「不妊治療を頑張ったのに妊娠できない」という現実
40歳の女性が「不妊ルーム」で2人目を妊娠されました。
私はこの出来事を通じて、改めて「妊娠とは何か」「不妊治療とは何か」を深く考えさせられました。
彼女は1人目のお子さんを望み、4年間もの間、不妊治療を続けてこられました。
タイミング法、人工授精、そして5回の体外受精。心身への負担はもちろん、経済的な負担も非常に大きなものだったと思います。
しかし、それでも妊娠には至りませんでした。
不妊治療の現場では、「次こそは」という期待と、「またダメだった」という落胆が繰り返されます。
特に35歳を超えると、“年齢との戦い”という空気が強くなり、多くの女性が焦りや不安に追い込まれていきます。
彼女もまた、そんな苦しい時間を過ごされてきた一人でした。
「不妊ルーム」が大切にしていること
彼女が「不妊ルーム」に来られた時、すでに39歳でした。
体外受精の保険適用回数の問題もあり、年齢的な回数制限もありました。
そのため私は、信頼できる高度生殖医療施設をご紹介しました。
すると、驚くほどスムーズに、1回の体外受精で妊娠されたのです。
このように、私は体外受精を否定しているわけではもちろんありません。
必要な方には、高度生殖医療は非常に大切な選択肢です。
実際、彼女もその医療によって母親になることができました。
しかし同時に、私は常々感じています。
「不妊治療だけが妊娠に至る道ではない」と。
妊娠とは、単に卵子と精子が出会えれば成立するものではありません。
卵巣の状態、ホルモン環境、甲状腺機能、栄養状態、自律神経、ストレス、夫婦関係、睡眠、食事…。
実に多くの要素が複雑に関係しています。
つまり、“妊娠できる身体の土台”が整っているかどうかが、とても重要なのです。
2人目妊娠は「自然な力」が教えてくれた
彼女は無事に出産され、その後、生理が再開すると再び「不妊ルーム」を訪れました。
話を聞くと、「年齢のことを考えると、早く2人目に向かわなければ」という気持ちが強かったのです。
確かに40歳という年齢は、妊娠において決して若い年齢ではありません。
しかし私は、その時こう伝えました。
「ひとり授かったのですから、まずは少しウォーミングアップをしてみませんか」
出産後の女性の身体は、見た目以上に疲弊しています。
妊娠・出産・授乳は、卵巣にも大きな負担をかけています。
だからこそ、焦って再び治療に入る前に、“身体を整える時間”が必要だと私は考えました。
そこで私は、彼女のホルモンバランスや微量元素、甲状腺機能などを再評価し、地道に「卵巣セラピー」を行っていきました。
DHEAの状態を整え、甲状腺ホルモンを調整し、栄養状態を改善し、卵巣が本来の力を取り戻せるようなフォローアップを続けました。
すると、彼女は体外受精を行う前に、「不妊ルーム」で妊娠されたのです。
卵巣は「年齢」だけでは決まらない
私はこの経験から、改めて強く感じました。
卵巣は、単純に年齢だけで評価できるものではないということです。
もちろん加齢の影響はあります。
しかし実際には、卵巣機能はホルモン、栄養、血流、睡眠、ストレスなどによって大きく左右されます。
40歳だから妊娠できないのではありません。
卵巣が疲れ切った状態のまま、妊娠だけを急いでしまうことが問題なのです。
現代の不妊治療は、ともすると「採卵数」「妊娠率」「胚盤胞達成率」「移植回数」といった数字ばかりが注目されます。
しかし、その女性自身の身体が本当に元気なのかという視点が、置き去りにされていることも少なくありません。
私は「不妊ルーム」で、そこを大切にしたいのです。
妊娠は「医療が作るもの」ではない
妊娠は、医療者が作るものではありません。
本来、女性の身体の中に備わっている力が働いた結果として起こるものです。
医療は、その力を引き出すためのお手伝いに過ぎません。
だからこそ私は、「妊娠できる身体を育てること」を大切にしています。
- 体外受精を繰り返しているのに結果が出ない方
- 検査では異常がないのに妊娠できない方
- 年齢だけを理由に希望を失いかけている方
そんな方にこそ、一度立ち止まって考えていただきたいのです。
今、本当に必要なのは、“次の治療”でしょうか。
それとも、“身体を整えること”でしょうか。
今回の40歳女性の2人目妊娠は、私にそのことを改めて教えてくれました。


