卵巣セラピーは卵子の質を高める

「不妊ルーム」に通われている女性が妊娠された時、あるいは紹介先の医療機関で体外受精によって妊娠されたという報告を受けた時、私はカルテを見直します。

そこには、妊娠に至った理由を探るための大切なヒントが隠されているからです。

特に妊娠した周期の血液データーを細かく確認します。

すると、共通点が見えてきます。

それは、妊娠された周期には、亜鉛と銅のバランス、DHEAの値などが、理想的な状態に近づいていることが多いという事実です。

もちろん、妊娠は単純に数字だけで決まるものではありません。

しかし、身体の環境が整い、「卵巣が元気になった」と感じられる周期ほど、自然妊娠でも、人工授精でも、体外受精でも、良い結果につながることが本当に多いのです。

妊娠は「卵子の質」が大きく左右する

世界で初めて体外受精を成功させ、ノーベル医学・生理学賞を受賞したロバート・エドワーズ博士は、「妊娠できるかどうかは卵の質で決まる」と語っています。

私は長年、妊活のサポートに携わってきましたが、まさにその通りだと実感しています。

卵子は、単なる「細胞」ではありません。

女性の身体の状態、栄養状態、血流、ストレス、自律神経、ホルモン環境など、さまざまな影響を受けながら育っていきます。

つまり、卵子は「その人の身体そのもの」を映し出しているとも言えるのです。

例えば、冷えが強い方、慢性的な疲労がある方、睡眠の質が悪い方、強いストレスを抱えている方では、卵巣の血流が低下しやすくなります。

すると、卵子に十分な酸素や栄養が届きにくくなり、卵子の成熟にも影響が出てしまうのです。

逆に、身体が温まり、栄養状態が改善し、自律神経が整い、卵巣の血流が良くなってくると、

「採卵できる卵子の質が変わった」

「受精率が上がった」

「胚盤胞まで育つようになった」

ということが起こります。

そして、その先に妊娠があります。

卵巣は「いたわる」ことが大切

私は「不妊ルーム」で、「卵巣は頑張らせるより、いたわることが大切です」とよくお話しています。

現代の妊活は、どうしても「急ぐ治療」になりやすい傾向があります。

年齢への焦りもありますし、「少しでも早く妊娠したい」という気持ちは理解できます。

しかし、卵巣は機械ではありません。疲弊した卵巣を無理に刺激しても、良い卵子は育ちません。

むしろ、卵巣を休ませ、血流を改善し、必要な栄養を届け、細胞が働きやすい環境を整えることで、卵巣本来の力が戻ってくることがあります。

これが、「卵巣セラピー」です。

卵巣セラピーとは、クスリやサプリメントを服用することだけではありません。

栄養、睡眠、血流、ストレス、自律神経、腸内環境、ミネラルバランスなどを総合的に整えながら、卵巣に優しい環境を作っていく考え方です。

亜鉛と銅のバランスが重要な理由

特に重要なのが、亜鉛と銅のバランスです。

亜鉛は細胞分裂やDNA合成に深く関わるミネラルであり、卵子の成熟にも欠かせません。

一方で、銅が過剰になると、活性酸素が増えやすくなり、卵巣に酸化ストレスがかかることがあります。

実際、「不妊ルーム」で妊娠された方を振り返ると、亜鉛が適切に補われ、銅とのバランスが改善しているケースが非常に多いのです。

また、DHEAも重要です。

DHEAは副腎で作られるホルモンで、「若返りホルモン」とも呼ばれます。

加齢やストレスで低下しやすいのですが、この値が改善してくると、卵巣機能が安定してくる方が少なくありません。

高齢妊活の時代だからこそ必要な視点

近年、妊活年齢は確実に上がっています。

35歳を超えて妊活を始める方も珍しくなく、40歳前後で初めて不妊治療を受けられる方も増えています。

このような時代だからこそ、「卵子の数」ではなく、「卵子の質」をどう守るかが非常に重要になります。

年齢とともに卵子数は減少しますが、だからこそ残された卵子をできるだけいたわる必要があるのです。

私は、「年齢だけで妊娠をあきらめてほしくない」と思っています。

実際に、「不妊ルーム」でも、卵巣セラピーによって採卵数が改善した方、胚盤胞到達率が上がった方、妊娠された方を数多く見てきました。

もちろん、すべての方が同じ結果になるわけではありません。

しかし、少なくとも卵巣をいたわり、身体を整えることは、妊娠力を高めるために大切な土台になるのです。

卵巣を大切にすることは、自分自身を大切にすること

妊活をしていると、「もっと頑張らなければ」「結果を出さなければ」と、ご自身を追い込んでしまう方が少なくありません。

しかし、本当に大切なのは、自分の身体の声を聞き、卵巣をいたわり、心と身体を整えていくことです。

卵巣は、とても繊細な臓器です。

ストレスにも弱く、栄養不足にも敏感で、血流の影響も受けます。

だからこそ、優しくケアする必要があります。

私はこれからの妊活には、「卵巣を刺激する時代」から、「卵巣をいたわる時代」への変化が必要だと感じています。

そして、その中心にあるのが「卵巣セラピー」なのです。

質の良い卵子は、突然生まれるわけではありません。

日々の積み重ねの中で、少しずつ育まれていくものです。

だからこそ、焦らず、卵巣を大切にしながら、妊娠しやすい身体づくりを進めていきましょう。

妊活ケアの名医が教える最高のオキシトシン妊活
著者
こまえクリニック院長
こまえクリニック院長放生 勲(ほうじょう いさお)