卵巣セラピーと体外受精は相性がいい—「卵子を育てる土台」を整えるという考え方—

たどり着いた「卵巣セラピー」という視点

私が「不妊ルーム」で多くの女性と向き合う中で行き着いたのが、「卵巣セラピー」というアプローチです。

これは、卵巣に十分な栄養と血流を届け、卵巣そのものをいたわりながら妊娠を目指す考え方です。

この取り組みを続ける中で、妊娠数は確実に増えました。

とくに40歳以上の女性の妊娠に大きく貢献しているという実感があります。

卵巣セラピーというと、「自然妊娠を目指すための治療」というイメージを持たれる方も多いかもしれません。

しかし私は、体外受精と非常に相性のいい治療だと確信しています。

自然妊娠でも体外受精でも、主役は「卵巣」

自然妊娠、人工授精、体外受精を問わず、妊娠にとって最も重要なのは、卵巣の中で質の良い卵子が育つことです。

体外受精は、受精や胚培養といった工程を医療の力で補う治療です。

しかし、「良い卵子が育つかどうか」という根本部分は、やはり採卵前の卵巣の状態に大きく左右されます。

体外受精は卵巣の状態を無視できる治療ではありません。

むしろ、卵巣に強いストレス、負荷をかける治療です。

ですから、卵巣のコンディショニングがとても大切なのです。

卵巣セラピーはなにを目指しているのか

卵巣セラピーの目的は、とてもシンプルです。

卵巣にしっかりと血液を流行き渡らせ、必要な栄養と酸素を届け、良好な卵子が育つ環境を整えることです。

年齢や治療によって疲弊している卵巣を、もう一度「いたわる」ことです。

年齢を重ねた卵巣は、若い頃と同じような刺激に同じように反応するとは限りません。

むしろ、強すぎる刺激によって、卵巣が消耗してしまうケースも少なくないのです。

体外受精で見かける「乱暴なアプローチ」

私はこれまで、体外受精を経験された方の相談を数多く受けてきました。

その中で感じるのは、卵巣に対して非常に負担の大きい、いわば「乱暴なアプローチ」が行われているケースが多いことです。

強い排卵誘発を繰り返し、卵の数を増やすことに重点が置かれます。

一方で、「卵巣がどう感じているか」「卵子がどんな環境におかれているか」という視点が置き去りにされているのです。

もちろん、体外受精を否定しているわけではありません。

ただ、卵巣をいたわらない体外受精は、かえって妊娠を遠ざける、という現実をお伝えしたいのです。

高齢化する妊活だからこそ必要な視点

現在、結婚年齢や妊活開始年齢は年々高くなっています。

40代で不妊治療に取り組む方も少なくありません。

そのような状況の中で、20代と同じ方法で卵巣を扱うことには、無理が生じます。

高年齢の妊活では、「卵巣に優しい」「卵巣を回復させる」という視点が、これまで以上に重要になります。

卵巣セラピーは、まさにそのための土台づくりの治療なのです。

卵巣を整えた結果、自然に起こった妊娠

最近、40代後半の女性が「不妊ルーム」で妊娠されました。

この方は不妊治療として人工授精を受けていましたが、並行して卵巣セラピーを行っていました。

興味深いことに、妊娠された周期は人工授精を行っていませんでした。

つまり、医療的な操作を行わない中で、卵巣環境が整った結果として妊娠が成立したと考えられます。

私は、この結果こそが、卵巣セラピーの本質を物語っていると感じています。

卵巣セラピーは体外受精を下支えする治療

卵巣セラピーは、体外受精を含めた不妊治療全体を「下支えする治療」です。

良い胚を得るためには、まず良い卵子が必要です。

そして、良い卵子は、整えられた卵巣環境から生まれます。

卵巣セラピーは、その最も基本的で、最も大切な部分を支える治療なのです。

不妊治療が長くなればなるほど、治療を強化したくなる気持ちは自然なものです。

しかし、その前に一度立ち止まり、「卵巣は今、どんな状態なのか」を考えてみてください。

卵巣セラピーは、妊娠への近道というよりも、妊娠できる体に戻るための道を整える治療です。

体外受精と組み合わせることで、その効果はさらに発揮されると、私は「不妊ルーム」で確信しています。

妊娠を目指すすべての方に、卵巣をいたわるという視点が届くことを願っています。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)