の殻をつっついて、それが割れ目となり、やがて雛として殻から抜け出してきます。もしその卵の殻がとても堅くて、内側からくちばしでつっついても破れなかったとしたらどうでしょうか?内側からくちばしでつっついても破れなかった場合、人間が外側からピンセットなどで殻をつついて穴を開けてやり、雛が出やすいように手助けをするのが人情でしょう。それと同様のことが生殖医療の現場でも可能なわけです。
アシステッドハッチングの仕組み
ヒトの卵子の外側は、透明帯というゼリー状の膜で覆われています。透明体は中の卵子を守る役割を持っているわけですが、女性の年齢が高齢化したり、凍結卵を融解した場合には、透明帯が堅く、また厚くなることが知られています。そこでこうした移植胚の外側の透明帯になんらかの方法で細工をし、ハッチングを促そうというわけです。
アシステッドハッチングは有効か無効か?
しかしながら、アシステッド・ハッチングに関しては、凍結融解胚移植では約10%程度、妊娠率の上昇を認めたという報告がある一方で、ARTを高年齢で行う場合や、ARTがくり返し不成功になっているケースでは、有効とするものと、無効とするものがあり、一般的なコンセンサスは得られていないのが現状です。
アシステッドハッチングの3つの方法
アシステッド・ハッチングの具体的な方法は、大きく3つに分けることが出来ます。顕微鏡下で胚を観察しながら、特殊な針を用いて機械的に透明帯に穴を開けるという方法があります。また、胚に薬剤によって化学処理を行い、透明帯を溶かすという方法もあります。そして、近年急速に普及しているのが、レーザーを用いて穴を開けるという方法です。レーザーを用いて穴を開ける方法であれば、胚そのものを傷つける心配もなく、そのうえ操作が簡便であり、急速に普及しています。体外受精や顕微授精を行って、良好卵を移植しても複数回不成功に終わった人に、アシステッド・ハッチングを行うと、着床率が上昇するという報告もあります。