人工授精
人工授精とは
人工授精はその名前から、非常に人為的に妊娠を操作するような印象を持ちますが、実際はそうではありません。人工授精とは男性に精液を提供してもらい、パートナーの子宮内に注入することをいいます。
この治療はおもに精子に問題がある場合、もっと正確に言えば、精子の数が 少ない場合や、運動率が低い場合が最も適応となります。正常な男性の場合、精液量は1.5~4.0ml、精子濃度5000万/ml以上ですから、通常1回 あたり7500万~3億程度の精子が射精されることになります。
人工授精を行うためには4000万程度の精子が必要と言われています。精子濃度が1000 万/ml以下の場合や、精子の運動率が極端に悪い場合(精子無力症)は、体外受精を考えることになります。
女性側に不妊要因がある場合の人工授精
女性のからだの中では排卵が近づくと、精子を迎えやすくするべく、子宮頚管粘液が増えていきます。子宮頚管粘液が足りていなければ、子宮内へ精子を迎えることが難しくなります。そこで人工授精を行い卵子と精子とを近づけることにより、妊娠率を向上させることが可能となるのです。
また、女性の体内にパートナーの精子に対する抗体(抗精子抗体)ができてしまうことがあります。抗精子抗体の有無は、女性の血液の状態をチェックすればわかります。その抗体ができた場合、パートナーの精子のことを「異物」だと捉え、排除すべく働いていくことになります。このような反応は、基本は膣内で起こります。ですから人工授精により直接子宮内への注入を行うことで解決できる場合もあります。
ヒューナーテストの結果が悪い場合も適応になります。この検査は性交渉を行ったあとに、女性の子宮の中で精子が運動しているかどうかを頚管粘液を採取する ことによって調べるものです。この結果がよくないということは、子宮の中の環境と精子の相性がよくないということです。しかしこの検査はタイミングによって、結果が左右されますから、結果が悪い場合には、何回か繰り返しておこなう必要があります。
人工授精の方法
かつては精液をそのまま子宮に注入するといったやり方が人工授精の基本でした。もちろん現在でもこのやり方で行っている施設も存在しています。ですが精液の中には、細菌等が混じっている場合もあるだけでなく、近年では精液内に受精阻害を引き起こす可能性を持つ物質があるということが判明した等の理由から、この方法を選ぶ施設は減少しているようです。
現在行われている方法とは……
人工授精と体外受精
さらに、男性、女性両方の検査で異常が認められない機能性不妊(いわゆる原因不明不妊)にも人工授精が行われることがあります。これは精子と卵子の距離を縮める意味だけでなく、高度生殖医療へと進行する前のステップとして行う場合もあります。理由としては、体外受精をはじめとする高度生殖医療を行うのであれば1回あたり30~60万円程度の費用がかかるのに対し、人工授精は1回あたり1~3万円で済むことが多いからです。ともに健康保険適用外の治療ですが、平均費用は大幅に差があります。
人工授精の成功率を上げる鍵は、精子の注入と排卵のタイミングを合わせられるかどうかにもあります。そこで、経膣超音波を用いて卵胞を計測したり、排卵を導くHCG注射を適切に行ったりすることで、卵子と精子とが結びつきやすくなるようにするのです。
他にも、生理が始まった直後から排卵誘発剤を計画的に使うことで卵子の排出へとつなげ人工授精を行う方法や、排卵される卵子の数を増やし妊娠率を高める目的で併用してHMG-HCG療法を行う方法もあります。
人工授精はどこの施設で、どのような症例におこなうかで、その妊娠率は違いますが、全体的には5~10%とそんなに高いものではありません。このことをあらかじめ知っておくことは必要だと思います。人工授精はその妊娠率の低さから5~10回おこなって、妊娠に至らない場合、体外受精へのステップアップをすすめる医師が多いようです。しかし、排卵がうまくいっていない可能性や、卵管采のかたちに異常があり、卵管が卵子をうまく取り込めない場合もあり得ます。 ここに腹腔鏡検査をおこなう理由があります。ですから、人工授精→腹腔鏡検査→体外受精という流れも重要です。
以下の項目に当てはまる方は、
カウンセリングをご一考ください。
- タイミング法をすでに行っていて
これから人工授精を考えている方 - 現在、人工授精の治療を行っているが
このまま続けるか迷っている方 - 体外受精で通院しているが、金額などの理由で人工授精を考えている方