ビタミンDが多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)妊活に大切な理由

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コラム

ビタミンDが多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)妊活に大切な理由

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2025年2月20日

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、生殖年齢の女性の約10%が罹患するホルモン異常疾患であり、排卵障害や不妊の主要な原因の一つです。PCOSの女性は、インスリン抵抗性、男性ホルモン(テストステロン)の過剰、月経不順などの症状を抱えることが多く、妊娠しにくい状態になりやすいことが広く知られています。

近年、PCOSとビタミンDの関係が注目されており、ビタミンDが妊娠率を向上させる可能性が報告されています。ここでは、ビタミンDのPCOSにおける影響や、妊娠率向上に寄与するメカニズムについて解説します。

 

PCOS患者におけるビタミンD欠乏の現状

ビタミンDは、カルシウム代謝の調節だけでなく、免疫機能やホルモンバランスにも関与する重要な栄養素です。しかし、PCOSの女性の多くが、ビタミンD欠乏状態にあることが報告されています。ある研究では、PCOS患者の約67〜85%がビタミンD不足(血中25(OH)Dレベルが20ng/mL未満)であることが明らかになっています。

ビタミンD欠乏がPCOSの病態と関連する理由として、以下の点が挙げられます。

インスリン抵抗性の悪化

PCOSの特徴の一つであるインスリン抵抗性は、血糖値の調整不良を引き起こし、体重増加や排卵障害につながります。ビタミンDはインスリンの働きを助ける役割を持っており、不足するとインスリン抵抗性が悪化し、PCOS症状をさらに悪化させる可能性があります。

テストステロン過剰の増強

ビタミンDはテストステロンの産生を調節する働きがありますが、ビタミンDが不足するとテストステロンの過剰産生が促進され、PCOSの症状が悪化する可能性があります。これは、排卵障害や月経不順の原因となり、妊娠しづらい状態を引き起こします。

慢性炎症の促進

PCOS患者は慢性的な炎症を伴うことが多いとされています。ビタミンDには抗炎症作用があり、不足すると体内の炎症レベルが上昇し、卵巣機能の低下や卵胞成熟障害が引き起こされる可能性があります。

 

ビタミンDがPCOSにおける妊娠率向上に与える影響

ビタミンDの適切な摂取がPCOS患者の妊娠率向上に寄与するメカニズムについて、いくつかの研究が示唆しています。

排卵機能の改善

ビタミンDは卵胞の発育や排卵を促進する可能性があります。ある研究では、ビタミンDを補給したPCOS女性の約60%で排卵の改善が見られたと報告されています。排卵が安定することで、妊娠のチャンスが高まります。

黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)のバランス調整

PCOS患者では、LHとFSHのバランスが乱れ、LHが過剰に分泌されることが多いです。このホルモンバランスの乱れが排卵障害を引き起こします。ビタミンDはこのホルモンバランスを調整し、排卵の正常化に寄与する可能性があります。

インスリン感受性の向上

PCOS患者の多くはインスリン抵抗性を伴っており、これが不妊の原因となっています。ビタミンDの補給により、インスリンの感受性が向上し、血糖コントロールが改善されることで、ホルモンバランスが整い、妊娠しやすい状態が作られます。

炎症の軽減と卵巣環境の改善

炎症レベルの高いPCOS患者において、ビタミンDの抗炎症作用が卵巣の環境を改善し、受精や着床の成功率を向上させる可能性があります。

 

ビタミンD補給の具体的な方法と推奨量

PCOS患者において、ビタミンDの適切な補給が妊娠率向上に寄与する可能性があるため、食事やサプリメントでの摂取が推奨されます。

食事からの摂取

ビタミンDが豊富に含まれる食品として、以下のものが挙げられます。

鮭やサバなどの脂質の多い魚

卵黄

きのこ類(特に日光を浴びたもの)

強化牛乳やビタミンD強化食品

日光浴

ビタミンDは皮膚で紫外線を受けることで生成されます。1日15〜30分程度の日光浴が推奨されています。

サプリメントの活用

PCOS患者においては、食事や日光浴だけでは十分なビタミンDを摂取できないことが多いため、サプリメントを活用することも有効です。一般的に、血中ビタミンDレベルが20ng/mL未満の女性には、1日1,000〜4,000IUのビタミンDサプリメントが推奨されることが多いです。ただし、摂取量については医師と相談することが重要です。なぜなら、ビタミンD血中濃度をモニターリングできるからです。

 

まとめると

PCOSは不妊の主要な原因の一つであり、ビタミンD欠乏がその病態を悪化させる要因の一つであることが示唆されています。ビタミンDの適切な補給により、インスリン感受性の向上、排卵機能の正常化、ホルモンバランスの調整、炎症の軽減などが期待され、結果的に妊娠率の向上につながります。PCOS患者は、食事、日光浴、サプリメントを適切に活用しながら、ビタミンDの適正なレベルを維持することが重要です。

 

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著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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