卵子の質は「心と体の若さ」に比例する
妊活をしている方からよくいただく質問のひとつに、「卵子の質を高めるにはどうしたらよいですか?」というものがあります。
卵子は年齢とともに変化しますが、決して年齢だけが全てを決めるわけではありません。
むしろ、日々の生活の積み重ねによって、卵子のコンディションを良くしていくことができます。
卵子の若さを保つには、心と体の若さが大切です。
心が前向きで、体が健やかであれば、卵巣も卵子も元気になります。
そしてその中心にあるのが「女性ホルモン」の存在です。
女性ホルモンが十分に分泌されることで、卵巣の環境は整い、卵子はイキイキとした状態で排卵されます。
意外な味方「コレステロール」
妊活というと、「健康のために油や脂肪は控えたほうがいいのでは?」と考える方も多いでしょう。
しかし、実は妊娠においては、「コレステロール」はとても重要な役割を担っています。
「コレステロールが高い方が妊娠しやすい」という報告もあります。
一見すると驚くかもしれませんが、コレステロールはホルモンの“原料”だからです。
コレステロールからまず「DHEA」というホルモンの前駆体が作られます。
そのDHEAから男性ホルモン(テストステロン)が合成され、さらにそのテストステロンから女性ホルモン(エストラジオール)が作られるのです。
つまり、コレステロールが不足してしまうと、ホルモンの材料そのものが足りなくなり、女性ホルモンが十分に分泌されないのです。
結果として、卵巣の働きも弱まり、卵子の質にも影響が及んでしまいます。
「コレステロール=悪者」は思い込み
現代では健康診断などで「コレステロール値が高い」と注意されることも多く、「コレステロールは体に悪いもの」というイメージが根強くあります。
しかし、妊活中に限って言えば、むしろコレステロールは必要です。
もちろん、極端な高コレステロール血症は治療の対象となります。
しかし、妊活中であればよほど深刻な数値でない限り、過剰に気にする必要はありません。
それよりも「コレステロールがしっかりあるから、ホルモンが元気に作られて妊娠しやすい」と前向きに捉えることが大切です。
食べたいものを楽しく食べる
「不妊ルーム」に来られる方に、「妊娠しやすくなる食事はありますか?」と聞かれることも多いのです。
私はそうした質問には、「あなたの体が欲しているものを食べることが一番プラスになります」と伝えています。
肉や卵、チーズ、魚など、動物性の食品にはコレステロールが含まれています。
これらを「体に悪いから」と避けるのではなく、「自分の体が必要としているから食べる」と思ってみてください。
食事を楽しみ、満足感を得ることも、心と体を若返らせます。
さらに、食べることに罪悪感を持たず、「これもアンチエイジング」とポジティブに考えることで、ストレスが減り、ホルモンのバランスも整いやすくなります。
食事は身体だけでなく、心の栄養でもあるのです。
コレステロールを味方につける妊活ライフ
では、実際に妊活中にどのような食生活を心がけるとよいのでしょうか。
●肉や卵は控えなくてもいい
鶏肉や豚肉、牛肉、そして卵はホルモンの材料になる良質なコレステロール源です。無理に避ける必要はありません。
●魚や乳製品も取り入れる
魚にはDHAやEPAといった良質な脂質が含まれ、乳製品はコレステロールと同時にカルシウム源にもなります。
●野菜や果物もバランスよく
コレステロールがホルモンを作るためには、体の代謝全体がスムーズに回ることが必要です。ビタミンやミネラルを補う野菜や果物は欠かせません。
●「食べたい」という気持ちを大事にする
妊活中はストイックになりすぎると逆効果です。欲しているものをおいしく食べることが、ホルモンを活性化させる一番の近道です。
妊活後のコレステロールとの付き合い方
注意点として、妊活が終わった後、つまり妊娠・出産を経た後には、コレステロール値が高ければ生活習慣病のリスクにつながる可能性があります。
その場合は医師の指導のもとで食生活を調整していくことが望ましいでしょう。
しかし、妊活中はあくまで「ホルモンの原料として必要なもの」としてコレステロールを味方につける。
そう割り切ることが、妊娠しやすい体づくりに大切です。
卵子を若返らせる食と心
卵子を健やかに保つために特別なサプリや制限食が必要なわけではありません。
大切なのは、ホルモンの原料であるコレステロールをしっかり摂り、心と体を若く保つことです。
妊活は、制限や我慢ではなく、むしろ「楽しむ」ことがカギになります。
自分の体の声に耳を傾け、「食べたい」と思ったものを素直に食べる。
そんな日常の積み重ねが、卵子をイキイキと元気にし、妊娠を呼び込むのです。