排卵誘発剤とは?
排卵誘発剤は名称のとおり、卵巣の中に存在する卵子の排出(排卵)を促す作用がある薬です。
他にも黄体の機能を高めたり、基礎体温を安定させたり等の作用が確認されています。
排卵誘発剤の投与は注射薬と経口薬の2つがあります。
経口薬としての排卵誘発剤
さて経口摂取の排卵誘発剤の中で、もっともよく使われるのがクロミッド(クロミフェン)です。
この薬は、排卵や月経が止まっている状態の患者さんだけではなく、黄体機能不全の患者さんへの効果がみこまれるほか、人工授精時の妊娠率を上げる効果も確認されている等、使用できる範囲が大変広いことから、不妊治療の現場においてもっとも使用されている薬です。
また、半世紀以上使用されていて、安全性も高いので頻用されるのです。
クロミッドを摂取することで、FSHという卵巣へ刺激を与えるホルモンを多く分泌するよう、脳から指令が出ます。
これにより卵胞が発育したり、卵子が排出されたりといったことも促されることとなります。
注射薬としての排卵誘発剤
注射薬の排卵誘発剤としては、HMG製剤(ヒュメゴン、パーゴナル、フェルティノームP等)がよく使われています。
これらはFSHと近い効果が期待できます。
卵巣へと直接はたらきかけ、卵胞が発育するのを促す効果があります。
注射薬は、経口薬の排卵誘発剤よりも高い効果が見込まれるほか、目的によって使用量も変わってきます。
例えば、排卵障害の患者の方に、排卵を促す目的で使う場合と、体外受精のために1度に多くの卵を得ることを目的として使う場合とでは、使用する量は全く異なってきます。
注射薬の排卵誘発剤は卵巣を直接刺激しますので、一度に複数の排卵が起こることも多く、そのため、双子、三つ子などが生まれる確率は20%前後あります。
また、非常に強い部類の薬となりますので、その患者さんの症状や体質、使用する量等によっては、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼ばれる副作用が出る可能性もあります。
hMG製剤投与の際は医師からしっかり説明を受ける
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は排卵誘発剤を使用した時、卵巣が強い刺激を受けて大きく腫れることをいいます。
経口薬では、OHSSは殆どみられませんが、注射薬(hMG製剤)が投与された後に生じやすくなります。
多くの方は、経過観察で良くなりますが、腹水が溜まって脱水症状を引き起こすこともあります。
また、腹水や胸水がたまった結果、血液が濃縮されて脳梗塞に至ることもあります。
そのためこの治療を受ける際には、医師から直接、しっかり説明を受けることが大切です。
漢方薬と排卵誘発剤は相乗効果を発揮する!
排卵誘発剤と漢方薬の関係について述べておきます。
漢方薬の効果は、私以外にも多くの医師が経験していることです。
しかし、「なぜ漢方薬が効くのか?」と聞かれたら、漢方医でも西洋医学の医師でも正確には答えられないでしょう。
すべての漢方薬は、いくつもの生薬が配合された合剤です。
生薬のどの成分がどのように作用するのかは、わかっていますが、実際にはいくつもの成分が複雑にからみあって、効果を発揮しているのです。
漢方薬は黄体機能不全、排卵障害などに有効なケースが多いのですが、同じ黄体機能不全と診断された人でも、顕著に効いて妊娠に至る人もいれば、あまり反応しない人もいます。
このへんの見極めが、西洋医学を勉強してきた医師にとって非常にむずかしいところです。
使用して効果が認められなければ、漢方薬を変更してさらに経過を観察するというやり方が一般的です。
「不妊ルーム」で漢方薬をお勧めするのは、基礎体温を安定させる、黄体機能不全を改善させるためですが、実はもうひとつ理由があります。
それは、漢方薬には、クロミッドなどの排卵誘発剤の効果を高める効果があるのです。
排卵誘発剤のクロミッドは使用期間が長くなり、使用量が増えるほど、頚管粘膜液の減少、子宮内膜が薄くなるなどといった副作用が顕著になります。
そこで、漢方薬で体調をととのえ、ある程度体調がよくなったところで排卵誘発剤を併用すると、副作用を回避しながら、妊娠に至ることが「不妊ルーム」での経験としてよくあります。
また排卵障害の代表的な疾患である多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性は、通常hCG注射で排卵させることが多く、この場合高率に卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が発生します。
「不妊ルーム」では注射による排卵誘発は一切行いません。
PCOSの方には、漢方薬の「温経湯」単独、あるいは、温経湯とクロミッドを併用することによって排卵が促され、妊娠に至ることが多いのです。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方のみならず、「不妊ルーム」は、女性の身体に優しい方法で妊娠にアプローチします。