妊活は2階建てで考える ―妊活の土台をつくるという発想―

不妊治療というと、多くの方は「タイミング法」「人工授精」「体外受精」という治療の流れを思い浮かべるでしょう。

かつては、タイミング法から始まり、人工授精を経て、それでも妊娠しなければ体外受精へ進むという、段階を踏んだ治療が一般的でした。

しかし現在では、その流れは大きく変わってきています。

特に東京では、年齢や保険診療の回数制限などの影響もあり、不妊治療が始まると比較的早い段階で体外受精へ進むケースが少なくありません。

極端に言えば、「不妊治療=体外受精」という印象さえ受ける時代になっています。

もちろん、体外受精は素晴らしい医療技術です。

多くのご夫婦に赤ちゃんを授けてきた大きな力であることは間違いありません。

しかし私は、それだけで妊活を考えてほしくないのです。

妊活には「1階」がある

私は、妊活を「2階建ての家」と考えることをおすすめしています。

1階は、「妊娠しやすい体づくり」です。

そして2階が、「不妊治療」です。

家を建てるとき、土台が弱ければ立派な家は建ちません。

同じように、妊娠を目指すのであれば、まずは妊娠しやすい体を整えることが何よりも大切です。

「不妊ルーム」で最も大切にしているのも、この1階部分です。

私たちは、「卵巣を元気にすること」を妊活の中心に置いています。

卵巣セラピーによって卵巣周囲の血流を改善し、卵子が育ちやすい環境を整えること。

十分な睡眠や栄養、適度な運動を意識すること。

そして、ストレスをできるだけ遠ざけ、副交感神経が優位になる生活を送ること。

さらに、ご夫婦で旅行に出かけたり、美味しい食事を楽しんだり、一緒に笑う時間を増やしたりすることも、とても大切な妊活です。

「そんなことが妊活になるのですか」と驚かれる方もいらっしゃいますが、実際にこうした取り組みを続ける中で自然妊娠されるご夫婦は決して少なくありません。

妊娠とは、医学だけで起こるものではなく、人間の体全体の力によって起こるものだからです。

2階にはいくつもの階段がある

そして、その上にある2階が不妊治療です。

ここで大切なのは、「2階へ上がる階段は一つではない」ということです。

タイミング法へ進む階段。

人工授精へ進む階段。

体外受精へ進む階段。

必要に応じて、一段ずつ上がることもできますし、年齢や状況によっては途中の階段を飛ばして上がることもあります。

どれが正解というわけではありません。

大切なのは、「自分たちが納得してその階段を選ぶこと」です。

医師から勧められたからではなく、「私たちは今、この方法を選ぼう」と自分たちで決めることが、後悔の少ない妊活につながります。

妊活の主役は医師ではありません。

ご夫婦なのです。

私たち医療者は、その選択を支える伴走者でありたいと思っています。

やりきったという実感が次の人生を支える

私は、「やりきった」という実感は、とても大切だと考えています。

妊活には思うようにいかない時期があります。

結果だけを見ると、

「もっと早く体外受精をしていればよかった」

「あの方法を試しておけばよかった」

と考えてしまうこともあります。

しかし、1階でできることを十分に行い、その上で必要な治療を選び、ご夫婦で何度も話し合いながら歩んできた方は、結果がどうであれ、「私たちは精一杯やった」という納得感を持つことができます。

この「やりきった感」は、妊活を終えた後の人生にとっても、大きな支えになります。

後悔よりも納得を残すこと。

それこそが、長い人生の中では非常に重要なのです。

妊活は未来の家族づくりにつながる

さらに、「卵巣を元気にする」という考え方は、一人目のお子さんだけを目指すものではありません。

妊娠しやすい体づくりを身につけることは、二人目、三人目を考えるときにも大きな力になります。

「体外受精で授かったから終わり」ではなく、「自分たちの体を大切にしながら家族を育てていく」という意識が育まれるからです。

妊活とは、赤ちゃんを授かるためだけの期間ではありません。

これから続いていく家族の人生の土台を築く時間でもあるのです。

だからこそ私は、妊活を2階建てで考えていただきたいと思っています。

まずは1階で、妊娠しやすい体をしっかり育てる。

その上で、必要に応じて2階の不妊治療という階段を、自分たちの意思で一歩ずつ上がっていく。

その歩みの先には、妊娠という結果だけではなく、「私たちは納得のいく妊活ができた」という、かけがえのない「やりきった感」が待っています。

私は、その実感こそが、ご夫婦の未来を支える最も大きな力になると信じています。

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著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)