DHEAは卵巣機能回復サプリ

人は生まれてから大人になるまでを成長といい、その後の時間経過を老化と表現します。そしてこの三角形の頂点になる年齢は20歳と考えられています。なぜなら、人間の場合、20歳が体の中の細胞数が最高になるからです。

 

ヒトの老化は個人差が激しい

人は成長するときはほぼ同じようなペースで成長しますが、老化は逆に人によるばらつきが非常に大きいのです。実際にあなた方の周りを見ても、同じ50歳でもとても若々しく見える人と、老けて見える人がいるのではないでしょうか? それはなぜでしょうか?

老化は、形の老化と、機能の老化に分けて考えることができます。形の老化とは、白髪が増えたり、顔にシワが増えたりなど、外見的な現象です。一方、機能の老化は、体力の低下や、免疫力の低下など、目に見えない老化であり、この機能の老化は、人によるばらつきが激しいのです。この機能による老化のスピードが、形による老化にも現れてくるのです。ですから、若々しく見える人は、老化機能の低下のスピードが遅い人と言えると思います。

前置きが長くなりましたが、妊活という観点で考えた場合、30代半ばでも妊娠しづらい人もいれば、40歳半ばでも子どもを産む方もいます。要するに、卵巣機能の年齢は、個人差があるのです。そして、卵巣年齢は日常生活の改善、医療の介入によって遅らせたり、もっと言えば、若返らせたりすることも可能なのです。

 

妊娠に必要なホルモンの分泌を高めるサプリ

こうした卵巣年齢の改善=妊娠力の回復に、最も期待を集めているのがDHEAです。最近私は、「若返りホルモン」(集英社新書)という本を読みましたが、若返りホルモンとは、DHEAのことです。この本には、「不妊ルーム」で実感していることを、裏付けるような記述が多々ありました。

私たちは疲れがとれない時などに、「ホルモンバランスが悪いのかな?」などと簡単に口にします。しかし、ホルモンとは一体全体どのようなものなのか、正確に説明できる人は少ないと思います。ホルモンとは、「血液中に分泌される科学的な情報伝達物質で、脳からの指令を伝えるメッセンジャー」と定義されると思います。このメッセンジャーの1つでもあるDHEAは、加齢とともに減少し、35歳以降に分泌量が急速に下り坂となります。私がフォローアップしている女性が、「35歳の壁」というものにぶつかると、このコラムでも述べてきましたが、まさにこのDHEAの減少カーブと一致しているわけです。

ここでDHEAサプリメントの出番となります。DHEAは、女性ホルモンの前駆体、すなわち材料です。そして、体内でエストロゲン(女性ホルモン)に変換されます。これによって、妊娠に必要とされるホルモンの分泌量を増やし、また卵子の若返りや、卵巣機能回復の作用があると考えられています。DHEAの減少は、サプリメントで補填することが可能です。血中濃度を指標に、DHEAサプリの服用を勧めると、多くの女性で数値は改善していきます。この、簡単に血中濃度が測れるということがとても大切なのです。数値をモニターすることができますから。そしてこの数値が理想値となった周期で、妊娠する女性が多いのです。

DHEAのみならず、卵巣の状態を評価する数値には、AMH(抗ミューラー管ホルモン:Anti-Mulerian hormone)、FSHなどもあります。こうした数値も、DHEAの推移を見極めながらコントロールしていくと、改善するケースが少なくありません。特にAMHは注意が必要です。なぜなら、AMHの値が低いと、「あなたは37歳ですが、AMHの値は43歳に相当します。ですから、すぐに体外受精を行わないと妊娠できませんよ」などと医師から言われ、体外受精に誘導されるケースが後を絶たないからです。

FSHの値に関しても、やはり高値であれば、それを理由に不妊治療を急がせられるケースが多いと思います。しかし、FSHに関しても、私は漢方薬とDHEAサプリで、ある程度改善すると実感しています。「不妊ルーム」では、40代で妊娠される女性も、安定的に見られるようになりました。これも、漢方薬と共にDHEAサプリメントが、強い味方になっていると私は実感します。

先程の新書によれば、DHEAは卵巣のみならず、体の様々な部位に作用して、全体的な老化を遅らせると述べてあります。この本の著者は、DHEA研究一筋に行ってきた医師なので、本を読んでいても、記述は非常に説得力があります。

 

 

医師の指導のもとで必ず服用する!

しかし、DHEAサプリにも問題がないわけではありません。このサプリメントは、かつてはインターネットなどで簡単に入手することができました。実際、「不妊ルーム」に相談に来られる女性の中でも、来院時に既に自己判断でDHEAを服用している女性も見かけました。そして、そうした女性のDHEA血中濃度を測定してみると、多くの場合DHEA濃度が高くなりすぎているのです。これでは反対に、妊娠を阻害してしまいます。

さらに、注意しておかなければならないことは、DHEAは、女性ホルモンの原料であると同時に、男性ホルモン(テストステロン)の原料でもあるのです。したがって、DHEAサプリメントを摂取しすぎることは、男性ホルモンの上昇をもたらす可能性があります。ですから、たとえサプリメントではあっても、かならず医師の指導のもとに、モニターしてもらいながら、服用すべきサプリメントなのです。

著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)