「不妊ルーム」で多くの方を診ていると、年齢や検査データといったフィジカルな条件だけでは説明しきれない「妊娠しやすさ」が確かに存在することを実感します。
もちろん、若い方、あるいは疾患の程度が軽い方が妊娠しやすいという事実は医学的に明らかです。
しかし、それと同じくらい大切なのが「日々の過ごし方」と「心のあり方」なのです。
本日は、その点についてお伝えしたいと思います。
症例から見える「妊娠しやすい方」の共通点
当院に通われていたWさんは、体外受精を何度も経験された後、「不妊ルーム」でタイミング法へとステップダウンされました。
年齢は44歳。一般的には“有利”とは言えない状況でしたが、卵巣セラピーを継続する中で妊娠され、45歳で出産されました。
彼女の印象を一言で表すなら、「いつもニコニコしている方」。
結果が出ない時期もありましたが、不思議なほど前向きで、「今できることをやる」という姿勢を崩されませんでした。
卵巣セラピーがもたらす身体と心への影響
「不妊ルーム」では、卵巣セラピーに力を入れています。
これは単に卵巣機能を高めるだけでなく、女性ホルモンの分泌を整え、全身のコンディションを底上げすることを目的としています。
女性ホルモンは、美しさや若々しさだけでなく、心の安定にも深く関わっています。
つまり、卵巣が元気になるということは、卵子の質が上がるだけでなく、気持ちも前向きになりやすい状態をつくるということなのです。
この卵巣セラピーは、医師としての私の責任でおこなっています。
オキシトシンが妊娠に与える重要な役割
そして、さらに重要になってくるのが「オキシトシン」です。
オキシトシンは「愛情ホルモン」「絆ホルモン」とも呼ばれ、人とのふれあいや安心感、信頼関係の中で分泌されます。
このホルモンはストレスを和らげ、自律神経を整え、副交感神経優位の状態をつくります。
副交感神経が優位になると、血流が改善し、子宮や卵巣にも十分な血液が届くようになります。
これは、妊娠にとって非常に重要な条件です。
逆に、強いストレスや「何としても妊娠しなければ」という焦りは、交感神経を優位にし、身体を緊張状態にしてしまいます。
この状態では血流が低下し、ホルモンバランスも乱れやすくなります。
つまり、頑張りすぎることが、かえって妊娠を遠ざけてしまうことがあるのです。
「追いかけすぎない」ことの医学的意味
「妊娠は追いかけると逃げていき、忘れた頃にやってくる」——
これは決して迷信ではなく、医学的にも説明がつく現象です。
適度に力を抜き、自分の人生を楽しむこと。
その中で自然とオキシトシンが分泌され、心と体が整っていく。
この流れが、結果として妊娠しやすい状態をつくります。
では、具体的にどのような生活を心がければよいのでしょうか。
特別なことをする必要はありません。
例えば、パートナーとゆっくり会話をする、好きな音楽を聴く、美味しいものを味わう、軽い運動をする、自然に触れる——
こうした日常の中に、オキシトシンを増やすヒントがたくさんあります。
また、「治療のことばかり考えない時間」を意識的につくることも大切です。
人生を大切にすることが妊娠につながる
「不妊ルーム」で妊娠しやすい方に共通しているのは、「自分の人生を大切にしている」という点です。
妊娠を人生のすべてにしてしまうのではなく、その一部として位置づけながら、今この瞬間の生活も大切にしている。
その結果、心に余裕が生まれ、体も自然と整っていくのです。
妊娠は、単なる結果ではなく、その過程そのものがとても大切です。
日々をどう過ごすか、どんな気持ちで向き合うか。
それが、未来を大きく左右します。
「オキシトシン生活」を意識しながら、ご自身の心と体をやさしく整えていくこと。
それこそが、「妊娠しやすさ」への第一歩なのです。

