妊活を「北風と太陽」に例えると

妊活を「北風と太陽」に例えると

イソップ寓話に「北風と太陽」というお話があります。旅人のマントを脱がせようと、北風は強い風を吹きつけますが、旅人はますますマントを固く握りしめます。一方、太陽は暖かな光を照らすことで、旅人は自然とマントを脱ぎます。

この寓話は、妊活にも通じるものがあるのではないでしょうか。私は長年、「不妊ルーム」を通じて妊活をサポートしてきましたが、多くの不妊治療の現場では、「北風型」のアプローチが行われているように感じます。

北風になっていない? 不妊治療の現実

不妊治療が進むにつれ、治療中心のスケジュールに生活が縛られがちになります。たとえばタイミング法では、排卵日に合わせた義務的なセックスになり、「今日はしなければいけない」というプレッシャーが夫婦間に生まれてしまいます。

さらに体外受精では、hMGというホルモン注射を頻回に行い、卵巣が腫れたり体調を崩すこともあります。こうしたアプローチは、まさに北風のような「力ずく」のやり方です。私はこれまでに、治療に取り組む中で心身が冷え込んでいく患者さんを多く見てきました。

太陽の視点で妊活をとらえ直そう

妊娠とは、旅人がマントを脱ぐように、自然と体が妊娠しやすい状態に〝ととのう〟ことです。私は太陽のように温かく照らす妊活アプローチを提案しています。

① 不妊治療だけが妊娠に至る道ではない

体の状態が整うことで、治療なしで妊娠する方も多くいます。妊娠とは「授かるもの」。自分たちの妊娠力を高め、授かりやすい土壌を整えることが重要です。

② 卵巣セラピーで良い卵子を育てる

「質の良い卵子」を育てるために、私たちは以下のような方法を取り入れています。

  • 漢方薬を使う:卵巣の血流や体質を改善し、冷えやホルモンバランスの乱れを整えます。
  • DHEAサプリメント:卵巣機能を高め、特に高齢の女性に適しています。
  • 亜鉛-銅バランスの調整:ホルモンと卵巣機能を支えるために、ミネラルバランスを整えます。
  • 甲状腺ホルモンのコントロール:甲状腺機能の異常は妊娠しづらさの原因に。適切な検査と対応が必要です。

妊活は「太陽」の視点で

不妊治療はときに「北風」になりがちですが、本来妊活には優しさや温かさが必要です。心と体が自然に妊娠しやすい状態に整うことこそ、最も妊娠につながる道です。

治療に頼るだけでなく、ふたりの妊娠力を高める視点を取り入れてみませんか?「不妊ルーム」では、そのような太陽的アプローチで妊活をサポートしています。治療との併用も可能です。無理のない卵巣セラピーを通じて、あなたの妊娠への旅が光に満ちたものになることを願っています。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)

弘前大学医学部を1987年に卒業後、都内で内科研修を経てドイツ・フライブルク大学病院に留学し、帰国後は東京大学大学院で医学博士号を取得。2004年に「こまえクリニック」を開院し、不妊治療と相談を専門とする「不妊ルーム」を運営。自身も4年間の不妊治療経験を持ち、ストレスケアを重視した診療を行っている。『令和版 ポジティブ妊娠レッスン』(主婦と生活社)をはじめ、不妊治療に関する著書も多数出版している。

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