45歳で出産されたAさんが、お子さんとご主人と一緒にご挨拶に来られました。
その笑顔に触れたとき、私は思わず胸が熱くなりました。
妊活の相談に長く携わっていると、このような瞬間に何度も立ち会っていますが、毎回感動があります。
「数え切れません」という言葉の重み
思い返すと、私はAさんに、初診時こうお聞きしました。
「これまでに体外受精は何回受けられましたか?」すると彼女は、少し微笑みながら「数え切れません」と答えられました。
その一言には、これまでの長い道のり、数えきれない挑戦と挫折、そしてそれでも諦めなかった強さが凝縮されていました。
Aさんは当院の「不妊ルーム」の「卵巣セラピー」を知り、来院されました。
そして「これからも体外受精を続けたい」という明確な意志をお持ちでした。
その強い思いに応えるべく、私も全力で後方支援を行いました。
結果として、受精卵の凍結に至ることはありましたが、移植をしても妊娠には結びつかない状況が続きました。
決断と転換 — 治療の方向を変える勇気
しばらくして、Aさんはひとつの決断をされます。
「体外受精をやめて、タイミング法に戻りたい」と。
これは決して後ろ向きな選択ではありません。
むしろ、ご自身の体と心に正直に向き合った、前向きな転換でした。
私はその決断を尊重し、漢方薬やDHEAサプリメントを中心とした体質改善のフォローアップに切り替えました。
いわば、“妊娠できる体づくり”に軸足を移したのです。
すると、それから約半年後、Aさんは妊娠に至りました。
医学だけでは説明しきれないもの
もちろん、漢方薬やサプリメントの効果はあったと思います。
しかし、それだけでこの結果を説明することはできません。
私が強く感じているのは、Aさんの心の持ちかたです。
彼女は、どんな状況でも前向きでした。
結果が出ないときも、「次にどうするか」に意識を向けていました。
「なぜできないのか」ではなく、「どうすればできるか」を考え続けていたのです。
この姿勢は、単なる気持ちの問題ではありません。
ポジティブ・シンキングは、ストレスホルモンの分泌を抑え、自律神経のバランスを整え、ホルモン環境にも良い影響を与えることが知られています。
つまり、前向きな思考は、「心」だけでなく、「体」にも作用するのです。
「信じる力」が体を変える
Aさんには、処方した漢方薬にも効果が見られ、黄体ホルモンの値なども改善してきました。
彼女自身、「これで体が良くなる」と信じて服用されていました。
その“信じる力”が、薬の効果をさらに引き出していた可能性があります。
実際、彼女は漢方薬の効果を心から実感され、お子さんのお名前にその漢方薬の名前を取り入れたほどです。
このエピソードには、私も正直驚きましたが、それ以上に「ここまで前向きに受け止められる力」に感銘を受けました。
ポジティブ・シンキングは特別な才能ではない
ここで大切なことをお伝えしたいと思います。
Aさんのような前向きさは、特別な人だけが持つ才能ではありません。
誰でも少しずつ育てていくことができます。
例えば、「できなかったこと」よりも「できたこと」に目を向ける。
「失敗した」と考えるのではなく、「経験を積んだ」と捉える。
このような思考の習慣が、少しずつ心と体を変えていきます。
妊活は一喜一憂しやすいものです。
しかし、その中で自分自身を責めたり、未来を悲観したりすることは、体にも心にも負担をかけてしまいます。
だからこそ、「前向きに考える力」は、妊活にはとても大切なのです。
45歳で母親になれた本当の理由
Aさんが45歳で母親になれた理由。
それは、単に治療法が変わったからではありません。
漢方薬やサプリメントだけでもありません。
「自分はきっと大丈夫」と信じ続けたこと。
状況が変わっても前向きに選択し続けたこと。
そして、どんな時も希望を手放さなかったこと。
これらすべてが重なり合って、妊娠という結果につながったのだと思います。

