私は妊活のご相談に来られる女性に、できれば「不妊ルーム」で妊娠してほしいとお伝えしています。これは、不妊治療を否定したいからではありません。ですが、「不妊治療=唯一の選択肢」と考えてしまう前に、一度立ち止まって、深呼吸して、自分の心と身体の声に耳を傾けてみてほしいのです。
「不妊ルーム」は“再生”の空間
「不妊ルーム」は、不妊治療の現場というよりも、「妊娠力を取り戻す場所」です。治療の前に、“本来の自分”を取り戻すという感覚に近いかもしれません。
妊娠を遠ざけているものは、排卵や卵管、ホルモンの問題だけとは限りません。多くの女性が、目に見えない“ストレス”や“自己否定感”、“がんばりすぎ”の積み重ねによって、妊娠しにくい状態に陥っています。
「不妊ルーム」では、そんな女性たちの身体と心の緊張をほどき、“妊娠できる自分”を取り戻すためのアプローチを行います。その柱となっているのが、「3つの法則」に基づいた妊娠サポートです。
「3つの法則」で妊娠にアプローチする
「不妊ルーム」では、妊娠を目指す上でとてもシンプルかつ効果的なアプローチとして、「3つの法則」をお伝えしています。以下のような内容です。
- 基礎体温表をつける
自分の身体のリズムを知る第一歩が、毎朝の基礎体温を記録することです。体温の変化を把握することで、排卵のタイミングだけでなく、ホルモンバランスや体調の傾向もわかってきます。「自分の身体の声を聴く習慣」は、妊娠の第一歩になります。
- 排卵日検査薬を併用する
基礎体温と合わせて、排卵日検査薬を活用することで、排卵のタイミングをより正確に知ることができます。これにより、タイミングを合わせたセックスが可能になり、妊娠の可能性が高まります。
- セックスを増やす
妊活中は「排卵日の前後だけ」という考えに縛られて、セックスの回数が極端に減る方が少なくありません。しかし、妊娠には「数」も大切です。無理なく、でも意識的に回数を増やすことが、結果的に妊娠への近道になります。セックスが「義務」にならないよう、楽しむ気持ちも大切にしてください。
この3つを実践することで、「不妊治療を始める前にできること」が見えてきます。そしてなによりも妊娠に近づけるのです。特別な医療処置をしなくても、妊娠しやすいタイミングと習慣を手に入れることができる。それが「不妊ルーム」で大切にしている考え方です。
卵巣セラピーで元気な卵子を育てる
「よい卵子を育てたい」と願うなら、まず卵巣が元気である必要があります。卵巣の血流が悪ければ、そこから生まれてくる卵子も元気がありません。そこで「不妊ルーム」は、オリジナルの「卵巣セラピー」を取り入れ、卵巣の血流を改善し、卵巣本来の働きをサポートしていきます。
卵巣セラピーを、金魚と水槽に例えると、わかりやすく説明できます。水槽の中にたくさんの金魚が泳いでいる状態をイメージしてください。金魚が元気で泳ぐためには、その水槽のコンディショニングが大切なはずです。水槽の温度管理や、酸素濃度などが適切でなければ、金魚は元気がなくなってしまうでしょう。これと同じようなことが女性の体にもいえるのです。
「不妊治療」に頼ると、2人目も“治療前提”になる?
私が「不妊ルームで妊娠してほしい」と願う理由は、もう一つあります。それは、“妊娠のイメージが変わる”ことです。
たとえば、あなたが不妊治療によってお子さんを授かったとします。時間もお金も気力も注ぎ込んでようやく妊娠した喜びは、計り知れません。ですが、数年後に2人目が欲しくなったとき、多くの方が「1人目が不妊治療だったから、2人目も治療しかない」と思い込んでしまわないでしょうか?それはまるで、催眠術にかかったかのように、です。
でも、「不妊ルーム」で妊娠された方の多くは、「私、まだあと3人は産めそう!」と明るく笑われます。これは、自分の中に“妊娠力”があるという実感があるからこそ出てくる言葉です。私は、そのような感覚を、多くの女性に持ってもらいたいと心から願っています。
医療と自然な回復、そのバランスを大切に
もちろん、治療が必要なときには医療の力が欠かせません。当院でも、不妊治療が必要だと判断した場合には、信頼できる専門医へご紹介しています。「不妊ルーム」での取り組みは、“不妊治療の代わり”ではなく、不妊治療と共存するアプローチです。
「不妊治療だけが妊娠に至る道ではない」
これは、当院の大切な理念です。そして、多くの女性にとって「妊娠とは、自分の中にある可能性を信じ直すこと」だと、私は感じています。あなたもまずは、「治療」の前に「回復」という選択肢を思い出してみてください。そして、「妊娠できる自分」を信じ直すことから、妊活を始めてみませんか。