AMH低値でも漢方薬とサプリで妊娠したSさん——40歳からの「卵巣セラピー」で2人目の妊娠

「自然に任せていたけれど…」40歳で始めた妊活

「上の子を授かれたのだから、きっと2人目も自然にできる」

多くの方がそう考えられると思います。

今回ご紹介するSさん(41歳)もそのひとりでした。

第一子を出産されたのは39歳。

産後も体調は比較的安定していて、授乳が落ち着いた半年後から2人目を希望されました。

ところが自然に任せて半年ほど経っても妊娠の兆しはなく、「一度きちんと話を聞いてみよう」と思い立ち、「不妊ルーム」に来院されました。

ここから、Sさんの「卵巣セラピーによる妊活」がスタートしました。

AMH が年齢以上に低い数値

初診で検査をしてみると、少し気になる結果が出ました。

  • AMH(抗ミュラー管ホルモン): 0.65
  • DHEA :692(40代後半のレベル)
  • ビタミンD : 16.5(欠乏状態)

AMHとは、卵巣の中に残っている「原始卵胞」の数を推定する目安です。

「卵巣年齢」などと言う医師もいます。

40歳の平均値を下回り、44歳相当といえる数値でした。

つまりこの段階で、自然妊娠が難しくなっているサインが出ていたのです。

けれど「不妊ルーム」は、こうした状況を“悲観的な診断”としてではなく、「今からどう整えていくか」という“治療戦略の出発点”として捉えています。

サプリメントと漢方で「卵巣の底力」を引き出す

Sさんには、まず体内の環境を整えるために以下の3つのサプリメントを提案しました。

  • DHEA:卵巣機能とホルモンバランスの底上げを狙う
  • ビタミンD:ホルモン代謝や免疫に深く関わる
  • コエンザイムQ10:卵子のエネルギー代謝を改善する「ミトコンドリアサプリ」

これらを併用することで、卵巣や卵子が持つ本来の力を引き出していきます。

さらに、Sさんには漢方薬の当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)も服用してもらいました。

この漢方薬は、血流を改善し、卵巣や子宮への血の巡りをよくしてくれる作用が期待できます。

40代の妊活では「血流改善」と「ホルモンバランスの底上げ」が重要なポイントです。

数値が語る「からだの変化」

治療を始めてから、DHEAの値は着実に改善していきました。

半年後には DHEA:1819、FSH(卵胞刺激ホルモン)も 8.8 と、とても好ましい値に整っていました。

これは、卵巣機能が実際に回復してきているサインです。

特に40歳以上の妊活では、「いつ体の状態が妊娠に適したできるか」が重要になります。

卵巣は毎周期コンディションが違います。

FSHが高くなりすぎる周期は、卵の発育がうまくいかないことが多いのですが、FSHが8〜10のように落ち着いた周期では、妊娠のチャンスが広がります。

Sさんの妊娠周期は、まさにその「ベストな周期」でした。

クロミッドを使わない自然周期排卵での妊娠

治療の過程では一時的に排卵誘発剤(クロミッド)を使用した周期もありました。

しかし、最終的に妊娠に至ったのは、クロミッドを使用しない周期でした。

通院から半年後、排卵のリズムが整い、卵巣のコンディションが高まっていたことで、自然なかたちでの受精・着床が成立したのです。

41歳での2人目の妊娠でした。

数値の裏にある「ストーリー」

妊娠周期のホルモン値を振り返ってみましょう。

  • FSH:8.8
  • DHEA:1819

この2つの値は、40歳以上の方が妊娠されるときによく見られる理想的な数値です。

妊娠には「卵巣のポテンシャルが引き出される時期」があります。

このような状態になるように、妊娠力を高めていくことがとても大切なのです。

サプリメントや漢方薬は、“魔法の薬”ではありません。

けれど、数値の推移を見ながら、適切にフォローアップをおこなうことで卵巣の状態を底上げし、ホルモンバランスを整える強力なサポーターになり得ます。

「卵巣セラピー」という考え方

私は、40歳以上の妊活では「卵巣セラピー」という視点が欠かせないと考えています。

いきなり強い刺激で排卵誘発をおこない、採卵・移植を繰り返す体外受精という医療ではなく、その前段階として、卵巣が本来持つ力を引き出すことが大切なのです。

これは、妊娠率の向上だけでなく、その女性のからだ全体の健康にもつながります。

Sさんのケースでは、

  • DHEAでホルモンバランスを整え
  • ビタミンDで代謝・免疫の土台をつくり
  • コエンザイムQ10で卵子の質を支え
  • 当帰芍薬散で血流と卵巣環境を改善する

この4つのアプローチの相乗効果で妊娠につながりました。

「年齢が高いから」では終わらせない

AMHが低いこと、年齢が40歳を超えていること——

これらは確かに妊娠の難易度を上げる要素ではあります。

しかし、「AMHが低い=妊娠できない」ではありません。

実際にSさんのように、丁寧にからだを整えることで、妊娠に至る方は少なくありません。

「不妊ルーム」では、「諦める理由」ではなく、「可能性を広げる方法」を追求します。

そのための選択肢として、サプリメントや漢方薬を用いた卵巣セラピーがあります。

妊娠は「準備された周期」に不意にやってくる

妊娠は、偶然のように見えて、じつは“整った”プロセスの先にあります。

体の状態が整い、ホルモンバランスが整い、卵巣が最も力を発揮できる周期——

その「チャンスの波」に乗ることが、40歳以降の妊活ではとても大切です。

Sさんは、その波にうまく乗ることができて、妊娠となりました。

これは特別な話ではなく、誰にでも起こりうる“可能性のある現実”です。

年齢やAMHの数値に不安を感じている方へ。

まずは自分のからだの声に耳を傾け、整えることから始めてみませんか。

あなたの卵巣には、きっと可能性が眠っています。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)