先日、当院からART医療機関を紹介し、体外受精に取り組んでいらした40代女性3名が、無事に妊娠され、産科の医療機関へ紹介できたという報告をいただきました。
こうした報告をいただくたびに、私はカルテを取り出し、当院での治療経過をあらためて振り返るようにしています。
今回の3人は、当院の「卵巣セラピー」と体外受精を並行しておこなっていました。
三人に共通していたこと
治療の経過は三人三様でしたが、共通していた点がひとつありました。
それは、DHEAサプリメントを用いて数値をコントロールしながら治療を進めていたことです。
採卵時のDHEA値が比較的良好な周期に、質の良い卵子が得られ、その後の胚移植が妊娠につながるという経過をたどることが多いのです。
DHEAと卵子の質について
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は、副腎などで作られるステロイドホルモンの一種です。
卵巣の中では、アンドロゲンを介して卵胞の発育に関係することが知られており、卵巣機能が低下している方を対象に、DHEAを補充することで卵巣反応や卵子の数などに変化がみられないかを調べた研究がこれまで行われてきました。
実際、複数の研究をまとめた解析では、DHEAによって採卵数や臨床妊娠率などが改善したとする結果も報告されています。
血中のDHEAが不足していると、卵子の質に影響が出やすいという報告もあり、「不妊ルーム」ではDHEAの値を確認しながら、必要に応じてサプリメントによる補充を提案しています。
ただし、DHEAサプリメントの有効性については、研究によって結果に差があり、まだ結論が一致しているわけではありません。効果の現れ方にも個人差があります。
ホルモンに作用するサプリメントであるため、自己判断で服用するものではなく、必ず医師と相談しながら、血液検査で数値を確認しつつ服用することが大切です。
「不妊ルーム」のフォローアップで経験すること

「不妊ルーム」でフォローアップを続けている方々を拝見していると、DHEAの値が良好な周期に妊娠に至るケースが比較的多いという印象を持っています。
これはあくまで「不妊ルーム」での経過観察から得られた実感であり、すべての方に同じ結果が得られるとお約束できるものではありません。
「不妊ルーム」では、DHEAを大切に考えています。
それは、実際の診療で患者さんの経過を長く追っていると、「卵子を採る日だけを見る」のではなく、採卵までの数か月間に卵巣をどのような状態に整えていくか、という視点が非常に重要だと感じるからです。
今回妊娠された3人も、体外受精の治療そのものだけでなく、採卵までの期間に卵巣の状態を整えることを意識していました。
そしてカルテを振り返ると、DHEAの値が良好な状態で採卵を迎えた周期に、良好な結果につながっているケースがみられました。
おわりに
体外受精の結果には、年齢や卵巣の状態、その他さまざまな要因が関わっています。
DHEAはその中のひとつの手がかりにすぎませんが、「卵巣セラピー」と組み合わせながら、お一人おひとりの状態に合わせて慎重にコントロールしていくことが、良い結果につながる一助になると感じています。
これからも数値の変化を丁寧に確認しながら、患者様に合った治療をご提案してまいります。


