2600名という節目の妊娠
12月初め、当院で1人の妊娠が確認され、こまえクリニック「不妊ルーム」で妊娠に至ったカップルの数が、ちょうど2600名に達しました。
開院が26年前。当院の理念に基づく「不妊ルーム」を立ち上げたのは、その直後のことです。
振り返ってみると、毎年100名の妊娠がに生まれてきたことになります。
女性の結婚・妊活年齢の上昇が進み、卵巣機能の低下に悩みながら、さらに追い打ちをかけたコロナ禍。
外来の制限、心理的ストレスの増大、生活リズムの変化など、妊活には非常に厳しい環境も経験しました。
それでも妊娠に至る方が増え続けている背景には、当院が積み重ねてきた取り組みが確実に「結果」につながっているからだと思います。
なかでも、
- 卵巣の血流・代謝を整える「卵巣セラピー」
- 心身のストレスを緩める「オキシトシン妊活」
この2つの柱は、ここ数年の妊娠率向上に大きく寄与しています。
生殖医療医との連携が妊娠率を底上げした
「不妊ルーム」は“自然妊娠の入口”として、体調の土台を整え、生活の改善を積み重ねる場所です。
しかし、すべての方が自然なかたちで妊娠できるわけではありません。
必要な場面では迷わず生殖医療の医師と連携してきました。
この連携の質が、この数年で飛躍的に高まってきました。
「このホルモン値なら次周期はレトロゾールでしょうか?」
「排卵後の黄体補充は必要でしょうか?」
といった問いかけに、生殖医療の先生のアドバイスが加わることで、通院者の妊娠率は明確に上昇しました。
私はこうした外部の専門医の力を“陰の支え”と呼んでいますが、2600名という節目を語るうえで欠かせない存在です。
治療というよりも“チーム医療の相乗効果”と言うべき成果です。
内科的生殖医療が奏功している
不妊治療というと、多くの方が「卵子」「卵巣」「子宮」だけにフォーカスしがちです。
しかし実際には、内科的な要素が妊娠の成否を大きく左右することが、近年より明確になっています。
「不妊ルーム」では10年以上前から、
- 甲状腺ホルモンの最適化
- DHEAサプリメント
- ビタミンDサプリメント
- ミネラルバランス調整
といった、身体の“根っこ”を整える治療に注力してきました。
この積み重ねが、2600名妊娠の大きな割合を支えています。
◆甲状腺ホルモンの最適化
甲状腺は「代謝の司令塔」。
少し機能が落ちるだけで、排卵が遅れたり、受精卵が着床しづらくなったりします。
当院では妊娠に最適な甲状腺ホルモンの“ピンポイントゾーン”を細かく管理しています。
「正常値だから大丈夫」ではなく、「妊娠向けの正常値」を目指す点が特徴です。
◆DHEAサプリメント
卵巣の若返りホルモンと呼ばれるDHEA。
卵胞の成長を助け、採卵数・卵子の質改善に寄与するケースが多いため、40歳前後の方を中心に処方してきました。
また、体外受精との相性も良く、「以前より卵の育ちがよくなった」と実感される方も少なくありません。
◆ビタミンDサプリメント
妊娠率との相関が報告されているビタミンD。
現代日本人は驚くほど不足しています。
当院では全員に検査を行い、不足している方には適切な量を補っていただくことで、妊娠率・着床率の向上を実感しています。
◆亜鉛—銅バランスの調整
ミネラルは単体では働きません。
特に妊活では「亜鉛と銅のバランス」が極めて重要です。
亜鉛不足は排卵障害・黄体機能不全につながるため、当院では血液データをもとに細かく調整しています。
これらの “内科的生殖医療”が功を奏し、2600名の妊娠につながっています。
「チームこまクリ」という力
ここ数年、私がとても強く感じているのは、通院者同士の“支え合いの空気”が、妊娠率を底上げしているのではないかということです。
「この前妊娠された方の話を聞いて、もう一度がんばろうと思いました」
「ここは気持ちが整う場所です」
「43歳の妊娠に元気をいただきました」
そんな言葉をいただくことが増えました。
妊活は孤独で、うまくいかない周期が続くと自分を責めてしまいがちです。
だからこそ周囲の成功体験や温かい言葉が、通院者の行動を前向きにし、妊活を続ける力になっています。
私はこれを「チームこまクリ」と呼んでいますが、この雰囲気は作ろうと思って作れるものではありません。
26年間通院者と向き合い続けた結果、自然に育まれたものです。
通院者から教わり続けた26年
妊娠率向上の原動力を一つ挙げるとすれば、それは「通院される方に支えられた」という事実です。
ほかのクリニックの新しい検査、食生活の工夫など、通院者が持ち込む情報は、医師の固定観念を打ち破るヒントになります。
「卵巣セラピー」も「オキシトシン妊活」も、通院者との対話から生まれた知見です。
妊活に絶対的な正解はありません。
だからこそ、私は通院者と一緒に“答えを探し続ける医療”を大切にしてきました。
これからも大切にしてゆきます。

