ブライダルチェックが広く知られるようになりました
ここ数年、「ブライダルチェック」という言葉が広く知られるようになりました。結婚を控えた女性が、自分の身体に妊娠・出産に関する問題がないかを確認するための検査です。将来、子どもを望んでいる女性にとって、自分の身体の状態を早い段階で知っておくことには大きな意味があります。
しかし、私はもう一歩進めた提案をしたいと思っています。それが「妊娠力チェック」です。
ブライダルチェックが結婚前の健康確認だとすれば、妊娠力チェックは、実際に子どもを望んでいるカップルが、妊娠に向けて自分たちの身体を総合的に調べるものです。妊娠を希望しているのであれば、不妊治療のドアをノックする前に、一度、自分たちの妊娠力を確認してみてはどうでしょうか。
妊娠力は女性だけの問題ではありません
妊娠力チェックで大切なのは、女性と男性の両方を調べることです。
女性については、まずホルモン検査があります。月経周期に応じたFSH、LH、エストラジオールなどのホルモン測定、排卵後の黄体ホルモンの確認などを行います。また、甲状腺ホルモンやビタミンD、亜鉛など、妊娠に関係する身体の状態も確認します。
超音波検査では、子宮や卵巣の状態、子宮内膜の厚さ、卵胞の発育などを調べます。AMH(抗ミュラー管ホルモン)も参考になります。ただし、AMHは卵子の数の目安であり、卵子の質や妊娠できる可能性を直接示す数字ではありません。数値だけで妊娠力を判断しないことが大切です。
一方、男性の検査も欠かせません。精液検査によって精子の濃度、運動率、形態などを確認します。必要に応じて男性ホルモンなどの検査も行います。
妊娠は女性だけで成立するものではありません。男性側にも原因があるケースは決して少なくありません。女性だけが検査を受け、問題が見つからないまま時間が過ぎてしまうことは避けたいものです。
検査で異常が見つかったら、すぐに不妊治療なのでしょうか?

ここが、私の提案する妊娠力チェックの重要なポイントです。
検査で何らかの異常が見つかったからといって、すぐに排卵誘発や人工授精、体外受精に進まなければならないわけではありません。まずは、見つかった問題に対して、身体の状態を整えることができないかを考えてみるのです。
例えば、甲状腺ホルモンに問題があれば、必要に応じて甲状腺ホルモン剤を投与します。甲状腺機能は排卵や妊娠の維持にも関係するため、妊娠を考えるうえで見過ごせないポイントです。
亜鉛が不足していたり、亜鉛と銅のバランスに問題があったりする場合には、その状態を評価したうえで適切に調整します。また、ビタミンDが不足している方には、必要に応じてサプリメントを勧めます。
こうした対応は、必ずしも高度な不妊治療ではありません。しかし、身体の中にある妊娠を妨げる要因を見つけ、整えていくという意味で、とても大切な取り組みです。
「不妊ルーム」では、こうした検査と身体のコンディションづくりに力を入れています。実際に、検査で見つかった問題に対応し、妊娠に至る方も少なくありません。もちろん、すべての方がこれだけで妊娠できるわけではありませんが、不妊治療に進む前のステップとして価値は十分にあります。
妊娠力を知ることが、妊活のスタートです
現在は、不妊治療の選択肢が増え、体外受精も以前より身近な医療になりました。これは生殖医療の大きな進歩です。しかし、妊娠を望む人が、最初から不妊治療を受けることだけを考える必要はありません。
私は、「不妊治療だけが妊娠に至る道ではない」と考えています。医療の力を借りることは大切ですが、その前に、自分たちの身体がどのような状態にあるのかを知ることは、それ以上に大切です。
妊娠力チェックは、必要な治療を見極めるための検査でもあります。検査によって自然妊娠の可能性が見えてくる方もいれば、早めに専門的な治療を始めたほうがよいとわかる方もいます。どちらにとっても意味のあることです。
不妊治療のドアを簡単にノックする前に、まずは一度、深呼吸をしてみてください。そして、パートナーと一緒に、自分たちの「妊娠力チェック」を考えてみてください。
妊活のスタートは、不妊治療を始めることではありません。自分たちの妊娠力を知ることから始まるのです。


