卵子の若返りとDHEAサプリメント—35歳からの妊活を支える「ホルモンの鍵」—

DHEAサプリメントをご存知ですか?

DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)という言葉を耳にしたことはありますか?

これは、私たちの体の中で自然に作られるホルモンの一種で、男女ともに副腎という臓器から分泌されています。

DHEAは「マザーホルモン」とも呼ばれ、女性ホルモン(エストロゲン)や男性ホルモン(テストステロン)といった性ホルモンの材料となる、非常に重要な物質です。

このDHEAの分泌量は、20代をピークに年齢とともに減少していきます。

特に30代後半から40代にかけて、その低下は急激になります。

つまり、「DHEAの減少=卵巣機能の低下」ともいえるほど、DHEAは生殖機能と深く関わっているのです。

2018年以降、日本ではDHEAサプリメントは医療機関を通してのみ処方できるようになりました。

これは、単なる健康補助食品ではなく、医師の管理のもとで扱うべき医療用サプリメントとして位置づけられたことを意味します。

なぜDHEAが妊活に効果的なのか

DHEAがどのように妊娠率を高めるのか、正確なメカニズムはまだ完全には解明されていません。

しかし、複数の研究や臨床の現場から、次のような効果が報告されています。

  • ◆ 卵巣の「若返り」を促す

    DHEAは卵巣内でホルモン合成を助け、卵子の発育環境を整えます。これにより、質の良い卵子が育ちやすくなると考えられています。

  • ◆ 卵胞発育の改善

    排卵誘発をしても卵胞が育たなかったり、途中で止まってしまうケースで、DHEAの補充が卵胞の成長を助けることがあります。

  • ◆ ミトコンドリア機能の改善

    最近の研究では、DHEAが卵子内のエネルギー産生を担うミトコンドリアを活性化し、卵子の代謝やDNA修復能を高める可能性があると報告されています。

こうした作用を総合すると、DHEAは「卵巣年齢のリセットを助けるサプリメント」と言ってもよいかもしれません。

「不妊ルーム」はDHEAをこう考えます

「不妊ルーム」では、DHEAサプリメントを導入してから、40歳以上の方の妊娠報告が確実に増えています。

これまで、「40歳を過ぎたら卵子の質は下がるから難しい」と言われてきた妊活の常識が、少しずつ変わりつつあるのを実感しています。

また、DHEAの値をコントロールして体外受精医療機関に紹介した女性は、採卵できる卵子の数が増えたり、受精卵の質が向上し、妊娠例が増えるという確かな変化を感じています。

最近では、年齢が若くてもDHEAの値が低い「DHEA欠乏症」の方も少なくありません。

ストレス、睡眠不足、過度なダイエット、長期のピル使用などが原因で、ホルモンの土台が崩れているケースも見られます。

このような方でも、DHEAを補うことで排卵や月経周期が安定し、妊娠に至るケースもあります。

つまり、DHEAは「年齢」だけでなく、「ホルモンバランスの回復」にも役立つサプリメントだと考えています。

服用量は人それぞれ — 医師の指導が必要な理由

DHEAはその効果が、非常に個人差の大きいサプリメントです。

同じ量を飲んでも、効きすぎてホルモンバランスが崩れてしまう方もいれば、反応が遅い方もいます。

たとえば、ある方は「1日1錠」でちょうど良い反応を示しますが、別の方は「週1錠」でも十分な場合もあります。

逆に、飲みすぎると男性ホルモンが過剰になり、吹き出物や抜け毛、月経不順を引き起こすこともあります。

そのため、医師の管理のもとでホルモン値を確認しながら、適切な量を調整することが非常に大切です。

自己判断で市販の類似サプリを服用することはおすすめできません。

成分量や品質が安定しておらず、かえってホルモンバランスを乱す危険があります。

DHEAサプリメントは「魔法の薬」ではない

DHEAは確かに卵巣の活性を助ける大きな味方です。しかし、それだけで全てが解決するわけではありません。

卵子の質を高めるには、ホルモン環境だけでなく、生活習慣やメンタルの安定も欠かせません。

睡眠のリズムを整え、血糖の急上昇を防ぐ食事を心がけ、ストレスをためこまない。

それが、DHEAの働きを最大限に生かすカギになります。

つまり、DHEAは「体のスイッチを入れるきっかけ」であり、そのスイッチをどう使うかは、日々の暮らし次第なのです。

DHEAで「妊娠力」を底上げする

DHEAサプリメントは、年齢や体質による卵巣機能の低下をサポートし、「自分の卵子で妊娠する力」を底上げしてくれる可能性があります。

特に、

  • 採卵しても卵が育たない方
  • 受精卵のグレードが上がらない方
  • AMHが低く、卵巣年齢を気にしている方

には、検討する価値のある選択肢です。

ただし、DHEAは「多ければ良い」というものではありません。

ホルモンのバランスは非常に繊細であり、適切な量とタイミングが妊娠への近道です。

あなたの卵巣はきっと応えてくれる

40歳を過ぎても、卵巣は閉じてしまうわけではありません。

その奥には、まだ「眠っている卵子」が存在しています。

DHEAは、その卵子に再びエネルギーを与え、目を覚まさせる可能性を秘めています。

「もう遅いかもしれない」と感じている方こそ、DHEAサプリメントという選択肢を知ってほしい。

体の中の“再生力”を信じてみませんか。

「不妊ルーム」の現場からアドバイスしたいのは、卵子は年齢だけで決まらないということ。

正しいサポートと環境を整えれば、卵巣は応えてくれます。

その可能性を引き出す鍵のひとつが、DHEAサプリメントなのです。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)