不妊治療とキャリア

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コラム

不妊治療とキャリア

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2024年6月25日

治療による休職

「不妊治療を考えているのですが、休職した方がよいでしょうか?」そういう相談を以前はたくさん受けました。不思議なことに最近では、こういう相談は本当に減ってきているのです。それはなぜでしょうか? 私が思うに、ここ十数年間の世の中の流れとして、女性が働くことが、当たり前になってきたからだと思います。

不妊治療をするにあたって、休職するというのは、私はあまり賛成できません。その大きな理由は、不妊治療を行うために休職した場合、一日中妊娠のことばかり考えていることにもなりかねません。仕事は当然責任がともないますから、仕事中は妊娠のことなど考えている暇は無いはずです。精神衛生上もよいと思うのです。

だからといって職場は、あなたの都合に合わせてくれるわけではありません。ではどうしたらよいのでしょうか? それは勇気を持って、上司や職場の周りの人たちに、「私はこれから妊活しますから、仕事の配慮をお願いします」と、はっきりカミングアウトする勇気を持つことです。それがあなたの後に続く女性たちにも大切だと私は思います。

 

治療によるキャリアプランの変更

不妊治療のためにキャリアプランを変更するのは、ありえないと考えてください。そういうネガティブな考え方は、すっきりとやめましょう。

不妊治療は、あくまで妊活のオプションと言う認識が大切だと思います。どうしても不妊治療と仕事が両立できない場合には、周りの方々に相談し、治療を受けやすい環境をセッティングしてもらいましょう。もしそれを受け入れてくれない組織であるならば、そこでキャリアプランの変更ではなく、転職を考えた方がよいかもしれません。

不妊治療のために、人生のルートを変更するのはおかしいことだと思います。もっと積極的にキャリアプランの中に、治療を取り込むような努力をしてみましょう。

 

産後の職場復帰

岸田首相が地方行脚で、車座の座談会を行っていました。富山県のある企業でのことがとても印象に残っています。

その工場に勤めている女性が、「子どもを2人産んで職場復職したが、復職前より責任のある仕事につけて大変感謝している。自分は時短で働いているし、こんなポストにつけるとは思っていなかった」と言うと、社長がこの女性に反応して、「社員が子どもを産んだ後も、以前にも増して仕事がしたいなどとは思ってもみなかった」と言ったことです。

これは雇用される側とする側との間に、意識のギャップがあるのだと思います。こうした意識のずれが日本中のいたるところで見られるのではないでしょうか。

ですから、女性たちが、「復職後も仕事への強いモチベーションある」ということを組織にアピールすれば、職場の女性の労働環境、そして日本社会も変わっていくように私には思うのです。そう! これからの日本を変えるのは、子どもを持とうと妊活している女性たちの力です。

制度が変わるのを待っていても、時間が経っていき、年をとるだけです。皆さんの方から行動力で組織に働きかけてみましょう。高いと思っている壁も、案外簡単に崩れたりするものです。壁を崩さないことには、壁の向こう側の景色がわからないでしょう。

 

妊活とキャリアアップ

女性のキャリアアップのモデルケースを考えてみましょう。大学を卒業して、ある企業に就職したとします。最初は右も左もわかりませんから、仕事を覚えることに精一杯だと思います。そうすると2年や3年はあっという間に経ってしまいます。

3年もすると、一通り仕事に自信もついてきますから、ますます仕事にのめり込んでいくのではないでしょうか? 仕事そのものも面白くなりますから、どうしても仕事中心の生活になってしまいがちです。今の女性たちは、職種によっては、男性以上に能力がありますから、仕事ができる女性が多いのです。

さらに2〜 3年もすると、そうした女性たちは昇給し、役職がついたり、プロモーションしていくことになります。そうなると、ますます仕事が面白くなるわけですね。そして気がつけば、30代半ばということになります。

もちろんそれまでの間にパートナーと巡り会い、結婚している場合も多いわけですが、二人の間に子供を持つことが現実として考えられにくいのです。

そして30代半ばになって、仕事も落ち着いたところで、「さて、子供でももとうか?」となるのではないでしょうか。ここに「妊娠の壁」、すなわち卵子のエイジングが存在しているのです。

私の大胆な考え方として、こうしたキャリアプランニングを全く根底から変えてみる提案をしたいと思います。30代半ばから妊活を考えるのではなく、30代半ばには子どもを2〜3人得て、そして願わくば、一番下の子が幼稚園や保育園に入っているというのが理想的かもしれません。これくらいになれば、子どもにもそんなに手がかかりませんし、それからは女性も思う存分仕事に打ち込むことができるというわけです。確かに、こうした人生を歩むためには、もちろん会社などの組織の理解も不可欠なのですが、それを変えるのも、あなた方、女性たちの力だと私は思うのです。

かつて、『オニババ化する女たち』(三砂ちづる 光文社新書)という本がベストセラーになりました。その本の中で、「女性は20代で子どもを産んでしまえ」、そうすれば40歳からの人生はバラ色だという主張がありました。100%賛成するわけではもちろんありませんが、こうしたキャリアプランニングを描くことができれば、これまでとはまったく違う人生の展開が期待できると思います。

著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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