「半年ほど妊活をしていますが、うまくいきません。これからどう進めたらいいか、不安で…」
Hさん(37歳)は、穏やかな表情の中に、迷いの色をにじませながら、そう話しました。「このままでいいのだろうか」「もっと早く進めた方がいいのではないか」という、切実な思いが感じられました。
妊活の最初の一歩でつまずかない
私は、「不妊ルーム」でたくさんの妊活の相談を受けてきましたが、実はこのような「最初の一歩をどう踏み出すか」に関するご相談がとても多いのです。
妊活は、つい「自分たちのやり方でまずは様子を見てみよう」と始めがちですが、その“始まり方”こそが、今後の道のりを大きく左右します。だからこそ、一度立ち止まって、じっくりと方向を見直す時間がとても大切なのです。
今回は、Hさんのケースを通して、妊活のスタートラインで迷っている方に向けて、「もっと気持ちがゆったりできる」セカンドオピニオンの考え方をお伝えしたいと思います。
まずは“今の自分”を知ることから
Hさんは現在37歳。確かに、統計的には35歳を過ぎると、妊娠率はゆるやかに下がり始め、37歳を過ぎる頃から、少し急な下り坂になります。でも、ここで誤解してほしくないのは、「もう遅い」と悲観する必要はまったくない、ということです。
年齢というのは、あくまで“一つの目安”でしかありません。大事なのは、「今の自分のからだの状態がどうなっているのか」を、ちゃんと知ることです。
半年妊活しても結果が出なかったのは、「少し立ち止まって、自分のからだと向き合うタイミングが来た」というサインと考えましょう。
妊活の基本は“チェックアップ”から
Hさんのように、自然な形で妊娠を目指して半年が過ぎた段階では、まず一度「妊孕性(にんようせい)=妊娠の力」を確認することをおすすめします。
チェックアップといっても、難しいことはありません。女性であれば、以下のような検査があります。
- AMH(抗ミュラー管ホルモン):卵巣の中にどれだけ卵子のもとが残っているかを数値で示します
- ホルモン検査:排卵や月経のリズムが整っているかを調べる血液検査
- 卵管造影検査:卵管がちゃんと通っているか、子宮の形に異常がないかを確認します
男性側も、精液検査を中心に、精子の数や動き、形などを見ていきます。最近では男性側の要因も意外に多く見つかるため、夫婦で一緒に受けることがとても大切です。
これらの検査で、「どこにハードルがあるのか」「それはどれくらいのものか」がわかれば、次の一手は明確になります。妊活の進め方は、カップルによって千差万別です。だからこそ、今の自分たちの“状態”を正しく知ることが、もっとも安心できる妊活への第一歩なのです。
自己流で進む前に、“作戦会議”を
Hさんは、半年間ご夫婦で、タイミングをはかりながら妊活を進めてこられました。37歳という年齢を考えると、ここで「もう少し自分たちに合った方法がないか」を考えてみるのは、自然なことです。
少し視点を変えて、「私たちにはどんな妊活スタイルが合っているだろう?」と考える時間を持ってみるのはいかがでしょうか。
たとえば、検査の結果が良好であれば、排卵誘発を用いたタイミング法や、人工授精(AIH)に進むのも一つの手です。もし異常が見つかれば、早めに体外受精(IVF)を視野に入れる必要があるかもしれません。
ポイントは、「正確な情報をもとに、納得して選ぶ」ことです。
妊活は、心が整ってこそ
妊活は、からだだけでなく、心にも影響を与える活動です。思い通りにいかないことも多く、自分を責めてしまったり、先が見えなくなって不安になることもあるでしょう。
でも、そんなときは一人で抱え込まないでください。妊活において「メンタルケア」は、検査や治療と同じくらい大切です。あなたの気持ちが軽くなるだけで、からだのリズムが整うこともあります。
セカンドオピニオンは、“別の答え”ではなく“別の見方”
今回、Hさんのように、「このまま進めていいのか不安」という気持ちを抱えている方にとって、セカンドオピニオンは新しい可能性を開く扉です。
セカンドオピニオンは、「誰が正しいか」を決める場ではありません。むしろ、「自分に合った方法は何か」を一緒に探していくためのもの。少し違う視点を加えることで、思いがけない選択肢が見えてくることもあります。
最初の半年が“成果”につながらなかったとしても、それは「無駄な時間」ではありません。むしろ、その半年があったからこそ、「今ここで、正しいステップに進める」機会が生まれたのです。
ゆっくり、でも確かに前へ
妊活は、ゴールの見えない道のように感じられることもあります。でも、だからこそ、一歩ずつ、今できることをていねいに積み重ねていくことが大切です。
Hさんのように、「ちょっと不安だけど、前に進みたい」と思える気持ちこそが、何よりも強い力になります。どうか、自分の気持ちに耳を傾けながら、ゆったりと進んでいってください。