本を書くことは、診察室を超えた医療
私は5月28日に『最高のオキシトシン妊活』(ユサブル)を出版しました。
出版後、Amazonのレビューや読者から寄せられる感想を拝見すると、
「不妊治療だけではない妊活の考え方に勇気をもらった」
「肩の力が抜けた」
「妊娠だけでなく人生そのものが前向きになった」
といった声が数多く寄せられています。
その一つひとつを読むたびに、「伝えたかったことが確かに届いている」と実感し、医師として大きな喜びを感じています。
私は本を書くことを単なる出版活動とは考えていません。
本は診察室を飛び出し、私が直接会えない多くの方々にメッセージを届けるという医療の延長線上にあるものだと思っています。
だからこそ、一冊の本には診療の現場で得られた経験と、患者さんから学ばせていただいた知恵をできる限り詰め込みたいと考えています。
それが私にとっての「アウトリーチ」であり、医師としてできる大切な使命だと思っています。
『妊娠レッスン』から変わらない原点
実は、この思いは今に始まったことではありません。
2003年に出版した『妊娠レッスン』も、まったく同じ理由から生まれました。
当時、「不妊ルーム」で数多くのご夫婦と向き合う中で、私は「3つの法則」を実践することで自然妊娠につながる方が予想以上に多いことを経験しました。
もちろん、すべての方に当てはまる万能な方法ではありません。
しかし、正しい知識を持ち、妊娠しやすい環境を整えることで、本来備わっている妊娠する力を引き出せるカップルが少なくないことを、私は日々の診療で確信するようになりました。
その経験を診察室の中だけに留めておくのは、あまりにももったいない。
全国には同じように悩み、情報を求めながらも、適切なアドバイスに出会えていないカップルがたくさんいるに違いない。
そうした方々に届けたいという思いが、『妊娠レッスン』という一冊になりました。
そして今回の『最高のオキシトシン妊活』も、その志を受け継ぐ続編のような存在なのです。
「オキシトシン妊活」を社会に届けたい理由
今回の本を書くきっかけになったのは、「不妊ルーム」で繰り返し目にしてきたある共通点でした。
それは、オキシトシンという「幸せホルモン」を高めるような生活を意識することで、心と体のバランスが整い、その結果として妊娠につながる方が少なくないという事実です。
もちろん、オキシトシンだけですべてが説明できるわけではありません。
しかし、不妊治療が長くなるほど、多くの女性は
「頑張らなければ」
「結果を出さなければ」
という強いプレッシャーを抱え、知らず知らずのうちに心も体も緊張状態になります。
そのような状態では、本来備わっている生命力や回復力が十分に発揮されないこともあります。
私は診察室で、
「もっと自分を責めなくていい」
「もっと笑っていい」
「もっと夫婦で幸せな時間を過ごしていい」
と、くり返しお伝えしてきました。
そして実際に、そのような生活へと少しずつ変わっていった方々が妊娠される姿を数多く見届けてきました。
この経験は、一人の医師としてぜひ社会に伝えたい大切なメッセージだと感じました。
「不妊ルーム」の経験を社会へ
「不妊ルーム」のモットーは、「不妊治療だけが妊娠に至る道ではない」です。
このフレーズは、不妊治療を否定するものではありません。
不妊治療が必要な方には、その恩恵を最大限に受けていただきたいと思っています。
しかし、その一方で、生活習慣や心のあり方、夫婦関係、体のコンディションを整えることで妊娠の可能性が広がる方も確かに存在します。
だからこそ、私は診察室で得られた経験を診察室だけに閉じ込めるのではなく、本という形で社会に届け続けたいのです。
医師のアウトリーチは、医療を病院の中だけで完結させず、社会へ広げていく活動です。
「不妊ルーム」で患者さんから教えていただいたこと、数え切れない妊娠の喜びから学ばせていただいたこと、それらを必要としている一人でも多くの方へ届けることが、私の使命だと考えています。
『最高のオキシトシン妊活』は、その使命を果たすための一冊です。
そしてこれからも「不妊ルーム」で生まれた知恵と経験を、さまざまな形で社会へ発信し、不妊に悩むご夫婦が希望を持てる未来づくりに少しでも貢献していきたいと思っています。


