「不妊ルーム」で妊娠される方は……

妊娠しやすい心の持ち方

「どうすれば妊娠しやすくなりますか?」

「不妊ルーム」で相談を受けていると、この質問を本当によく受けます。もちろん、妊娠には年齢、卵巣機能、卵管や子宮の状態、精子の状態など、さまざまなフィジカルな要因が関係します。一般論としては、女性の年齢が若いほど、また何らかの病気や身体的な問題があったとしても、その程度が軽いほど、妊娠しやすいと考えられます。

しかし、長年にわたって多くの女性を見てきた私には、そうした身体的な条件とは別に、「妊娠しやすい心の持ち方」もあると思うようになりました。

これは「気の持ちようですべてが決まる」という意味ではありません。年齢や卵子の状態など、気持ちだけでは変えられない要素があることは、当然のことです。その一方で、日々の気持ちや生活のあり方が、妊活に大きな影響を与えていることも、私は実感しています。

いつもニコニコしていたWさん

そのことを象徴するような女性がWさんです。Wさんは、それまでに体外受精を数多く経験されていました。しかし、思うような結果が得られず、その後「不妊ルーム」でタイミング法にステップダウンすることになりました。

一般的には、「体外受精からタイミング法に戻る」というと、治療を後退させたように感じる方もいるかもしれません。しかし、私はそうは考えていません。妊娠への道は一つではありません。「不妊治療だけが妊娠に至る道ではない」のです。

Wさんには、卵巣セラピーを行いながら、身体を整え、自然妊娠を目指していただきました。そして幸いにも卵巣セラピーが奏功し、44歳で妊娠、45歳で出産されました。

私がWさんについて強く印象に残っているのは、年齢でも、それまでの治療歴でもありません。彼女は、いつもニコニコしていて、とても前向きだったのです。妊活中であっても、悲壮感を漂わせることなく、目の前の生活を楽しみながら、できることを一つずつ実践していました。

「ポジティブ」と「アクティブ」は妊活のキーワード

「ポジティブ」と「アクティブ」は妊活のキーワード

私は、妊活において「ポジティブ」と「アクティブ」は、とても大切だと考えています。ポジティブとは、「必ず妊娠する」と無理に思い込むことではありません。「妊娠できなかったらどうしよう」と未来を心配し続けるのではなく、「今、自分にできることをやってみよう」と考えることです。

そしてアクティブとは、ただ前向きな気持ちになることではありません。よく眠る、身体を動かす、食事を整える、夫婦の時間を大切にする、友人と会う、旅行をする、好きなことをする。そして必要な検査やケアを受ける。つまり、自分の人生を自分自身で動かしていくことです。

妊活が長くなると、どうしても「妊娠すること」が生活の中心になってしまいます。基礎体温、排卵日、検査薬、病院の予約、薬、採血……。気がつくと、一日中「妊娠」のことを考えている。そうなると、妊娠のために始めた生活が、いつの間にか自分を追い詰める生活になってしまいます。私は、これは避けてほしいと思っています。

卵巣をいたわることは、心と身体をいたわること

「不妊ルーム」では、「卵巣セラピー」を大切にしています。卵巣セラピーとは、漢方薬、DHEAサプリメント、亜鉛と銅のバランス調整、甲状腺ホルモンのコントロールなどを組み合わせながら、卵巣をいたわり、本来の力を引き出していくという考え方です。

卵巣は単に「卵子が育つ場所」ではありません。女性ホルモンを分泌する重要な臓器でもあります。卵巣を元気にすることは、女性の美しさや元気の源でもある女性ホルモンを含め、身体全体のコンディションを整えることにつながります。

そして、身体のコンディションと心のコンディションは、決して別々のものではありません。身体を整えることで気持ちが前向きになる。気持ちが前向きになることで生活が活動的になる。生活が活動的になることで、また身体の状態も整っていく。この良い循環をつくることが、妊活では大切なのです。

リフレッシュすることも「妊活」です

リフレッシュすることも「妊活」です

もう一つ、ぜひ覚えておいていただきたいのが、「妊活から離れる時間をつくることも妊活である」ということです。旅行をする。映画を見る。美味しいものを食べる。夫婦で出かける。趣味に没頭する。友人と話す。こうしたことを、「妊活とは関係ない」と考えないでください。むしろ、妊活を続けるためには、こうした時間が必要なのです。

私は以前から、「妊娠は追いかけると逃げていき、忘れた頃にやってくる」という、少し不思議なところがあると感じています。もちろん、医学的には排卵日や年齢など、妊娠に重要な条件を見極める必要があります。しかし、それだけにとらわれてしまうと、夫婦生活そのものが「妊娠するための作業」になってしまいます。妊娠を目指しながらも、妊娠だけを見ない。これが大切なのです。

妊娠するためではなく「人生の中に妊活を置く」

「不妊ルーム」で妊娠される方を見ていると、もちろん身体的な条件は一人ひとり違います。しかし、共通して感じることがあります。それは、妊活だけに人生を支配されていない方が多いということです。

妊娠したい。でも、今日一日も大切にしたい。治療もする。でも、夫婦の時間も大切にしたい。身体を整える。でも、時には思い切り遊びたい。そんな「しなやかな妊活」をされている方は、表情も明るく、生活そのものに活気があります。私は、これこそが妊活の一つの理想ではないかと思っています。

妊娠を目指すことは、決して人生を止めることではありません。むしろ、妊娠を望んでいる今だからこそ、身体をいたわり、心を元気にし、自分の人生を積極的に楽しんでほしいのです。ポジティブに、そしてアクティブに。妊娠だけを追いかけるのではなく、まず自分自身の毎日を豊かにする。その先に、思いがけない形で妊娠が訪れることがあります。「不妊ルーム」は、妊娠しやすい身体と心をつくりながら、皆さんの妊活を応援していきたいと考えています。

妊活ケアの名医が教える最高のオキシトシン妊活
著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)