47歳で妊娠したMさんのストーリー

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コラム

47歳で妊娠したMさんのストーリー

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2024年8月26日

今から10年以上前に、「不妊ルーム」最高齢となる、47歳で妊娠、48歳で出産されたMさんを経験しました。この方は、ホルモンの数値やこれまでの治療歴などのバックグラウンドから、妊娠がとても難しいと思われる状況の方でした。そうしたバックグラウンドがあっても、妊娠に至ったMさんのエピソードは、いま妊娠を目指している多くの方に、勇気を与えられるのではないかと思います。

Mさんが印象深い理由は?

Mさんは、「不妊ルーム」で妊娠された数多くの女性の中でも、最も印象に強く残っている人です。彼女は40歳を過ぎてから結婚したため、結婚半年後には不妊治療を始めていました。タイミング法を1年行ったあと、人工授精を16回も行いました。そして、その後に体外受精にエントリーしたのですが、6回採卵を行い、移植に至ったのは1回のみだったのです。不妊治療に関して〝辛酸を舐め尽くした〟と言っても過言ではないと思います。

こうしたステップをふんでいるあいだに、4年もの歳月が流れてしまいました。そして、47歳になったとき、「最後に何かできることはありませんか?」ということで、「不妊ルーム」におみえになったのです。

私が彼女のことを印象深く思うのは、年齢や不妊治療の体験だけでなく、なによりも彼女の凛とした姿が、一貫して変わらなかったことです。

 

彼女の卵巣の状況は変化した

私はまず、彼女の「卵巣年齢」を推察すべく、FSH(卵胞刺激ホルモン)そしてDHEAというホルモンの値を測定しました。MさんのFSHの値は、36・5で、この数字は閉経間近、もしくは閉経していてもおかしくない数字でした。もうひとつの卵巣年齢の指標であるDHEAの値も、若い人の5分の1程度でした。当時はAMHの検査は行っていませんでした。

その結果から、私は彼女に、卵巣の若返りに効果があるといわれている、当帰芍薬散という漢方薬を処方しました。そして、DHEAの値を改善するために、DHEAサプリメントの服用を薦めたのです。そのかいあって、次の生理周期にこの2つの値を再度調べたところ、FSHの値は22・3となり、前回よりは改善していました。もういっぽうのDHEAの値は、私が予想した数字の2倍近くに跳ね上がっていましたので、DHEAサプリメントの服用を、毎日の服用から一日おきの服用に減らすよう、アドバイスしました。

しかしながら、FSH22・3という数字は、改善したとはいうものの、やはり妊娠にはほど遠い数字なのです。そして、その次の周期にも同じ検査を行ったのですが、FSHの値に、さほど変化は見られませんでした。客観的にいうと、「DHEAサプリメント」と「漢方薬」の服用によって、卵巣機能が少し改善したという状況です。

ところが、なんとその周期に、彼女の尿検査で「妊娠反応陽性」が出たのです。私が彼女に「妊娠反応が出ています」と告げると、ビックリするわけでも、跳び上がるわけでもなく、ただ淡々と、「そうですか。ありがとうございます」と述べただけでした。それからしばらくして、腹部超音波検査において胎嚢が確認できましたので、信頼できる産婦人科医へ紹介状を書きました。この紹介状を受け取った産婦人科の先生が、「奇跡だ!」と叫んだそうです。

 

妊娠してからの彼女は

彼女には、引き続き「流産を予防する漢方薬」を処方していましたので、2週間に一度「不妊ルーム」におみえになりました。私は彼女の年齢も考えて、「出生前診断などは受けないのですか?」とたずねたところ、「受けるつもりはありません。せっかく私のところに来てくれた命なのです。ありのままを受け入れます」と言われました。彼女は、一貫して武士の妻のような雰囲気の方で、動じるということがありませんでした。

「『不妊ルーム』に通われている皆さんが、あなたの妊娠を喜んでします。そして無事出産されることを期待していますよ」と告げると、「そうですか、それでは何としても産まなければなりませんね」とニコリとされました。

それからしばらくして来院されたときに、「どうやら、お腹の中の子どもは男の子のようです」と言われたのです。私が、「47歳の貴女に宿った命なのですから、きっと強い男の子なのだと思いますよ」と私が言うと、「私もそう思います」といった、静かな会話が続きました。わたしは、彼女の妊娠には、これまでの経験がそうさせたのかもしれませんが、いろいろなことに動じない心、凛とした心構えが、彼女の妊娠を可能にしたひとつの要因ではないかいという気がしてなりません。

もっとも、彼女は周産期に入ると、「羊水減少症」という症状が出たため、早めの入院となりました。そして、48歳の初産で男の子を出産したのです。

 

なぜ彼女が47歳で妊娠できたのか?

では、なぜ彼女が47歳で妊娠できたのでしょうか? 私はその理由はいたってシンプルだと思います。自然妊娠であれ、体外受精であれ、妊娠にもっとも大切なことは、〝卵巣の中で質の良い卵が育つ〟それに尽きるのです。そうしたことが年齢が高くなるにつれて、だんだんと難しくなっていくわけです。難しくはなっていきますが、良い卵が育たないというわけではないのです。ここがポイントです。

彼女は「不妊ルーム」での治療が奏功して、運よく質の良い卵子が育ち、その卵子が排卵したときに、精子とジャスト・ミートできたので妊娠が成立したのです。当時はまだ「卵巣セラピー」という言葉も使っていませんでしたが、結果的に彼女に行ったことは、卵巣セラピーに他ならなかったのです。

さらに付け加えるならば、彼女の一貫して動じない心の持ち方が、妊娠にポジティブに作用したことも私は間違いないと思っています。

著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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