卵巣年齢を3D(立体的)にとらえる

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コラム

卵巣年齢を3D(立体的)にとらえる

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2025年1月27日

「あなたは35歳ですが、AMHの値は43歳に相当します。ですからすぐに体外受精を行わないとお母さんになれませんよ」などという、女性からの訴えをよく聞きます。あなた自身や、あなたのまわりに同じようなことを言われた人はいませんか?

AMHは、「卵巣年齢」などといわれ、体外受精に誘導するための手段になっているといっても過言ではありません。しかしながら、AMHの意味するものは、〝卵巣の中に残されているであろう卵の数の指標〟に過ぎないのです。

私がこうした医師のアドバイスに疑問を持っているのは、「不妊ルーム」ではAMHの値が極めて低い1未満の方でも、妊娠されることをしばしば経験しているからです。

さらなる問題は、年齢が高い女性が体外受精にエントリーした場合、例外なく頻回の注射による卵巣の刺激=排卵誘発が行われ、成熟卵子を増やそうとします。しかし、これによって残り少ない卵子が、ますます少なくなってしまうわけですから、さらに妊娠しにくい状況を作っているとも言えるのです。40歳以上の女性は、むしろ卵巣をいたわるような治療で妊娠にアプローチするべきと、私は考えています。

妊活にエントリーすると、妊娠ということに頭の中がいっぱいになりますが、女性はその先に更年期、さらなる老年期が待っています。妊娠を目的に、あまりにも強い治療を続けていると、卵巣が疲弊して次に来るフェイズにも影響を与えないとも限りません。年齢が高くなればなるほど、体外受精などの卵巣に負荷をかける治療は、慎重に考えるべきだと私は思います。

私はこうした現状に危機感を持って、このAMHという数値にだけこだわるのではなく、卵巣をもっと3D(立体的)に捉えるべく「妊娠力トライアングルチェック」を提案しています。実際には、AMH、FSH、DHEAを生理中に測定します。その意味するところは下記の通りです。

AMH=卵巣の卵の数の指標

FSH=卵巣機能の指標

DHEA=女性ホルモンの指標

AMHは排卵レースに参加している卵胞の顆粒膜細胞から放出されるホルモンです。年齢が高くなるとエントリーする卵胞の数が減ってきますので、その総和としてのAMHの値は低くなってきます。これを不妊治療の先生は〝卵巣年齢〟と言っているわけです。

AMHをもう少しわかりやすく理解するために、マラソンレースで例えてみましょう。若い人の排卵レースは、マラソンで言えば、おおきな大会で、エントリーする選手の数も多く、平均年齢も若いということです。ですから、実際のレースで流される選手たちの汗の総量、すなわちAMHは高くなるでしょう。一方、高齢の女性の排卵レースは、エントリー数が少なく、平均年齢も高いレースがイメージされます。しかしながら、規模が小さいレースだからといって、そこにスター選手が登場しないわけではありません。そうした選手が登場すれば、その選手はトップで駆け抜けてゴールを切る、すなわち排卵するでしょう。ですから、そうした選手を育てることが大切になってきます。卵巣をケアすれば、年齢が高くても、質の良い卵子が排卵レースに参加することを私はたびたび経験しています。

FSH(卵胞刺激ホルモン)は、卵胞の成熟を促す、脳から分泌されるホルモンです。年齢が高くなると卵胞の育ちが悪くなってきますので、このホルモンの分泌量が高くなってくるわけです。また、FSHは、生理中に、排卵をうながすLH(黄体形成ホルモン)とセットで測定します。両方のホルモンが年齢とともに上昇してきますが、バランスも重要です。漢方薬でバランスがよくなることも多いのです。

DHEAは、女性ホルモン(エストロゲン)の材料ですが、この材料も年齢とともに低くなってきます。ですから、卵巣機能が低下している女性(高齢や卵巣予備能が低い場合)では、DHEAサプリメントを用いて卵子の質の改善を目指すのです。

AMH、FSH、DHEA、それぞれが現しているものが違うわけです。AMHだけに注目するのではなく、この3つのバランスを総合的に考えましょうというのがトライアングルチェックです。

このトライアングル(三角形)を知っておくことで、体の中にある卵巣の状態を、多面的にとらえることができます。DHEAとAMHの値は、生理周期の変動を受けにくいのに対して、FSHはアップダウンがあるため、生理中のFSH、LHを基礎値と言います。ですから、生理中にこの3つの検査を受けることはとても意味があります。

 

「不妊ルーム」では「卵巣セラピー」を行っています。この治療は卵巣に、不足しているビタミンDや、DHEAなどが不足していれば、サプリメントで補填し、さらに亜鉛-銅のバランスが悪ければ、それを薬で補正します。こうしたプロセスで、卵巣のコンディショニングを行えば、良質な卵子が育ちやすくなります。

くどいようですが、AMHはあくまでも卵の数の指標であり、卵子の質とは何ら関係がありません。たとえ年齢が高く、卵子の数が少ないと思われる方でも、妊娠の可能性はあります。〝AMH低値=体外受精は成り立たない〟のです。

 

【お知らせ】

昨年12月よりXを始めました。役立つ妊活情報をいろいろ提供していきたいと思っています。「不妊ルーム」の〝不妊治療だけが妊娠に至る道ではない〟というメッセージを皆様に届けします。

XのURLは以下の通りです。

https://x.com/komacli_hojo

著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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