妊活とサプリとクスリ

「不妊ルーム」では、妊娠しやすい身体づくりのために、クスリだけでなくサプリメントも積極的に活用しています。

ところが、多くの方は「クスリは効くもの」「サプリは健康食品だから気休め程度のもの」と考えておられます。

確かに世の中には、科学的根拠が乏しいサプリメントも存在します。

しかし、実際に日々妊活の現場で患者さんを診ていると、サプリメントの中にはクスリに匹敵するどころか、場合によってはクスリ以上の影響力を持つものがあることを実感します。

私は、妊活においては「サプリだから軽く考える」のではなく、「サプリもクスリと同じように適切に使う」という考え方が大切だと思っています。

サプリメントは決して脇役ではない

妊活中に使われるクスリには、排卵誘発剤や黄体ホルモン製剤などがあります。

これらは妊娠に向けて重要な役割を果たします。

しかし、クスリは主に「今ある機能を動かす」ためのものです。

一方でサプリメントは、卵子や精子の材料となる栄養素を補ったり、細胞の働きを整えたりする役割があります。

言い換えれば、クスリがアクセルなら、サプリメントはエンジンオイルやガソリンのような存在です。

どれほど高性能な車でも、燃料が不足していては走ることができません。

実際に妊活をしている女性の中には、栄養状態の改善だけでホルモン値が整ったり、卵胞発育が改善したりする方も少なくありません。

日本人女性の多くが不足しているビタミンD

その代表的なものがビタミンDです。

ビタミンDというと、骨を丈夫にするための栄養素というイメージを持つ方が多いかもしれません。

しかし近年では、生殖医療の分野でも重要な働きがあることが分かってきました。

卵巣、子宮内膜、胎盤にはビタミンDの受容体が存在し、卵子の成熟や着床環境にも深く関与しています。

ところが、日本人女性の多くはビタミンD不足の状態にあります。

紫外線対策による日光不足、屋内での生活時間の増加、食生活の変化などが原因と考えられています。

ビタミンDはドラッグストアでも購入できる一般的なサプリメントです。

しかし妊活という視点で見ると、単なる健康食品ではありません。

不足している人が適切に補充することで、妊娠に向けた身体づくりを大きく後押ししてくれる可能性があります。

私は妊活中の女性にとって、ビタミンDは「まず確認すべき栄養素」の一つだと考えています。

DHEAはサプリでありながら医療的な管理が必要

もう一つ、「不妊ルーム」で重視しているのがDHEAです。

DHEAは副腎から分泌されるホルモンの一種で、女性ホルモンや男性ホルモンの材料となります。

加齢とともに減少するため、特に35歳以降の妊活では重要な意味を持ちます。

私は、女性の結婚年齢や妊活開始年齢が年々高くなっている現在、DHEAは非常に重要な存在だと考えています。

ただし、DHEAはビタミンDとは性質が大きく異なります。

実はDHEAは、クスリよりもコントロールが難しい場合があります。

量が不足すれば十分な効果が期待できませんし、多すぎれば男性ホルモン過剰となり、ニキビや体毛増加などの副作用が出ることもあります。

つまり、「飲めば飲むほど良い」というものではないのです。

そのため、「不妊ルーム」では血液検査を行いながら、一人ひとりに適した状態を目指して調整しています。

このような管理は、まさにクスリを扱うのと同じ考え方です。

理想的な数値に近づくと妊娠率が変わる

私たちが日々の診療で感じているのは、DHEAが理想的な状態に近づいた患者さんほど妊娠されるケースが増えるということです。

自然妊娠される方もいますし、体外受精へ紹介した患者さんでも良好な結果につながることがあります。

以前であれば難しいと考えられていた40歳以上の妊娠も、今では決して珍しいことではありません。

もちろん妊娠はDHEAだけで決まるものではありません。

年齢、卵巣機能、精子の状態、子宮環境、生活習慣、ストレスなど、さまざまな要素が関係しています。

しかし少なくとも、身体が必要としている栄養やホルモン環境を整えることは、妊娠への土台づくりとして極めて重要です。

サプリを軽く考えないことが妊活成功への近道

妊活中の患者さんの中には、「クスリはきちんと飲むけれど、サプリは忘れることがある」という方がおられます。

しかし私は、妊活においてはその考え方を少し見直していただきたいと思っています。

サプリメントだから安全、サプリメントだから効果が弱い、というわけではありません。

逆に言えば、適切なサプリメントを適切な量で継続することが、妊娠への大きな後押しになることもあります。

だからこそ「不妊ルーム」では、クスリとサプリを区別して考えていません。

どちらも妊娠という同じ目標に向かうための大切なツールだからです。

クスリだけに頼るのではなく、サプリだけを過信するのでもなく、それぞれの長所を活かしながら身体全体を整えていく。

その積み重ねが、妊娠しやすい身体づくりにつながるのです。

妊活は、単に排卵を起こしたり、体外受精を行ったりすることではありません。

未来の赤ちゃんを迎えるために、身体の土台を整える作業でもあります。

その土台づくりの中で、サプリメントは決して脇役ではありません。

私はこれからも、クスリと同じくらい真剣にサプリメントと向き合いながら、皆さんの妊活をサポートしていきたいと思っています。

妊活ケアの名医が教える最高のオキシトシン妊活
著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)