免疫学的な視点から見た不妊の原因
「不妊治療を続けているけれど、なかなか結果が出ない……」
「検査では特に異常がないのに、なぜ着床しないの?」
そんな出口の見えない不安を抱えている方に、ぜひ知っていただきたい視点があります。
それは、私たちの体に備わっている「免疫」の仕組みです。
実は、解決の糸口が見つからない不妊症の背景には、免疫の異常が関係しているケースが少なくありません。
今回は、免疫学的な視点から見た不妊の原因と、それを整える漢方の可能性についてお話しします。
受精卵は、お母さんにとって「半分は他人」という事実
妊娠の成立には、精子と卵子が合体した「受精卵」が、子宮のふかふかのベッドに着床する必要があります。
ここで少し不思議なことをお伝えします。
受精卵は、お母さんの遺伝子とお父さんの遺伝子を半分ずつ持っていますよね。
つまり、お母さんの体(子宮)から見れば、受精卵の半分は「非自己(自分ではないもの)」なのです。
本来、私たちの免疫システムは、ウイルスや細菌、あるいはがん細胞などの「自分ではない異物」を攻撃し、排除することで健康を守っています。
妊娠を支える「免疫寛容」というミラクル
通常なら排除されるはずの「非自己」である受精卵を、子宮が特別に受け入れる仕組み。
これを「免疫寛容(めんえきかんよう)」と呼びます。
しかし、この仕組みがうまく働かないと、免疫システムが受精卵を「攻撃すべき敵」と勘違いしてしまい、着床を妨げてしまうことがあるのです。
これこそが、未解決の不妊症に隠された大きな原因のひとつと考えられています。
西洋医学の限界と、漢方が得意な「中庸」の芸当
「免疫が原因なら、免疫抑制剤を使えばいいのでは?」と思われるかもしれません。
確かに効果的な場合もありますが、免疫を抑えすぎると、今度は風邪を引きやすくなったり、がん細胞の監視が弱まったりというリスクが伴います。
私たちが目指したいのは、「お父さん由来の成分だけに、都合よく反応しない状態」をつくることです。
ここで、多成分から成る「漢方薬」が真価を発揮します。
- 西洋薬(単一成分): 一方向的な強い力を持ち、特定の反応を強力に抑える。
- 漢方薬(多成分系): 複数の生薬が組み合わさり、体全体のベクトルを「正常な状態(中庸)」へと向けさせる。
漢方には、過剰な反応を抑え(ダウン)、足りない機能を高める(アップ)という、不思議なバランス調整能力があります。
この「絶妙なコントロール」こそが、実臨床で多くの懐妊報告を支えてきた理由なのです。
歴史が証明する「不妊と漢方」の深い関係
現代では体外受精(IVF)が普及し、安全な最終手段として市民権を得ています。
しかし、西洋医学が発達するずっと前から、不妊は人類にとっての大きな課題でした。
かつて、不妊治療の主役は漢方でした。
体外受精が登場する前、数えきれないほどの女性たちが漢方によって新しい命を授かってきました。
現在でも、高度な不妊治療の現場で漢方を併用し、素晴らしい実績を上げているクリニックは存在します。
技術が進歩した今だからこそ、「母体そのものの受け入れ態勢(免疫系)」を整える漢方の役割が、再び見直されているのです。
まずは「土台づくり」から。漢方治療の第一歩
不妊の漢方治療において、まず大切にするのは「母体の体力(気)」を養うことです。
代表的な処方に「六君子湯(りっくんしとう)」がありますが、これには胃に負担がかかる成分(陳皮・半夏)が含まれています。
そのため、当院ではまず、より胃に優しく、体の土台を底上げしてくれる「四君子湯(しくんしとう)」をファーストチョイスとしておすすめすることが多いです。
お腹(胃腸)を健やかにし、エネルギーを満たすこと。それが、免疫を正常化し、受精卵を優しく迎え入れる体質への近道となります。
一人で悩まず、体の声を聴いてみませんか?
不妊治療は、時に孤独で、心身ともに疲弊してしまうものです。
もし、今の治療に手詰まり感を感じているなら、視点を少し変えて「免疫のバランス」を整えてみませんか?
あなたの体が本来持っている「生命を育む力」を、漢方という知恵でそっと引き出すお手伝いをさせていただきます。

