ブライダルチェックから「妊活力チェック」へ

ブライダルチェックから「妊活力チェック」へ

妊娠を目指す前に、自分の“いま”を知るという選択。「いつか赤ちゃんが欲しい」と思ったとき、あなたはどんな行動を起こしますか?

まずはパートナーと将来について話し合うこともあるでしょう。次に、生活習慣を見直したり、食事や運動に気をつけたりと、自分なりの準備を始める方もいるかもしれません。

その中で近年少しずつ広まってきたのが、「ブライダルチェック」と呼ばれる健康チェックです。これは結婚を控えた方、あるいは将来の妊娠を考え始めた方が、自分の体の状態を一度しっかり確認しておくためのものです。病気の早期発見だけでなく、「妊娠しやすい体かどうか」を見極めるための第一歩とも言えるでしょう。

ブライダルチェックとは?

ブライダルチェックでは、妊娠に影響する可能性のある体の不調や病気を見つけることができます。たとえば、子宮や卵巣に異常がないかを超音波検査で確認したり、性感染症の有無を調べたりします。

なかには自覚症状のほとんどない病気もありますが、それが原因で妊娠しづらくなっていた、というケースも少なくありません。

  • 子宮・卵巣の状態の確認(エコー検査)
  • 性感染症の検査(クラミジア、梅毒、HIVなど)
  • 子宮頸がん検診
  • ホルモンバランス・卵巣年齢(AMH)検査
  • 風疹抗体検査

このように、ブライダルチェックは「妊娠前の健康診断」とも言える存在です。ただし、これで“すべてが分かる”というわけではありません。

「妊活力チェック」へ——ブライダルチェックを一歩進めて

私は「不妊ルーム」で、これまでに多くの女性の妊活相談にのってきました。その中で常に感じるのは、「もっと早く体の状態を知っておけたら、選べた道が違っていたかもしれない」という声が少なくないということです。

そこで私が提案しているのが、「妊活力チェック」です。これはブライダルチェックをさらに一歩進めた、より具体的で実践的なチェック方法です。

妊活力チェックで行う3つの検査ポイント

◆いつでもおこなえる検査

生理周期に関係なく、初診時にすぐに行える採血です。以下の項目をチェックします:

  • 男性ホルモン(テストステロン)
  • 亜鉛と銅のバランス
  • ビタミンD
  • 甲状腺ホルモン(TSH、FT4など)

◆生理中に行う検査

このタイミングでは以下のホルモンを測定します:

  • LH・FSH(黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモン)
  • DHEA(副腎から出るホルモン)
  • AMH(抗ミュラー管ホルモン)

FSH、AMH、DHEAの3つのホルモンを、「妊娠力トライアングルチェック」と呼びます。卵巣機能を多角的に見ることができる組み合わせです。

◆高温期(排卵後)に行う検査

基礎体温が上がってきた時期に再び採血を行います。以下のホルモンを検査します:

  • 黄体ホルモン(P:プロゲステロン)
  • 卵胞ホルモン(E2:エストラジオール)

これらは、受精卵が子宮に着床し、妊娠が継続するために欠かせないホルモンです。

さらに、パートナーの協力が得られる場合は精液検査も合わせて行います。妊活は“ふたりのもの”という視点が欠かせません。

「妊活力チェック」は自然な妊娠への第一歩

「妊活力チェック」で1ヵ月かけてデータをそろえると、「不妊ルーム」で次に何をおこなうべきかというフォローアップの指針が自然と見えてきます。

このチェックを大切にしている理由は、「なるべく不妊治療を遠ざけたい」という想いからです。

身体の状態を知ることで、妊娠に向けた選択肢が広がることも多いのです。ときには「今すぐに治療が必要」というケースもありますが、多くの場合は生活習慣を整えたり、栄養を補ったり、ストレスケアをしたりと、身体を“妊娠しやすい状態”へと近づけるための時間が持てます。

「妊活力チェック」は、未来の妊娠・出産に向けた大切な最初の一歩です。今できる準備を始めてみませんか?

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)