不妊治療を休んでみる!

不妊治療がストレスになっていませんか?

不妊治療を続けていると、いつの間にか夫婦生活が「子どもをつくるためだけのもの」になってしまうことがあります。排卵日を意識し、タイミングを合わせ、妊娠判定の結果に一喜一憂する。そうした日々が続くと、夫婦本来の親密さや、二人で過ごす時間の楽しさを忘れてしまいがちです。

妊娠したいという気持ちが強いほど、結果が出ないときの落胆も大きくなります。「今度こそ」と頑張り続けるうちに、心も体も疲れ切ってしまうことがあるのです。

私は、こうした不妊治療のストレスが積み重なり、妊娠への不安や焦りによって、さらに苦しい状況に陥ってしまうことを「不妊治療不妊」と呼んでいます。

もちろん、ストレスが不妊の直接的な原因だという意味ではありません。大切なのは、治療そのものが生活や夫婦関係を追い詰めていないか、一度立ち止まって考えてみることです。

登山のルートを変えてみる

不妊治療に行き詰まりを感じたとき、ぜひ考えてほしいのが「治療を休んでみる」という選択肢です。登山に例えてみましょう。険しい北壁から登ろうとすれば、山頂までの道のりは非常に厳しく感じられます。しかし、反対側の南側に回ってみると、比較的なだらかな道が見つかるかもしれません。目指す山頂は同じでも、そこに至る道は一つではないのです。

不妊治療も同じです。体外受精などの高度生殖医療に取り組むことは、大切な選択肢の一つです。しかし、それだけが妊娠に至る道ではありません。「不妊ルーム」が大切にしているのも、この考え方です。

治療を続けることだけに意識を向けるのではなく、少し視点を変えて、自分たち夫婦にとって無理のない道を探してみる。治療を休むことは、妊娠を諦めることでも、これまでの努力を無駄にすることでもありません。これからの道のりを見直すための、前向きな選択なのです。

治療を休むと、見えてくる景色がある

治療を休むと、見えてくる景色がある

治療を休むことで、排卵日や通院の予定に追われる日々から距離が置け、心と体を整える時間を持てるものです。夫婦で食事や旅行を楽しんだり、何気ない会話を大切にしたりすることで、二人の関係を見つめ直すきっかけにもなるでしょう。また、治療を続けるなかで見落としていた生活習慣や健康状態について、改めて考える余裕が生まれるかもしれません。

ただし、治療を休めば妊娠しやすくなる、あるいは休むことで妊娠できるという保証があるわけではありません。特に、年齢や卵巣機能、治療上の理由から時間を大切にしたい場合には、休む期間や再開の時期について、主治医と相談することが重要です。大切なのは、何も考えずに治療を中断することではなく、自分たちに合ったペースを見つけることです。

妊娠への道は一つではない

「不妊ルーム」では、体外受精を繰り返しても妊娠に至らなかった方が、その後、漢方薬を取り入れるなど、これまでとは異なるアプローチを検討するなかで妊娠に至ったケースも数多く経験してきました。

もちろん、こうしたことから、漢方薬やサプリメントが体外受精より優れている、あるいはそれらによって妊娠できると言いたいのではありません。妊娠にはさまざまな要因が関係しており、個々のケースを丁寧に考える必要があります。

DHEAや亜鉛、銅などの栄養素についても、妊娠を望むすべての方に必要なものではありません。サプリメントの使用は、血液検査などの結果や健康状態を踏まえ、医師に相談して判断することが大切です。私がお伝えしたいのは、1つの治療法にこだわるのではなく、妊娠への道筋を限定しないでほしい、ということです。

頑張り続けることだけが正解ではない

不妊治療を続けていると、「休んだら妊娠のチャンスを逃してしまうのではないか」と不安になるかもしれません。しかし、治療を続けることだけが正解なのではありません。少し休んで気持ちを整理することも、治療方針を見直すことも、夫婦でこれからの人生を話し合うことも、大切な選択です。妊娠を望む気持ちを大切にしながら、自分自身の心と体、そして夫婦の関係も大切にしてほしいと思います。

もし今、不妊治療に疲れたと感じているなら、一度立ち止まってみませんか。登山のルートを変えるように、少し違う方向から妊娠への道を探してみる。そこには、今まで気づかなかった景色が見えるかもしれません。不妊治療だけが妊娠に至る道ではありません。焦らず、自分たち夫婦に合った道を、一緒に探していきましょう。

妊活ケアの名医が教える最高のオキシトシン妊活
著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)