◆ビタミンDはダイヤモンドの価値がある!?
ビタミンDは、妊活はもとより、女性が一生つきあっていく必要のあるダイヤモンドのようなビタミンというお話しをしたいと思います。
なによりもビタミンDが重要な理由は、日本人女性のほとんどがビタミンD不足だからです。
日本内分泌学会の基準によれば、「20ng/mL以下が不足」「21〜29ng/mLが不十分」なのですが、両方合わせると、9割の日本人女性が該当します。
ではなぜビタミンDが不足するのでしょうか?
ビタミンDは20%が食物から摂取されますが、残りの80%は太陽の光によって、皮膚で合成されます。
ところが日本人、とりわけ女性は日よけに熱心ですから、日焼け止めクリームを塗ったり、肌を被ったりして、日光を避けようとします。
そうです。ビタミンDは葉緑素のような光合成ビタミンでもあるのです。
なのに、日よけ対策によって合成が阻害され、ビタミンD不足になるのです。
◆ビタミンDチェック法と注意点
「ではご自身でどれぐらいビタミンDが不足しているのかわかりますか?」
ビタミンDは、医療機関で25OHビタミンDとして、採血で簡単に測定できます。
また、脂溶性ビタミンといって、水に溶けず油に溶けるビタミンなので、尿中に排泄されません。ですから、自己判断でサプリメントの摂取は危険です。
過剰摂取の可能性もありますので、医師の指導のもとに摂取するということが大切です。気になる方は、かかりつけの産婦人科に問い合わせてみてください。
◆ビタミンDと妊娠率
ビタミンDは生殖機能に重要な役割を果たすビタミンです。しかしながら、ビタミンDがどのように働いているのかというメカニズムはわかっておりません。
ですが下記のような研究から、ビタミンDが生殖に必要なことは、はっきりしています。
体外受精に関する研究で、20 ng/mL以下の方と、20 ng/mL以上の方と比較したとき、前者の妊娠率が低いことがわかっています。
このような研究結果から、ビタミンDが直接子宮内膜に作用し、着床率を上げる可能性があるといわれています。
さらに、ビタミンDが高いとAMH(抗ミューラー管ホルモン)の値も高いという興味深い報告があります。ですから、40歳以上の女性では、ビタミンDが卵巣機能の維持に何らかの役割を果たしている可能性があるのです。
ですから、AMHの低い女性は、ビタミンD製剤の摂取により、AMH値の改善、ひいては妊娠率が向上する可能性があります。
また最近の研究から、ビタミンDは男性因子にも重要であるということがわかってきました。
ビタミンDは精子の運動能力を高め、卵子に飛び込む力のアップにも関与していることが、最近の研究でわかってきたのです。
◆妊娠後とビタミンD
ビタミンDは妊娠してからも大切なビタミンです。
生まれてくる子どもには、手足も骨格も筋肉もあり、血液も流れています。
これはどこから原料が運ばれてくるのでしょうか?
当たり前ですが、胎盤を通してお母さんからですね。
子供は胎内でお母さんからどんどんいろいろな原料を奪っていきます。
骨の成分ももちろん例外ではありません。
ビタミンDは骨を作る手助けをしますので、お母さんのビタミンDが十分にないと、骨がもろくなりやすいですし、生まれてくるお子さんも十分な骨形成できない可能性もあります。
ビタミンDは免疫系を強化するということが知られています。
適切なビタミンDの摂取は、免疫機能の適切な調節に役立ち、母体と胎児の健康をサポートします。
さらに女性は妊娠すると、胎児+羊水で体重が増えますので、妊娠期間中は耐糖能異常、さらには糖尿病になりやすいことはよく知られています。
そしてビタミンDは、妊娠糖尿病の発症を予防する可能性があることが最近知られるようになりました。
◆ビタミンDが多く含まれる食べ物とサプリメント
ビタミンDの摂取について太陽の光からの摂取以外に、食事からの摂取ということも忘れてはいけません。
ビタミンDが豊富な食品のいくつか例を挙げます。
魚類にはビタミンDが豊富で、特にサーモン、マグロ、鯖、ニシンなどに多く含まれています。
また、鶏卵の卵黄に、ビタミンDが豊富なことはよく知られています。
きのこにもビタミンDが多く含まれ、特にキクラゲにビタミンDが豊富です。
食事に注意をして、また日光を浴びても、十分なビタミン Dの濃度に達しない場合は、第3の選択肢として、サプリメントによるビタミン Dの摂取が挙げられます。
ビタミンDサプリメントは、ドラッグストアなどで広く販売されておりますし、価格も比較的安価なので、手に取りやすいサプリメントです。
しかし先ほど述べたように、ビタミン Dは水に溶けず、油に溶ける脂溶性なので尿中に排泄されず、過剰に摂取してしまうという問題もあります。ですから、医師の指導のもとに摂取することが大切です。
このようにビタミン Dは妊娠のみならず、骨粗しょう症、免疫系など、女性の一生にずっと関わる大切な「ダイヤモンド・ビタミン」なのです。
◆プレコンセプションケアとビタミンD
最近になって、「プレコンセプションケア」ということが、盛んに言われるようになりました。
プレコンセプションケアとは、「妊娠する前から健康管理に気をつけ、将来の妊娠に備えましょう」という考え方です。
これは、女性のみならず、男性も健康に気をつけ、妊娠しやすい体作りをすることが大切です。
この際に重要になってくる栄養素のひとつが、ビタミンDなのです。
これまで述べてきたように、日本人のほとんどの女性は、ビタミンDが不足していることが多いため、常日頃から「ビタミンD」を意識することは、本当に大切なのです。
例えば適度な散歩や森林浴など日光を浴びることで、巡り巡って妊娠にも良い影響を与えます。
「不妊ルーム」でも、漢方薬、排卵誘発剤などを使わずとも、ビタミンDサプリメントの摂取を勧めただけで、妊娠する女性もたくさんいますので、一度ご相談にいらしてください。