卵子の若返りとCoQ10

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コラム

卵子の若返りとCoQ10

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2025年3月6日

卵子は若返る?

卵子の加齢は女性の妊娠に大きく影響を与える要因の一つです。卵子の数は出生時に決まっており、年齢とともに減少し、質も低下します。そのため、近年「卵子の若返り(卵子の質の改善)」に関する研究が進められており、コエンザイムQ10(以下、CoQ10) はその可能性がある成分の一つとして注目されています。

 

そもそもCoQ10とは

CoQ10は、体内で自然に生成される脂溶性の補酵素(コエンザイム)です。補酵素とは、酵素に結合して、酵素活性を高める働きがあります。

CoQ10は、細胞のエネルギー産生に関わる重要な役割を持ち、特に細胞内小器官のミトコンドリア(細胞のエネルギー工場)でATP(アデノシン三リン酸)という細胞が活動するためのエネルギーを作り出す過程に関与しています。また、強力な抗酸化作用を持ち、細胞の老化や酸化ストレスから体を守る働きがあります。

 

卵子の加齢とミトコンドリアの関係

卵子の老化は主にミトコンドリア機能の低下によって引き起こされると考えられています。ミトコンドリアは細胞の「エネルギー工場」とも呼ばれ、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを作り出します。卵子は成熟や受精の際に多くのエネルギーを必要とするため、ミトコンドリアの働きが重要になります。卵子はヒトでもっともミトコンドリアの量が多い細胞です。

年齢とともにミトコンドリアの数や機能が低下すると、卵子のエネルギー供給が不足し、受精率や胚の発育に悪影響を及ぼします。また、ミトコンドリアの機能が低下すると酸化ストレス(細胞を傷つける活性酸素の影響)が増え、DNAの損傷や染色体異常のリスクが高まります。

 

CoQ10の役割

CoQ10 は、ミトコンドリアのエネルギー産生に欠かせない補酵素であり、抗酸化作用を持つ成分です。

① ミトコンドリア機能の改善

CoQ10 はミトコンドリアの電子伝達系で働き、ATP(エネルギー)を効率よく生成するのを助けます。加齢により卵子のエネルギー供給が低下しても、CoQ10を補うことでミトコンドリアの機能が回復し、卵子の質が向上する可能性があります。

② 抗酸化作用

CoQ10 には強い抗酸化作用があり、活性酸素によるDNA損傷を抑える効果が期待できます。これにより、卵子の老化を遅らせたり、受精能力を維持する可能性があると考えられています。

 

研究結果と臨床試験

近年の研究では、CoQ10 の補充が卵子の質や不妊治療の成功率を向上させる可能性が示されています。マウスを使った研究では、CoQ10 の摂取により卵巣のミトコンドリア機能が改善され、卵子の質が向上することが報告されています(Bentov et al., 2014)。

臨床試験では、CoQ10 を摂取した女性の卵巣反応性が改善し、採卵数が増加したという結果もあります。

 

CoQ10の摂取方法と推奨量

CoQ10は体内で合成されますが、加齢とともにその生成量が減少します。特に40歳以降になると減少が顕著になります。CoQ10 は食品からも摂取できますが、加齢とともに体内の合成量が減るため、サプリメントで補うことが一般的です。食品では、肉類(特に心臓や肝臓)、青魚(サバ、イワシ)、ナッツ類に含まれていますが、食品だけで十分な量を摂取するのは難しいとされています。サプリメントとして、一般的に不妊治療のために推奨される摂取量は100〜600mg/日 ユビキノール型(還元型CoQ10)の方の吸収率が高いためおすすめです。摂取のタイミングは食後の吸収率が良いとされています。

 

CoQ10と他の栄養素の組み合わせ

CoQ10 を単体で摂るだけでなく、以下の栄養素と組み合わせることで、より効果的に卵子の質をサポートできる可能性があります。

・DHEA(デヒドロエピアンドロステロン):卵巣機能をサポートし、卵子の質向上に期待

・ビタミンD:ホルモンバランスを整え、卵巣機能を維持

・オメガ3脂肪酸(EPA/DHA):抗炎症作用があり、細胞膜の健康を保つ

・レスベラトロール:強力な抗酸化作用があり、ミトコンドリア機能をサポート

 

まとめ

CoQ10(CoQ10)は、不妊治療において卵子の質を改善する可能性がある有望な成分です。特に、ミトコンドリア機能の改善と抗酸化作用によって、卵子の老化を遅らせる効果が期待されています。

CoQ10だけで劇的な効果を得られるわけではありません。食事や生活習慣の改善、他の栄養素との組み合わせ、医師と相談しながらの適切な摂取が重要になります。

 

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著者:こまえクリニック院長 放生 勲

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≪院長プロフィール≫
こまえクリニック院長 放生 勲

昭和62年3月 弘前大学医学部卒業

都内の病院にて2年間の内科研修

フライブルク大学病院および
マックス=プランク免疫学研究所留学

東京大学大学院医学博士課程修了
(東京大学医学博士)

平成11年5月こまえクリニック開院


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