「不妊ルーム」25年を振り返って(6)

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コラム

「不妊ルーム」25年を振り返って(6)

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2025年1月31日

『妊娠レッスン』が広く受け入れられたことにより、「不妊ルーム」にも大きな変化が現れました。何よりも妊娠につまずいているカップルが、数多く見えるようになったことで、私はそれぞれのカップルの心の中に潜んでいる問題について、これまで以上に深く向き合うことになりました。

 

『妊娠レッスン』から『妊娠力』へ

通常の婦人科診療では、診察がさっさと終わってしまうので、心の中にいろいろな問題を抱えていても、そうしたことを医師や医療スタッフに相談できないということがよくわかりました。

それで私は、事前に結婚から今日に至るまでの経過を書いてきていただき、30分の相談時間を取り、アドバイスをすること始めました。それによって、これからの方針を明確に示すことができるようになりました。あるカップルは、「以前の婦人科の先生の不妊治療では、ロードマップというものが全く見えませんでした。こまえクリニックに来て、これから私たちはどのようなペースで、どのように進んでいけばいいのか、見通しが立つようになりました」などと述べてくれるようになりました。

こうしたことになったのも、やはり『妊娠レッスン』を出版したからだと思います。そして時間が経つにつれて、「どうしたら穏やかな気持ちで妊娠を待つことができますか」「私たちのストレスを癒すような本を書いてください」などというリクエストをもらうようになったのです。

そして、こうしたリクエストに対する答え探しの旅が始まったのです。その旅は〝本当の旅〟となったのです。ちょっと脇道にそれますが、お話ししたいと思います。

 

「そうだ 京都、行こう。」

「どのようにしたら穏やかな気持ちで妊娠を待てるのか」という問いの答えは、なかなか見つかりませんでした。私のほうも行き詰まってしまったので、「チェンジ・オブ・エア」と言う言葉がありますが、クリニックの三日間の休みを利用して、なぜか私は京都に向かいました。たまたま旅行ガイドブックに「片泊まり」という文字が目に止まったのです。後でわかったことですが、京都の旅館には「片泊まり」というシステムがあり、宿泊の部屋と、朝食を用意するものでした。イギリスの安いホテルなどに数多くある「B&B(ベッド&ブレイクファースト)」の京都版ですね。そして、それからというもの、私は今日に至るまで京都との付き合いが始まるのです。

不思議なもので、京都の宿にこもって執筆すると、今までとは違ったアイディアが湧いてくる経験を何度もしました。最近オフィス等でも、デスクの場所を定めない「フリーアドレス」というものが普及しているようです。これは脳科学的にも、仕事の効率を高めるらしいのです。もちろん私はそんなことは知りませんでしたが、この京都ステイが、ブレイクスルーとなって、次なる本の構想も、頭の中に出来上がっていきました。

 

「妊娠力」という言葉は私の造語です

ところで、妊娠を望むカップルの心の持ち方をサポートする本の執筆にあたって、〝妊娠力〟という言葉を私が思いついたいきさつをお話しします。

私はある著名な週刊誌の副編集長から拙著『妊娠レッスン』に関する取材を受けました。その取材中に、私はとっさに「妊娠力」と言う言葉が口をついて出たのです。当時、『老人力』という本がベストセラーになっていて、私はその延長で「妊娠力を思いついたのです。

ところで、医学の用語として、かねてから「妊孕性(にんようせい)」という言葉があります。これは女性がどれだけ妊娠しやすいかを表す医学用語です。しかしこれは1人の女性の力を表すものです。

一方私が考える「妊娠力」とは、カップルというユニットから出てくる力を私は表しています。同じ健康状態にあるカップルでも、深く愛し合っているカップルと、そうでないカップルでは、やはり妊娠力に違いがあると考えるのは当然でしょう。そうしたことを本に表現すればよいのではないか? 私はそのように考えたのです。妊活という言葉もなかった時代、「妊娠力」というワードは、多くのカップルに支持されました。

さらに、もうちょっと余談を言いますと、私を取材をした週刊誌の記者は、「不妊治療はもういらない 妊娠力で子が授かる」と、雑誌に大きな見出しを打ちました。当時一般的だった電車の吊り広告にも掲出されましたので、この言葉はあっという間に人々に普及しました。

 

『妊娠力』はこんな本です

『妊娠力』(主婦と生活社)は、妊娠力を高めるためには「心身のバランス」の重要性に主眼を置いた本です。単に医学的なアプローチだけでなく、日々の生活習慣や精神的な側面にも目を向けています。本書は、以下のようなコンテンツです。

精神的なケアとパートナーシップ

妊活中に感じるストレスや不安を軽減する方法や、夫婦間のコミュニケーションの重要性が取り上げています。読者が前向きに妊活を進められるような具体的なアドバイスを数多く掲載しました。

不妊の原因と治療法

男女それぞれに見られる不妊の原因を具体的に解説し、一般的な治療法や最新の医療技術について紹介しています。また、早期に医療機関を訪れる重要性や、パートナーとの協力の大切さも強調しています。

生活習慣の改善

適切な食事、運動、睡眠といった基本的な生活習慣が妊娠力に与える影響について詳述しています。特に、栄養バランスの取れた食事やストレス管理が妊活に有益であることを強調しました。

年齢と妊娠

高齢出産のリスクや可能性についての科学的な視点から述べ、タイミングを見極めた計画的な妊活の必要性を解説しました。

 

『妊娠力』は、単なる知識の提供にとどまらず、妊娠を目指す人々の悩みに寄り添い、希望を与える内容となっています。初心者から不妊治療中の方まで、幅広い層に役立つ実用書です。

また、本の出版により、「不妊ルーム」での診療形態もさらに改善することができ、それとともに妊娠されるカップルの数も順調に増えていきました。

『妊娠レッスン』が実用情報を、『妊娠力』が心の持ち方という役割分担の相乗効果で、2冊の本は妊活につまずいたカップル、とりわけ女性たちに大きく支持されました。そして、そのことにより、私はさらなる執筆の旅が始まることにもなりました。(つづく)

【お知らせ】

昨年12月よりXを始めました。役立つ妊活情報をいろいろ提供していきたいと思っています。「不妊ルーム」の〝不妊治療だけが妊娠に至る道ではない〟というメッセージを皆様に届けします。

XのURLは以下の通りです。

https://x.com/komacli_hojo

著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


≪アクセスMAP≫

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