ふたりでできるタイミング法
タイミング法を始める前に
自分でできる妊活方法の代表といえば、やはりまずは「タイミング法」があげられるでしょう。タイミング法は、妊娠する確率が高いと思われるタイミングを予測し、その期間に夫婦生活を営むことで妊娠を目指すという方法です。
タイミング法を始めるには、用意したほうがよいものが3つあります。1つめは「婦人体温計」、2つめは「基礎体温表」、3つめは「排卵日検査薬」です。
婦人体温計は基礎体温を測るために使用します。基礎体温は起床の直前に測定する体温のことをさしています。皆様のお話を聞いていると「基礎体温は、毎朝7時に測らなくてはならない」と考えている方が意外と多い印象です。それは必ずしも正しいとは言えません。各自の起床時間によって測る時間も変わってくるからです。なお、婦人体温計には、デジタル表示のものと、水銀柱による表示のものとがあり、当ルームでは水銀柱表示のものを推奨しています。
そして、基礎体温を測ったら必ず「基礎体温表」に書きこんでください。この際、月経×、中間通△、不正出血▲、性交○、帯下+などの記号も記入していくことをおすすめします。数ヵ月間つけることで、その方のからだの周期が、グラフとして視覚化された状態になります。これによりタイミング法を実践しやすくなるだけでなく、様々なメリットがうまれるのです。例えばもし将来、クリニックや病院での不妊治療を選ぶことになった場合、医師に相談する上での大切な情報源となること等が考えられます。
排卵と基礎体温
タイミング法においては、基礎体温の動向観察が非常に重要となってきます。基礎体温に関しては、世の中の皆様が誤解している傾向にあることがあるように思います。
その1つが「排卵日とはいったいいつなのか?」ということに関してです。一般的な基礎体温表の流れでは、低温期の最後あたりに「より体温が低くなる日(最低体温日)」が見られることが多くあります。ひとむかし前では、この日こそが排卵日だと考える人が少なくありませんでした。
そう考えられていた理由として、体温が上がるメカニズムがあります。卵巣内の卵胞(卵子を包む袋状のもの)が破れ排卵することで黄体に変化します。黄体より黄体ホルモンというものが分泌され、このホルモンのはたらきにより体温が上昇するのです。よって、体温が一番下がった日を排卵日とする説は、ある意味では理にかなっているとされていたのです。
長年、排卵を直接確認することは技術的に難しいとされてきました。ですが近年、経膣超音波法が登場したことで、卵胞のサイズまで測ることが可能となりました。これにより、排卵の時期を数時間単位で予測できるようになったのです。さらに排卵が発生した時期をより詳しく調べてみた結果、最低体温日に排卵するとは限らず、その翌日の排卵が多いことが判明したのです。ある調査では、最低体温日前日5%、最低体温日22%、最低体温日翌日(低温相最終日)40%、最低体温日翌々日(高温相初日)25%程度だという結果も出たようです。
この事実を正しく認識することで、タイミング法の正確さをよりアップすることができるのではないでしょうか。なお、排卵日の前日から排卵後3日までの5日間は最も妊娠しやすい「Golden 5 days」です。
排卵日は予測できる
自分でつけた基礎体温表を見返して「そうか、あの日が排卵日だったのか」と、振り返るだけで終わってしまっては、せっかくつけた意味が薄れてしまいます。タイミング法を行う上では、表を活用し「いつ排卵するか」を前もって知ることが大切なのです。
タイミング法の実践をさらに確実とするために使われるものとして「排卵日検査薬」があります。排卵日の直前、女性のからだの中ではLHホルモン値が急に上昇する現象であるLHサージが起こりやすくなります。LHホルモンというのは排卵を促すホルモンであり、LHサ-ジ発生後1日以内に排卵が起こる傾向にあります。血液中のLHホルモン値が一定以上となった際、尿の中にもこのホルモンが出てくることを利用して、排卵日検査薬を使って尿を調べることにより、LHサ-ジおよび排卵日を知ることが可能となるのです。
その昔、排卵日検査薬はかなり高価な薬でした。とはいえ近頃では、薬局等でも比較的気軽に購入できるぐらいの値段で入手可能になったように思います。家庭での排卵日検査が気軽に行えるようになったことで、タイミング法のハードルも下がったと見てよいでしょう。
もしご夫婦で妊活を始める場合、まずは一定期間、タイミング法を試してみることをおすすめします。期間としては例えば6ヵ月ぐらいはどうでしょうか。6ヵ月であれば、次のステップに進むための心の準備期間にもなるのではないかと思います。
不妊外来の受診をおすすめする場合
タイミング法等を試した結果、妊娠の兆候が見られない場合、不妊外来の受診を検討されるかもしれません。不妊外来を受診すると、状況を確認した上で、担当医師らにより検査や治療が開始されることとなるでしょう。検査は、妊娠に至っていない要因を明確にすることを目的として行われます。そして治療は、より早く妊娠に至る事を目的とすることになります。
もちろん不妊治療を行ったからといって、期待するとおりの結果が得られるとは限りません。特に不妊治療を行う上で夫婦間で気持ちの相違が生まれた場合、お2人の関係そのものが崩れてしまう可能性もある等、不妊治療が必ずしも状況を好転するとは限らず、むしろ悪化する可能性も否定できません。
ですが以下のようなケースに当てはまるなら、医師に相談することをおすすめします。受診する場合も、事前に医療機関に関する情報などを集め、自分たちにふさわしい医師を受診するような心がけは大切です。
- 明らかな不妊原因となる病気が分かっている場合
この場合は病気にもよりますが、医師のもとで適切な治療を受けることが妊娠への近道となる場合が多いでしょう。
- 女性が35歳以上の場合
女性は30歳を過ぎたあたりから、妊娠しやすさが徐々に低下するとされています。
- 子どもが欲しいと努力して1年以上になる場合
タイミング法など試せるものは試しつくした方であれば、医師のもとでの不妊治療にも向き合うことができる方が多い印象です。
- 男性にED(勃起障害)が存在する場合
この場合は、泌尿器科等へと相談するなどの方法があります。