今回の本を書きたいと思った理由の1つに、
基礎体温表への回帰という思いがあります。
基礎体温表が、どれだけ役に立つツールであるのか、
皆さんに知っていただきたいのです。
今から20年前に『妊娠レッスン』という本を出版しましたが、
その当時すでに婦人科診療の現場で、基礎体温表が
少しずつないがしろにされていると感じていました。
そして現在では、不妊診療の現場では、
基礎体温表が駆逐されてしまっています。
医師が「基礎体温表はつけなくてかまいません」
「基礎体温表は治療方針に何ら影響を及ぼしません」
などと患者さんに言っています。
本当にそうでしょうか?
私は基礎体温表こそが、あなたの体、
とりわけ大切な卵巣の状態を映す鏡だと思っています。
卵巣は体の中の臓器ですから、あなたには見えません。
しかし卵巣のシルエットとして投影されるのが基礎体温表なのです。
そして何よりも、基礎体温表と排卵日検査薬を有効に使うだけで、
なかなか妊娠にたどり着けないと思っているカップルの多くで、
妊娠を呼び寄せることが可能なのです。
そのことを「3つの法則」として、
わかりやすく、丁寧に説明したいと思ったのです。
不妊治療にエントリーしたら、なおのこと基礎体温表は大切になります。
なぜなら不妊治療は多くの場合ストレスを伴いますから、
基礎体温表をつけていて、その体温がガタガタになるのであれば、
治療がうまくいっていない、あるいはその医療機関との相性が
合わないという判断ができます。
「炭鉱のカナリア」と言う言葉をご存知でしょうか?
人の力で石炭を掘っていた時代、炭鉱の酸素の状態が悪くなった場合、
人間以上に敏感に感じ取るのはカナリアという鳥なのです。
ですから昔は、炭鉱の中にカナリアの鳥かごを持って入り、
常に鳴き声に注意したのです。
不妊治療の最中にその役割を果たしてくれるのが、基礎体温表なのです。
基礎体温表が婦人科診療から消えつつあるのとは対照的に、
強い援軍が現れました。
それはスマートフォンの登場です。
ガラケーの時代には、そうしたソフトはあったとしても、
本当に見るに耐えないものでした。
ところがスマホの時代になって、基礎体温に関する無数のアプリが登場し、
すばらしいものが多いのです。
ドロップアウトを防ぐ、飽きさせない工夫もいろいろとされています。
数ヶ月基礎体温を入力すると、排卵日を知らせてくれる、
などという優れものアプリもあります。
デジタルの時代なのですから、こうしたものを積極的に取り入れて、
自分の身体、とりわけ卵巣を守るツールとしましょう。
その一方で、紙の基礎体温表には紙の優位性があります。
一目で何ヶ月も確認できる一覧性、
いろいろな情報を簡単に書き込める利便性など、
紙はまだまだスマホに負けてはいません。
新聞をデジタル情報で読むのか、
紙情報で読むのかの違いと似てるかもしれません。
スマホと紙の基礎体温表のいいとこ取りして、
その相乗効果を期待しましょう。
基礎体温表をつけるのが楽しくなったらしめたものです。