「卵巣セラピー」×「3つの法則」 −掛け算の妊活という考え方−

「不妊治療だけが妊娠への道ではない」という原点

私は2002年に『妊娠レッスン』(主婦と生活社)を出版しました。

この本は、おかげさまで6万部を超えるベストセラーとなりました。

当時から私が一貫して伝え続けてきたことは、「不妊治療だけが妊娠に至る道ではない」という考え方です。

妊娠は医療だけで実現するものではなく、ご夫婦自身が正しい知識を身につけ、妊娠しやすい環境を整えることで、大きく可能性を高めることができます。

その考えを具体的にまとめたものが、「3つの法則」です。

  • ① 基礎体温表で自分の体温パターンを知る
  • ② 排卵日検査薬で排卵日を予測する
  • ③ 排卵日に合わせてできるだけ多く夫婦生活を持つ

この3つはとてもシンプルですが、妊娠の確率を高めるために必要な基本です。

実際、この「3つの法則」を実践することで、これまでに多くのカップルが妊娠されました。

妊娠は偶然に任せるものではなく、正しいタイミングを知り、チャンスを逃さないことが重要なのです。

「卵子の老化」という新たな壁

卵子の老化

しかし、この20年余りで妊活を取り巻く環境は大きく変化しました。

もっとも大きな変化は、妊活を始める女性の年齢が高くなったことです。

30代後半や40代で妊活を始める女性が普通になりました。

その結果、「3つの法則」だけでは乗り越えられない壁に直面するケースが増えてきました。

それが「卵子の老化」です。

年齢とともに卵子の数が減少するだけでなく、卵子のエネルギーや質も少しずつ低下していきます。

そのため、排卵日が分かって、タイミングを合わせていても、受精や着床につながりにくくなります。

この問題は自然妊娠だけでなく、人工授精や体外受精でも同じです。

高度な医療を受けても、卵子の質がよくなければ、思うような結果が得られなくなります。

「卵巣セラピー」という新しいアプローチ

そこで私が「不妊ルーム」で取り入れているのが「卵巣セラピー」です。

卵巣セラピーとは、卵巣をいたわり、卵子が育ちやすい環境を整えることを目的とした総合的なアプローチです。

漢方薬によって体質を改善し、ビタミンDや亜鉛、コエンザイムQ10、DHEAなど必要な栄養素を補い、甲状腺ホルモンや鉄不足など妊娠に影響する内科的な問題に目を向けます。

さらに睡眠や食事、運動、ストレスも含めて、卵巣が本来持っている力を最大限に引き出していくことを目指します。

卵巣セラピーは、今日始めて明日結果が出るものでもありません。

しかし、卵胞は排卵する何か月も前から成長を始めています。

その期間に卵巣にとって良い環境を作ることで、排卵レースに参加する卵子に良い影響を与えると考えられます。

だからこそ、卵巣を大切にすることには大きな意味があるのです。

「足し算」ではなく「掛け算」の妊活へ

足し算ではなく掛け算の妊活

私が最もお伝えしたいのは、「3つの法則」と「卵巣セラピー」の両方を組み合わせることで、大きな力を発揮するということです。

「3つの法則」は、「妊娠のチャンスを逃さない方法」です。

一方、「卵巣セラピー」は、「そのチャンスを生かせる卵子を育てる方法」です。

この二つは役割が異なります。

だからこそ、「3つの法則」×「卵巣セラピー」という掛け算の発想が重要なのです。

これは「自分たちでできること」×「医療機関でできること」の相乗効果でもあります。

どちらか一方だけでは十分ではありません。

患者さん自身が毎日の生活の中で取り組めることを続けながら、医療の力を上手に活用する。

その二つが重なったとき、妊娠への可能性は大きく広がります。

「不妊ルーム」の実際

タイミング法だけでは結果が出なかった方、人工授精を繰り返していた方、さらには体外受精を何度受けても妊娠に至らなかった方が、この「掛け算の妊活」を実践することで妊娠されるケースを、「不妊ルーム」で数多く経験してきました。

近年では、40歳以上の女性が妊娠されることも普通です。

もちろん年齢が若返るわけではありませんが、「卵巣を大切にする」というセラピーを取り入れることで、これまでには見られなかった結果が生まれることを、私は日々の診療の中で実感しています。

妊活に必要なのは、「自分たちでできること」と「医療でできること」を組み合わせることではないでしょうか。

「3つの法則」で妊娠のチャンスを増やし、「卵巣セラピー」で卵巣をいたわり、卵子が持つ力を引き出していく。

この二つを掛け合わせることが、「不妊ルーム」が最も大切にしている妊活の考え方です。

妊活ケアの名医が教える最高のオキシトシン妊活
著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)