妊娠には亜鉛—銅バランスが大切

「亜鉛は男性だけ必要なミネラル」ではありません

亜鉛というと、「亜鉛パワー」「牡蠣パワー」といったイメージから、男性の精子や精力に関係するミネラルとして知られています。

しかし実際には、亜鉛は女性の妊娠力にも深く関わる非常に重要なミネラルです。

卵子は毎月ただ自然に作られているわけではありません。

卵胞が成長し、成熟した卵子へと育っていくためには、多くの酵素やホルモンが働く必要があります。

その働きを陰で支えているのが亜鉛です。

亜鉛が不足すると、細胞分裂やタンパク質合成がうまく行われず、卵子の質や成熟にも影響が及ぶのです。

近年、不妊治療の世界では「卵子の質」が大きなテーマになっていますが、その土台となる栄養状態については意外なほど注目されていません。

私は妊活において、まず体を作る材料を見直すことが大切だと考えています。

「不妊ルーム」で見えてきた隠れ亜鉛不足

2018年に亜鉛製剤であるノベルジンが保険適用となりました。

これをきっかけに、「不妊ルーム」でも亜鉛の血液検査を積極的に行うようになりました。

そこで私が驚いたのは、想像以上に多くの女性が亜鉛不足だったことです。

日本人女性は肉類の摂取量が少ない傾向があります。

特に妊活中の女性は、「健康のため」「ダイエットのため」と考えて脂質や肉類を控えることがあります。

しかし亜鉛は牛肉や豚肉、レバー、牡蠣などの動物性食品に多く含まれています。

また、ストレスが多い人、胃腸の働きが弱い人、慢性的な炎症を抱えている人では、摂取していても十分に吸収されないことがあります。

つまり、「ちゃんと食べているつもり」でも、実際には体内で不足しているケースが少なくないのです。

妊活で重要なのは「亜鉛だけ」ではない

ところが、ここで注意しなければならないことがあります。

それは亜鉛だけを見ていてはいけないということです。

亜鉛には体内で密接に関係するミネラルがあります。

それが銅です。

亜鉛と銅はシーソーのような関係にあります。

亜鉛が増えると銅は下がり、銅が増えると亜鉛は相対的に不足しやすくなります。

どちらも生命維持に欠かせない大切なミネラルですが、重要なのは単独の数値ではなく「バランス」です。

妊活においても、この亜鉛—銅バランスが非常に重要なのです。

銅が高すぎると何が起こるのか

銅は赤血球の形成やエネルギー産生に必要なミネラルです。

しかし過剰になると問題が生じることがあります。

妊娠にかんしては、銅濃度が高い女性ほど着床率が低下する可能性が指摘されています。

実際に検査をしてみると、亜鉛が不足し銅が高いというパターンの女性を数多く見かけます。

この状態では体内の酸化ストレスが高まりやすくなり、卵子や子宮内膜にとって望ましい環境とは言えません。

妊娠とは、受精卵が子宮内膜に根を下ろし、成長を続けるプロセスです。

そのためにはホルモンだけでなく、細胞レベルでの栄養環境が整っていることが大切なのです。

微量ミネラルが妊娠を左右する時代へ

不妊治療というと、どうしてもホルモン注射や採卵、胚移植などの高度医療に目が向きがちです。

もちろんそれらは重要です。

しかし私は微量ミネラルが妊活の土台だと感じています。

人間の体には鉄、亜鉛、銅、セレン、マグネシウムなど、ごくわずかな量しか存在しないミネラルがあります。

しかしそのわずかな量が、数千種類もの酵素反応を支えています。

例えるなら、自動車のエンジンに必要な小さなネジのようなものです。

ネジは小さくても、一本欠けるだけでエンジンは正常に動きません。

妊娠も同じです。

卵子の成熟、排卵、受精、着床、胎児の発育。

そのすべての過程で微量ミネラルが関与しています。

だからこそ私は、「検査で見える栄養状態」を重視しています。

なかなか妊娠しない方に知ってほしいこと

長期間妊活を続けているにもかかわらず妊娠に至らない場合、「年齢だから」「卵子の質だから」と言われてしまうことがあります。

しかし、その前に確認していただきたいことがあります。それが亜鉛と銅のバランスです。

血液検査で確認できる項目ですので、一度内科で詳しい医療機関で相談してみる価値は十分にあります。

もちろん、亜鉛を補充したからすぐに妊娠できるわけではありません。

しかし不足している栄養素を補い、体が本来持っている力を発揮できる環境を整えることは、妊娠への大切な第一歩です。

おわりに

妊娠はホルモンだけで決まるものではありません。

卵子や子宮を支える細胞一つひとつの働きが積み重なって成立します。

そしてその細胞を支えているのが、亜鉛や銅といった微量ミネラルです。

私はノベルジンが保険適用になってから、不妊治療は新しいフェイズに入ったと感じています。

これからの妊活では、検査データに基づいてミネラルの状態を評価し、体の内側から妊娠しやすい環境を整える視点がますます重要になるでしょう。

なかなか妊娠に至らない方は、ぜひ一度「亜鉛—銅バランス」という視点からご自身の体を見直してみてください。

妊娠への扉を開くきっかけになるかもしれません。

妊活ケアの名医が教える最高のオキシトシン妊活
著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)