体外受精エクスプレスに乗ってしまった女性
第一子を自然妊娠され、第二子を望んで不妊治療クリニックのドアをノックした30代後半の女性がいました。
年齢、子宮内膜症を理由に「ステップアップしましょう」という説明のもと、ほぼ迷う間もなく体外受精に進む流れができあがっていきました。
採卵・培養・移植という体外受精のステップが順調にいくも、結果は残念ながら陰性。
この間の身体的負担、通院日程の複雑さ、仕事との両立の厳しさ……
そのすべてを経験された後、主治医からはこう提案されました。
「良い卵を保存してからチョコレート嚢腫の手術でも遅くはないですよ」
医師として医学的な提案だったのでしょう。
しかし、彼女の胸に去来したのは、まったく別の思いでした。
「仕事を続けながら、これほど負担の大きい治療を繰り返すことはできない」
「体外受精をしなくても、まだできることがほかにあるはずだ」
ここで彼女は初めて立ち止まり、治療の流れに乗せられていた自分に気づいたのです。
“不妊治療=体外受精エクスプレス”という現実への疑問が生まれたのです。
不妊治療のスパイラルから降り、当院を訪れた理由
彼女が「不妊ルーム」を訪れたのは、これ以上の負担を避けたいという切実な気持ちと、「治療そのものの方向性を立て直したい」という冷静な判断からでした。
当院の特徴は、
- 治療の身体的負担が少ないこと
- 通院者の生活と両立できること
- 妊娠の成立を“治療依存”ではなく“身体づくり”からとらえ直すこと
彼女には、おそらくこうした方向性が合っていたのでしょう。
来院後しばらくして彼女が語った言葉がとても象徴的でした。
「やっと“私の治療”を取り戻せた気がします」
不妊治療が「医師主導になりすぎている」と感じる患者さんは少なくありません。
治療を受けに行くのに、どこか置いてきぼりになってしまう——
そんな感覚を抱えて来られる方は実際多いのです。
妊娠に至る道は1本ではない
私は常々、通院されている方にお伝えしていることがあります。
それは、
「不妊治療だけが妊娠に至る道ではありません」
ということです。
不妊治療は確かに医学的には有効な手段ですが、その前にできること、同時に取り組むべきことは数多く存在します。
たとえば、
- ホルモンバランスを整える生活リズムの改善
- ストレスによる交感神経の過緊張をリセットする習慣
- 夫婦関係・性交渉の質の見直し
- 食事や睡眠の“妊娠体質づくり”
- 基礎体温や排卵タイミングの正確な把握
こうした要素が整わないまま体外受精に突入すると、
“ガソリンが入っていない車をいくら押しても動かない”のと同じで、結果が伴いにくいのです。
彼女は当院で身体と心を整えながら、無理のない妊娠ルートに乗り換えることができました。
すると、体外受精では叶わなかった第二子が、自然に近い形で授かることができたのです。
“オキシトシン妊活”という選択肢
彼女が特に効果を実感したのは、「不妊ルーム」が大切にしている “オキシトシン妊活”という考え方でした。
オキシトシンは「幸せホルモン」「愛情ホルモン」と呼ばれ、
- ストレス低減
- 血流改善
- 自律神経の安定
- 子宮環境の柔らかさの維持
など、妊娠にとってプラスになる効果が多数あります。
しかし、不妊治療の現場では薬剤や手技が中心となり、“妊娠しやすい身体づくり”という根本的な部分が置き去りになりがちです。
「不妊ルーム」では、
- 毎日のセルフケア
- パートナーとの関係の温め方
- 触れ合いやコミュニケーション
- 呼吸法やリラックス法
など、オキシトシンを自然に増やす生活習慣を勧めています。
彼女はこれらを無理なく取り入れた結果、「治療している」というより「整っていく自分の身体を実感する」感覚に変わっていきました。
そして気づけば、妊娠に必要な条件が静かに整っていったのです。
治療の主役は、医師ではなく“あなた自身”
この女性が不妊治療スパイラルから脱出できた理由は、決して特別なことではありません。
- 治療の流れに疑問を持ち
- 必要以上の負担から一歩降り
- 身体の土台づくりを優先し
- 自分が納得できる治療に乗り換えた
ただそれだけです。
つまり、治療の主役を医師から自分に取り戻したということなのです。
私は院長として、一人ひとりが“自分の治療”を歩けるようサポートすることが役目だと思っています。
もしあなたが今、
「治療がしんどい」
「このまま続けていいのか不安」
「私らしい妊活とは何か分からない」
そんな思いを抱えているなら、どうか一度立ち止まってください。
不妊治療は、あなたの人生のすべてを奪うものではありません。
そして、治療の選択肢はいくつもあります。
妊娠への道はひとつではありません。
“あなたに合う道”を一緒に見つけていきましょう。

